表参道のフォカッチャ屋。

私は三人姉兄の末っ子で、
上の2人と10歳以上歳の差があった。
物心がつく頃、時代はバブル真っ只中。
いや、ちょっとバブルが弾けたくらいの頃かな?

姉兄達はもう社会人・学生生活に忙しく、
歳の離れた末っ子は姉や兄と遊ぶのも好きだったが、1人遊びも好きだった。

そんな私は歳の離れた家族に連れられ、
よく家から電車で1時間程度かかる都心へ遊びに行っていた。
それもまだ世の中のよの字も知らない小学生くらいの頃。

原宿、裏原宿、表参道、観光地になる前のお台場、下北沢、浅草、、、

今日は表参道のお店について書こうと思う。

週末に母といつものように表参道を歩いていた。表参道ヒルズは無く青山アパートがあった。

ぶらぶらと歩いていると、ガラス窓から見えるパンの様なものに目が行った。

思い切って扉を開けるとわくわくするディスプレイ。中は少し高級感があるけれど、
トレイやお店の感じはどう感じてもパン屋さんだった。

沢山並んだトレイの上に、
長方形に切り分けられたパンらしきものがわくわくするほど沢山並んでいた。
そのパンらしきものの上には色とりどりの野菜や、ハム、チーズ。様々な材料が乗っていた。

長方形…それは少し大きめのスタンダードなお豆腐サイズ。
美味しそうな具材が乗ったお豆腐サイズのパン?らしきものは、私の目にまるで宝箱が入った宝箱の蓋の様にキラキラと輝いて見えた。

そのパンらしきものとはフォカッチャという食べ物であると後で知った。
お豆腐サイズに切り分けられ、具材を乗せてあるそのフォカッチャ。

味は、宝箱の中身そのものだった。

私が大好きだったのは、フォカッチャの上に生ハムとモッツァレラチーズ、オリーブが乗せられたものだった。
少し塩っ気があってオリーブの香りもした。

表参道は行き慣れてるわ、美味しいものも沢山食べたし…なんて生意気な事を言う小学生の頃の私。
そのフォカッチャに鼻っ柱をがつんと折られたようだった。

生意気なことを言ってはいけないと思ったし、
探究心を捨ててはならないとも思った。

それくらい美味しいフォカッチャだった。

それから表参道に行く度にその店に寄っていたが、残念ながらそのフォカッチャ専門店は無くなってしまった。

恐らく後に、ブルガリカフェになっていたと思う。

私の食への関心は街や空気、心の状態も含まれてより一層強くなっている。

まだまだ思い出せることが沢山ある。
また、書けたらと思う。

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