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夕遊の本棚

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ひと仕事終わって、おいしい珈琲や紅茶を片手に読みたい本。仕事で読む本。とにかく、たくさん読みたい、楽しみたい私の本棚をご紹介します。
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2021年10月の記事一覧

中国古代の兼愛・非攻の思想。『墨攻』酒見賢一

アンディ主演の映画『墨攻』を見て、とてもおもしろかったので、早速原作チェックしました。当…

夕遊
3年前
19

「政治の国」の俳優群像。『京劇』加藤徹

一般的に日本人が「京劇」という言葉から連想するものとは全く違う、中国の歴史と政治と俳優像…

夕遊
3年前
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沁み入るような静かな世界。『猫を抱いて象と泳ぐ』小川洋子

小川洋子さんの作品は、『博士の愛した数式』以来です。とてもすばらしい作品で、しかもちょう…

夕遊
3年前
20

ニンゲンの根源的欲求からみる隣国。『性と欲望の中国』安田峰俊

安田峰俊さんはBlog時代からのファン。書かれた本はだいたい読んでいます。その中でも、他の中…

夕遊
3年前
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『住友の歴史』住友史料館編集・朝尾直弘監修

企業としての住友は、鉱山業とその関連産業を軸として成立・展開してきた財閥で、歴史はおよそ…

夕遊
3年前
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残された子供と養母の絆。『あの戦争から遠く離れて』城戸久枝

第7回 黒田清JCJ新人賞、第30回 講談社ノンフィクション賞、第39回 大宅壮一ノンフィクション…

夕遊
3年前
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バカロレアの国 フランスの教育事情『哲学する子どもたち』中島さおり

著者の中島さんは、フランス人と結婚して、慣れない異国で子育てに奮闘。そんな日常を紹介してくれる本です。日本とはかなり違う、フランスの学校制度やカリキュラム、保護者会、学級代表など、娘さんと息子さんの中学、高校を事例がおもしろくて、一気に読んでしまいました。 この本を読んでいるとき、うちも娘は中学生でした。試験がなく、学校の成績で進学が決るフランスは、かなり日本と違います。内容をかいつまんで説明すると、娘は「いいなあ~」とうらやましそう。でも、親は結構たいへんそうです。 例

オタクも中国語も楽しい。『オタク的中国学入門』明木茂夫

中国古典文学・中国語学専門の教授による、オタク的な中国ワールド。 とにかく濃く、そしてお…

夕遊
3年前
20

児童文学の名作は結構ラディカル。『挑発する少女小説』斎藤美奈子

久しぶりに斎藤さんの新刊をネットで見かけました。しかも、少女小説!これは読まないわけには…

夕遊
3年前
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中国社会の荒波を勝ち上がった人たち。『現代中国経営者列伝』高口康太

キャッチコピーは「明治維新+高度成長=改革開放!?」 レノボの柳傅志、ハイアールの張瑞敏…

夕遊
3年前
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数奇な運命を歩んだ、幸運な才能。『エリック・ホッファー自伝』

エリック・ホッファー(1902-1983)は、アメリカの社会哲学者で、もと港湾労働者。NYのブロ…

夕遊
3年前
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ユダヤ教の文化とミステリーの組み合わせがうまい。『水の戒律』フェイ・ケラーマン

本書の事件は、アメリカの閉鎖的なユダヤ教正統派のコミュニティで起こります。 私はこの本を…

夕遊
3年前
8

使わないのにあるバーチャルことば。『コレモ日本語アルカ? 異人のことばが生まれる…

実際には中国人が使わないのに、アニメやマンガなんかで登場する「アルヨ」ことば。これは、ド…

夕遊
3年前
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よりよい未来を求める中国の女性たち。『現代中国女工哀史』レスリー・T・チャン

通勤電車で読みましたが、結構時間がかかりました。なんせ、400ページ以上というボリュームだし、いろんな話題をつめこんでいるので。 タイトルが『女工哀史』というのは、いつもの中国本にありがちなミスマッチ(というか、販売戦略上の都合?)原題は、『ファクトリー・ガールズ』。東莞市に出稼ぎに来た中国人のたくましく、したたかで、でもそれだがらこそ苦労を重ねる若い女性、中年男性たちの話。映画『女工哀歌』からわずか数年しかたっていないのに、中国の社会は大きく変化して、出稼ぎ労働者たちもか