技能実習制度、なぜ廃止するの?在留外国人向けサービス会社代表が解説してみる

2023年4月10日に、突如としてニュースを賑わせた「技能実習制度の廃止」。これまでも技能実習制度の問題点はさまざま議論されてきましたが、具体的に何が問題なのか、そしてどう改善していくのか、いまいちわかりにくいという方も多いかと思います。在留外国人向け求人サービスを提供する「Guidable」の代表である田邉が、このニュースについて制度の問題点と、制度改革がもたらす影響を解説します。

昨年も大幅増、日本に約32万人いる「技能実習生」

令和4年末の在留外国人数は307万5213人(前年末比31万4578人、11.4%増加)で、過去最高を更新し、日本社会において外国人の存在は日増しに高まっています。在留資格別に在留者を分けると、「永住者」が最も多く86万3936人、「技能実習」が32万4940人、「技能・人文知識・国際業務」が31万1961人と続きます。このうち、技能実習は前年比4万8817人の増加を記録し、働き手としては最多の増加数となりました※。
※出典:https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00033.html

技能実習制度の始まりは1993年、機械加工など87の職種で外国人を雇用できる制度で、最長5年の日本への在留資格が認められています。今回の報道によると、外国人の日本における労働のあり方を検討する政府の有識者会議が「途上国への技術移転という目的と実態が乖離している」という指摘とともに、新制度への移管を求めました。これが「技能実習制度」の事実上の廃止です。

途上国への技術移転という目的と実態が異なるという実情は、かねてから指摘されていました。制度上「人材育成を通じた国際貢献」という目標がありつつも、現場では単純労働に近い「人材確保と育成」が繰り返されてきた同制度。それに加えて東アジアの目覚ましい経済成長から日本との格差が縮まった昨今、"魅力的な出稼ぎ場"でもない実情に「現代の奴隷制度」とも揶揄されてきた技能実習を、大きく舵を切らなければならない時期に差し掛かっていたのが実情です。

最大の問題点とは?

制度改革の鍵ともされている技能実習生の「転職」が、現行制度の最大の問題点です。なかなか人が集まらない業界に対して、打開策として外国人の受け入れを進めてきたのが技能実習制度の活用でした。ただでさえ大変な仕事環境なうえに転職ができないため、技能実習生はより良い条件を自分で選択することができません。退職のリスクが低いため、制度として雇用側の環境改善を促す動機付けに乏しかったのが実態です。

また、技能実習生の権利が正しく保護されていない問題も生じています。技能実習生にも、最低賃金や労働時間の規制、休日の確保などの労働基準法に基づく権利がありますが、これを遵守していない事業所が存在します。また、技能実習生が日本で働くためには、日本語を十分に理解してコミュニケーションできることが肝要ですが、実態として日本語能力が十分ではない人物も技能実習生として来日しており、職場で孤立を深めています。

日本人は職場環境が望ましくない場合、転職すれば環境を変えられますが、技能実習生は日本においてより良い環境へ転職することが制限されているため、いわゆる不法滞在や帰国する人が続出し、悪評に繋がっています。よく「日本に出稼ぎに来ているんだから仕方ない」「技能移転してもらっているんだから仕方ない」といった議論もネット上では散見されます。ただ、異国から働きに来てくれた人に対し、真摯に、平等に接してこそ、日本のあるべき姿なのではないでしょうか?

廃止した未来に待つ、在留外国人採用のあり方

技能実習制度を廃止し取って代わる新制度では、人材確保・育成という大命題が新たに掲げられます。「国際貢献」というピカピカの看板ではなく「労働力として来てください」と素直な看板へとかけ直されます。

転職制限については、人材育成の観点もあることから一定の制限のもとに現行から緩和され、日本語能力についても就労開始前に能力把握を担保する方策を検討します。また、職種は現在12分野に分けられている特定技能と一致させます。また、不適切な就労状況が横行している現状から、監理団体によって要件の厳格な運用、不適切な団体の排除まで踏み込む見込みです。

今回の制度改革は、人権団体による指摘等、海外からの圧力もあって進められたと言われています。特定技能の12分野の職種への絞り込みも、際限ない特定技能制度における採用の氾濫に歯止めをかける取り組みとして有効です。ただ、監理団体による不適切な団体の排除は、そもそも技能実習制度のために作られた「監理団体」がまともに機能していなかった経緯と、各国に作られた日本への人材の送り出し機関の運用が継続されることが予想されるため、どこまで実効性を持たせられるかが不明瞭です。

大切なのは「技能実習生制度での反省を活かし、もっと日本にくる外国人に配慮した制度になること」です。その一方、外国人に配慮すればするほど、採用、雇用維持にかかるコストが上がり、今まで安い労働力として捉えられていた技能実習生の代替になるか疑問符が付きます。

そもそも日本と海外の経済格差が縮まってきている状況で、「稼ぐ」を目的としてコストをかけて日本に呼ぶ構造が、中長期的に限界を迎えています。日本は文化的背景や治安、生活環境、漫画やゲームといったIPの強さを含めたソフトパワーが強みです。「稼げる」以外のポイントで日本を魅力的にしていくとともに、技能実習制度の欠陥や言語や指摘されがちな排他性を無くし、日本を「稼げる」ではなく「生活したい」国にすることで海外の人を集めていくべきではないでしょうか。

※最後に少し宣伝

もちろん、短期的には「人手」が必要です。手前味噌にはなりますが、在留外国人求人サービス「Guidable Jobs」は、採用決定率が2021年度第1四半期の23.5%から2022年度の第4四半期に75.4%まで大幅に伸長。サービス登録者数も、2021年度に比べ約2倍まで成長しました。数だけでなく、登録者の内訳も充実しており、永住者や定住者、配偶者等の就労に制限がない在留外国人を多く抱えています。

制度上、さまざまな制限がつく技能実習制度よりも、同じ在留外国人でも永住者や定住者、配偶者等の就労に制限がない"身分系"の方は、帰国リスクが低く、職場への定着や日本語能力の高さもあり、職場環境に新しい風を、必ずや吹き込ませてくれるはずです。私たちGuidableは「日本経済を、もっと多国籍に。」というミッションのもと、在留外国人と日本企業の架け橋となる取り組みをさらに進めていきます。
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