ドイツ語の文法概説
Guten Tag!
ドイツ語 Deutsch はドイツ、オーストリア、スイスなどで話されるインド・ヨーロッパ語族ゲルマン語派の言語です。英語やオランダ語と近縁で、日本人にとって学びやすい言語の一つでもあります。ほとんどの大学で第二外国語としても採用されており、英語中心の現代国際社会においても学ぶ価値は失われていません。深淵なるドイツ語の世界へ旅立ちましょう!Gute Reise!
性・数・格
性
すべて名詞は男性、女性、中性のいずれかの性を持ちます。これらの性は自然の性に一致するとは限らず、それぞれの単語について覚える必要があります。
男性名詞 : der Vater「父」 der Name「名前」
女性名詞 : die Mutter「母」 die Hand「手」
中性名詞 : das Kind「子供」 das Mädchen「少女」
数
名詞には単数/複数の区別があります。名詞の複数形の作り方は大きく分けて五種類 (無語尾、E 型、ER 型、(E)N 型、S 型) があります。
格
ドイツ語は4つの格を持ちます。日本におけるドイツ語教育では1格、2格、3格、4格と呼ばれることがありますが、それぞれ主格、属格、与格、対格に相当します。日本語では助詞「は」「の」「が」「に」「を」などで表される文法的意味を、ドイツ語では名詞や冠詞などの格変化によって表現します。
1格 (主格)
主語や述語を表す。日本語の「...は」「...が」に近い。呼び掛けにも用いられる。
Das ist ein Apfel. これはリンゴです。
das : これ (主格)
ein Apfel : 1 つのリンゴ (主格)Sie ist Studentin. 彼女は女学生です。
sie : 彼女 (主格)
Studentin : 女学生 (主格)
2格 (属格)
名詞を修飾し、所有などを表す。日本語の「...の」に近い。
Das ist der Apfel der Studentin. これは女学生のリンゴです。
der Studentin : die Studentin の属格
3格 (与格)
間接目的語を表す。日本語の「...に」に近い。
Sie gibt der Studentin einen Apfel. 彼女は女学生にリンゴをあげます。
der Studentin : die Studentin の与格
4格 (対格)
直接目的語を表す。日本語の「...を」に近い。
Sie liebt die Studentin. 彼女はその女学生を愛しています。
die Studentin : die Studentin の対格
時制
動詞の形としての時制は現在と過去の2つしか存在しません。純粋に時間的な未来は現在形で表されますが、推量や意図など話法的な意味を含む未来は werden + 不定詞 (動詞の不定形) で表されます。
Ich spiele Tennis. 私はテニスをしています。(現在)
spiele : spielen「遊ぶ、(スポーツを)プレイする」の現在 1 人称単数形Ich spielte Tennis. 私はテニスをしました。(過去)
spielte : spielen の過去 1 人称単数形Morgen werde ich Tennnis spielen. 明日私はテニスをします。(未来、意志)
werde : werden の 1 人称単数形
アスペクト
完了相と未完了相がありますが、未来時制の時と同様、動詞の形として存在しているわけではありません。基本的に完了相は haben + 過去分詞で作りますが、一部 sein + 過去分詞で作るものもあります。
Ich kaufe mir das Buch. 私はその本を買います。(現在未完了)
Ich habe mir das Buch bereits gekauft. 私は既にその本を買ってあります。(現在完了)
bereits : 既に (副詞)
法
ドイツ語には直説法、接続法、命令法があり、それぞれの法について動詞が特別な形を取ります。
直接法
直接法は事物を客観的に述べるときに用いられます。これまで挙げられた例文は全て直接法です。
Er ist müde. 彼は疲れています。
ist : sein「である(繋辞)」の直接法 3 人称単数形
接続法
接続法は、考えられること、あり得ること、あってほしい望むことなどについて、主観的に述べるときに用いられます。接続法は I 式と II 式の二つの形があります。接続法 I 式は実現の可能性が大きいものを表し、要求話法や間接話法に用いられます。接続法 II 式は実現の可能性が小さいものを表し、非現実話法に用いられます。ただし、接続法 I 式と直接法で動詞が同じ形を取る場合などに、接続法 II 式が間接話法として用いられることもあります。
"Ich bin müde." 私は疲れました。→ Er sei müde. 彼は疲れたと言っています。(間接話法)
ist : sein の接続法 I 式 3 人称単数形Wenn ich Zeit hätte, führe ich in die Stadt. 暇なら街へ行くのに。(非現実話法)
hätte : haben「持つ」の接続法 II 式 1 人称単数形
führe : fahren「(乗り物で)行く」の接続法 II 式 1 人称単数形
命令法
命令法は 2 人称に向かって命令・懇願を述べるときに用いられます。
Fahr in die Stadt! 街へ行け!(命令法)
fahr : fahren の 2 人称単数に対する命令法
態
能動態と受動態がありますが、動詞の形として存在しているわけでありません。受動文は主に werden + 過去分詞で作ります。
Er spricht Japanisch. 彼は日本語を話します。(能動態)
spricht : sprechen「話す」の 3 人称単数形In Japan wird Japanisch gesprochen. 日本では日本語が話されます。(受動態)
wird : werden の 3 人称単数形
gesprochen : sprechen の過去分詞形
語順
ドイツ語では定動詞は文の二番目の要素に来ます。定型第2位、V2語順などと呼ばれます。
Fußball spiele ich heute. 今日私はサッカーをします.
文字
ドイツ語では表記にラテン文字が用いられます。ただし、ä, ö, ü や ß など、他の言語では見慣れない文字もあります。
参考文献
佐藤峻一 石川克知 橋本聡 鈴木純一 西村龍一,『ドイツ語の扉』, 同学社, 2021
関口存男, 『復刻版 関口・新ドイツ語の基礎』, 三修社, 2008
中山豊, 『中級ドイツ語文法(新装版)』, 白水社, 2018
中島悠爾 平尾浩三 朝倉巧, 『必携ドイツ文法総まとめ』, 白水社, 2003
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