今買える中国SF、華文ミステリー⑥
陳冠中『しあわせ中国 盛世2013年』
2009年に香港で出版され、大陸では発禁になった《デストピア小説》。
主人公は、陳という姓の作家。香港生まれで、台湾、アメリカで過ごした後、物語開始時点では北京在住。
上海生れで、香港で育ち、台北で暮らし、ボストン大学に留学、執筆時点で北京在住の作者・陳冠中の分身ともいうべきキャラクターである。
2013年、世界経済が冷え込み、対して勢いを増した中国で、国民の多くは幸せを感じて生きていた。
作家・陳は友人から「一ヶ月が消えてしまった」という話を聞かされて、はじめは馬鹿らしく思っているが、本当にその一ヶ月の正確な情報がないことを知る。そしてわずかに断片的な「一ヶ月」の記憶を持つ人だけが「幸福感」を感じられずにいること、その消えた一ヶ月がまさに「しあわせな中国」が始まったときと符合することに気づく。
翻訳書が出版されたのは、作中年代直前の2012年。出版を記念して作者は来日し、日本記者クラブで講演を行っている。
まさに、今こそ読むべき一冊だと思いますが、残念ながら現在書店在庫のみのようです。
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