美女と岩

冬の陽光が頼りなげに降り注ぐ庭園を、僕は彼女と一緒に歩いていた。
彼女は足早に先を行く。そして思い出したように立ち止まっては、僕を振り返るのだ。気が向けば、彼女の方からすり寄ってもくる。いつだってそう。それが僕と彼女との関係だ。
「ちょっと待ってよ」僕は彼女に声をかけた。
彼女は「まったく……」とでも言いたげに僕を待つ。
そこは築山だった。大小の岩がそこかしこに配置されている。
彼女はその岩の一つに腰をかけた。
僕はそんな彼女に見蕩れてしまう。
「おやおや。どうしちゃったのかしら。バカにみたいに私を見つめちゃって。失礼……『みたいに』は余分だったわね」
「ボクへの悪口が迂遠的に過ぎるよ！」
「あら、よく自分が悪口を言われているって気付けたわね」
「君は本当にボクのことを見下しているんだね」
「あら、嫌だわ。見下しているだニャんて。私はただ憐憫の眼差しであニャたを見ているだけニャのに」
「それを見下してるっていうんだよ！」
「ニャ？」
彼女は依然として岩に腰を降ろしている。その顔はなんとも形容しがたい微妙な表情を湛えていた――

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