AI画家は意外と身近だ
「AI作画」というフレーズが目に飛び込んできた。まったく意識になかったが、思えば何でも人工知能という世の中のいま、自然な展開だと言わなければならない。なにげなく試してみた。
オンラインで楽しめるサイトは多数現われている。ひと昔ならなんらかの作業をするためにはまず特定のソフトをパソコンに取り入れるというような常識は、ここではすっかり非常識となった。AIは膨大な計算を必要とし、その計算をどこかのサーバーのパソコンが受け持ち、ユーザーとしてはブラウザを入口にして注文をつけ、結果を受け付けることになっている。
たまたま入ったサイトの名前は、NightCafe。作品を作り出すためには、自由にキーワードを入れることと、自分なりの写真を入れることという二つの方法が用意されている。とりあえず後者を選んだ。使うのは、「e国宝」に収録されている「平治物語絵巻」の一場面だ。
絵を取り入れ、提示された64のスタイルから一つ選び、二三分程度待ったら、一枚のユニークな作品があっさりと戻ってきた。まずは意外とよく出来た作品をつぎに掲げよう。
もともとの画面の内容をほどよく保ちながら、全体的にはゴールドというまったく異なる格調に統一され、厳しく差し込む日差し、あるいは激しく燃え上がる炎を連想させ、新しい視覚の世界が生まれた。ちなみに、ここに使ったのは、「Bitcoin Goddess(女神ビットコイン)」というスタイルだった。
もともと以上なのは数回の実験からの秀作ということで、あとはあまり意味のなさらない結果ばかりだった。「Self Portrait(ゴッホの自画像)」ではつぎの結果が与えられる。子供の落書きという印象だ。
「Nunnally(Victor Nunnally、ナナリー)」ならこれだ。モザイクだと分かるが、元の絵とはほとんど関係がない。
「Udnie(フランシス・ピカビア)」だとこの作品だ。元の画像の内容にも関連することだろうが、この色合いはまったく無意味なものになってしまう。
一番笑えたのはつぎの一枚だ。用意されたスタイルの一つには「The Great Wave」があった。なんとあの北斎まで登場したのだ。しかしながら結果はこれ。画面上の人物も建物も青い波に化けただけの、意味不明のものになってしまった。
最後に言葉による作画まで試してみた。入れた言葉は、「Japanese warrior, battle, water」。つぎはその作品なのだ。全体の構図はたしかに力強くて、ユニークだ。ただ、どうやら「Japanese」という指定が無視されたもようだ。
言うまでもなく、人工知能はこれからの分野なのだ。さらに言えば、このように何気なく試してみるということも、その進歩を促し、助ける行動の一つだろう。時間の流れに従い、これもきっとわれわれを驚かせるような技術に成長するに違いない。それを願いつつ、ゴールドの「平治物語絵巻」の場面を覚えておこう。