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おいしいと楽しいがつまってる。『リンゴの文化誌』マーシャ・ライス


マーシャ・ライスは、ニューヨークの歴史と建築に関する本を書いているライターさん。ガーデナーでもあるので、植物に関する本もあるとのこと。本書は、自宅にあるリンゴの木の由来から、世界各地のリンゴまで、幅広く語ってくれる内容になっています。

中央アジアからシルクロードを経て、世界に広まったリンゴ。そんなリンゴにまつわる、山盛りの知的コラムとステキなカラー写真が最高です。なんせ、写真がオールカラー! なのに、お値段が手頃で本当にすごいです!!

例えば、1935年にアメリカ・ヴァージニア州の農民が屋根の上でりんごを乾燥させている白黒写真。乾燥リンゴは何世代もの間、アメリカ人が長い冬を乗り切るのに欠かせない保存食だったそうです。

次のページをめくると、今度はローマ神話の果樹の女神がリンゴを抱えるタペストリーの鮮やかな色合が目に飛び込んできます。古代ギリシャではリンゴを「メーロン」と言って、女性の乳房という意味もあったとか。

さらにページをめくると、今度は野生のリンゴをついばむ連雀の鮮やかな写真をみることができます。コラムでは、偶然の産物やハイテクによる交配種を含めて、現在のリンゴは9千種類あり、地球で一番広く分布する果樹だと説明してくれます。

テーマごとに、りんごをめぐる世界旅。そんな、読書ならではの知的なドライブ感がたまりません。しかもここまでの紹介は、たった25ページ。ラスト300ページまで、ひたすら楽しいカラー写真と、ためになる文章が続きます。最初から全部読んでも、気に入った写真とその前後にある文章を読むだけでもいい。おいしそうで、かわいくて、知らなかったりんご知識をたっぷり楽しめます。

リンゴ好き、食いしん坊、コラム大好き、食文化や歴史好きにはたまらない1冊。私はとりあえず、毎日数ページづつ、幸せ気分を楽しみたいと思います。おやつ時間にちょっとづつ読んで、思わずニンマリしてしまう本。おすすめ過ぎます。


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