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機内誌を旅する──"辺境中国"を作ったもの

先日、『辺境中国vol.2』を無事に入稿した。大学の日程もあり、危うく新刊を落としかねない状況だった故、普段よりも安堵出来た。
 しかし今思ってもあの個人誌が案外好評を博していることは驚きである。尤も、処女作のvol.1のテーマは中朝国境地帯訪問であり、凡そ朝鮮趣味者などがドシドシ買ってくれたのだろうとは思うが──もちろん、純粋に本誌に興味を持ってくれた読者もいると信じたい──。

 さて、『辺境中国』を作るにあたって、私はその誌面構成はなるべく旅行雑誌のような物にしたいと考えており、特に手探りだったvol.1の頃は色々な資料をあたった。結果辿り着いた答えが飛行機内にある機内誌だったのである。中でも特にJALの機内誌『Sky Word』の構成を元に『辺境中国』は生まれている。今回はその機内誌について、少し筆を走らせていきたい。

 スマートフォンやタブレットの普及、映像配信サービスなどの拡充により、今や機内での過ごし方の多くを占めているのは、自分で予め動画などをダウンロードすることなんじゃないかと思うが、どうにも私にはそのような準備を要するやり方が似合わないと感じている。更に言えば飛行機を利用する機会は比較的国内かつ近郊路線──例えば羽田〜伊丹,羽田〜新千歳・帯広などの距離感──が多い私にとって、いちいちそんな1時間くらいのために「これを見ようか」などと考えて用意するのがとても煩わしく感じるのだ。
 とはいえ何もしないで機窓を眺めて過ごそうにも、案外飛行機というものは離着陸以外、天気が良くてもひたすらの雲海だったりするわけである。これではどうにも分が悪い。そういう時に有難いのが機内に置いてある雑誌なのだ。
 
 機内誌は航空会社によって傾向がそれなりに異なるように感じる。新聞でいうならJALは朝日だし、ANAはなんとなく日経だろうか。──殆ど乗ったことがないので、まさかあるのかと驚いてしまったが──ローコストキャリアにも機内誌はあり、スカイマークやpeachからは地方紙のような距離の高さを感じる。
 しかしその中でも、JAL機内誌の構成は目を見張るものがある。なんというかバランスが良いのだ。最初に見開き1ページくらいのちょっとした特集が2.3あった後に、10数ページの海外紀行文、その後にまた箸休め的に特集を挟んで、海外紀行よりは少し短い程度の国内紀行文、最後にインフォメーションやエッセイが並ぶ構成は読者を飽きさせないし、何より長距離路線でも近郊路線でも中途半端なところで読み終えられないというリスクが少ないんじゃないかと思う構成だ。
 そして何よりJALの機内誌は写真が大盤振る舞いに使われている。ページ前面に写真を使ったり、そうでなくても写真の比重が大きいのは、見る人をワクワクさせるし、恐らく日本語を解さない外国人も少しは楽しめるようにという配慮があるのかもしれない──一応機内誌の裏の方には英語・中国語で特集を組んでおり、そういうところでも外国人観光客への配慮を感じる──。

 とにかくそういう一つ一つの拘りが無性に好きで、コロナ禍や留学の合間、なるべく月一で半ば機内誌を楽しみにJAL便に乗るようにしてた時期もあったし──因みにJALの公式ショップなどで機内誌は売っているが、あれは飛行機で読むから尚のこと面白いのだ──、乗った時はなんだかんだ持ち帰って、家に帰っても面白かった特集を見返しているようなことをしていた。
 
 そして、その構成の妙を参考に生まれたのが『辺境中国』シリーズと、今回新しく発刊される『Marco Polo』シリーズである。
 メインレーベル『辺境中国』のvol.2は中国西部の最果てである新疆ウイグル自治区を、サブレーベル『Marco Polo』の記念すべきvol.1はイラン旅行・パキスタン旅行をそれぞれ取り上げた。
 どの作品も写真を豊富に、そして大胆に使い込んだ一冊である。是非お手に取られた際は、ここに書いた内容を意識して誌面構成などを見ると面白いかもしれない。

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