株式会社 La prière ☆ わくわくおしごと編
◇本記事はらぷりアドベントカレンダー15日目の記事です。
14日目のおかきさんの投稿はこちら↓
前書き・諸注意
8月と2月のことを書いておりますのでご注意ください。
自分の独自解釈が含まれております。予めご了承ください。
ガイドラインは守りました。が、「ここ引っかかってるよバーカ」など御座いましたら私、斎賀ろここのXアカウントDMまでご連絡ください。
それでは、
本編
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黒々とした分厚い雲が空を覆う。
降る雨はサァーという音を立てながら、頭を、肩を、体を濡らしていく。
今の世界は、目に見えるものすべてが白黒、グレースケールのように色がない。
こんな世界から立ち去るには、目の前の境界を越えればいい。
たったそれだけで世界が変わるのだろう。
踏み出せば…
踏み出せ―――
「ちょーっと待ったー!」
急に聞こえてきた声に驚き、体を後ろにのけ反る。
その勢いのまま尻もちをついて鈍い激痛が襲ってきた。
悶えながら声の聞こえてきた方を振り向くと、まるで小動物かのような金髪の人がいた。
「きみは……」
「そんなのなんでもいいじゃないか!なにかお困りかな?」
「お困りも何も……別に……」
「そうかなぁ?そんなふうには見えなかったけど」
座り込んでいる自分の顔を覗き込んでくる。
その目になんとなく引き込まれていくような、そんな変な感覚がした。
慌てて目をそらすと、ふふんと笑って話しかけてきた。
「ぼくはね、いい人なんだよ」
「いい人……」
「なんだい、その信じられないって目は?」
「いい人は自分のことをいい人なんて言わないよ」
「ん?そうなのか……」
その人は少し考えた後、分からないというように手を横に出して首を振った
「まあいいや。そろそろ来るだろう頃だから」
「来るって誰が―――」
「コラーー!またお前は!」
「あっ、いつき~!いい人見つけといたからね!それじゃ!」
「あっ!逃げるなー!」
同じ声が聞こえてきたと思ったら、目の前にいた人は空を飛んで、黒いネコ型のロボットに姿を変えてどこかに飛んで行った。
代わりに現れたのは、さっきと同じ容姿をした女の人だった。
走ってきていたようで息を切らしている。
「はぁ、はぁ、ごめんね、あいつに何かされなかった」
「別に何もされてないですが」
「ならよかったぁ」
目の前の女の人は安心したようで大きくため息をついた。
小動物のようなそんな感じの女の人ではあるが只ものではないオーラを出している。
そんなふうに見えた。
「ところでさっきの、ロボ?がいい人見つけたとか言ってましたけど……」
「げ、あいつそんなこと言ってたの??」
まずいと言った表情をしたが、一回息を吐いて、やれやれといったジェスチャーをして女の人は向き合って言った。
「ねえ、うちで働かない?」
「は?」
*-*-*-*-*-*-*-*-*
「というわけで新入社員を連れて来ました」
有無を言わさず、連れてこられたのはとある雑居ビルの一室。
そこには2人の女の人がいた。
一人は白い髪で身長の高めの人。
もう一人は奥の机の前に座っているきりっとした目つきの茶髪の人。
「さすがいつきちゃんだねー。もう見つけて来ちゃうなんて」
「じゃあ自己紹介しましょうか」
奥の机の女の人が立ち上がる。身長が金髪の人と変わらないなぁと思ってしまった。
「nayutaです。この会社、株式会社La prièreの代表をやっています」
茶髪の人はなゆたさんというらしい。
少し厳しそうな眼をしているが気のせいだろう。
「私は棗いつき、人事とかイベントの人員配置とかマネジメントをやってるよ」
「藍月なくるだよー。広報とか営業をやってるんだー。外行くときはいつきちゃんやなゆたさんと一緒に行ってるんだ」
と、三人の紹介が終わった。
そこで質問してみる
「あの、他の業務っていうのは」
「全部私が請け負ってるよ」
そういったのはなゆたさん。
「え、じゃあ経理とかも…」
「そう」
「法規関係の対応も」
「そう」
思っていた以上にワンマン経営の会社だった。
「いやほんとになゆたさんなんでも出来ちゃうからなぁ」
「ね、私たちの出る幕がほとんどないというか」
「お二人にもっと仕事を振ってもいいんですよ」
「「あははは……」」
そんなやり取りから、なゆたさんはこちらに向き直って言った。
「君には私の、いや、私たちの業務を代わりにやってもらいたいんだよ」
「もちろん1.2か月は一緒にやるし、なんなら最終決定は私たちにあるから何でも聞いてね」
なんだか幸先が不安になってきた。
この会社、多分大丈夫なんだろうけどやることが多すぎる気がする。人員が足りてないのは直感的に理解した。この人数でできる仕事か。
「すみません、この会社の主たる業務は何ですか」
「「「私たちが歌う、それだけだよ」」」
そうして、俺と、3人の歌姫たちのおしごとが始まった。
*-*-*-*-*-*-*-*-*
とある日のこと。
いつも通り3人のマネジメントと来たるライブにに向けての最中調整をしていた。
メールで先方とやり取りをしていたが。急にスマホが鳴った。
画面の表示には[藍月なくる]の文字。
すぐに電話に出た。
『俺くん、お疲れ様~』
「なくるさんお疲れ様です。どうしたんですか珍しく電話なんて」
『俺くんはさ、死にたいって思ったことはある?』
元気のない声からそんな言葉を投げかけられて、少し動揺した。
だってあの時…
そう考える前になくるさんから続いて声が聞こえてきた。
『私は海の藻屑になりたいなって思ったことが多々あるんだけどさ、今猛烈にソレなんだよね』
様子がおかしい。彼女に何かあったのは間違いない。
単刀直入に聞いてみた。
「なくるさん、何があったんですか」
しばしの沈黙。
息をはっと這いてなくるさんが言った。
『コロナ陽性になっちゃったー……』
あ、終わった。
このタイミングは中止、もしくは延期するしか他ない。
なくるさんは続けた。
『それで、私抜きでもいいからライブやってほしいの。お願い、二人を説得して』
「それは一体どういうことですか」
『私なんか応援してくれる人はいないしなゆたさんといつきちゃんのファンだけでも満足して帰ってもらいたいんだよね。私のファンからの業は私が背負うからさ』
そういう言って電話が切れた。
もう一度かけ直したがつながらず、結局L●NEで聞いてみた。
[ひとまず説得はしますが、期待はしないでください]
この文に親指を立てた絵文字を返してきた。
ぶれないですね、なくるさん……
ひとまずnayutaさんといつきさんの二人に話して事務所に来てもらった。
なくるさんがコロナになったこと。
二人だけでもライブをやってほしいこと。
その他いろいろ伝言だったものを伝えた。
「それなら中止しよう」
nayutaさんの判断は早かった。
「なくちゃと一緒じゃなきゃライブはやらない」
「三人そろってLa prière。誰か一人でもかけたらLa prièreじゃない」
いつきさんもそう言った。
すぐさま関係各所に連絡を取りライブの開催を中止する旨を伝えた。
ところが、箱の関係者は言った。
「それなら延期で別日程抑えとくよ、半年後だけど。
なに、キャンセル料は大丈夫さ」
スタッフさんたちには予定通りの報酬を支払ったうえで、振替の公演も受注したいとの旨の連絡を受けた。
そして、なゆたさんといつきさん、俺がなくるさんの自宅に突撃した。
もちろん解熱し、陰性の判定の連絡を受けたうえでだ。
「なくちゃのあほー!!」
いつきさんはなくるさんに向けて大きな声でお叱り。
なゆたさんは特に怒りはしなかったが、目が笑っていなく、どす黒いオーラが見えた。
そうして8月一臂の騒動は収束、2月まで長い長い夏が続いた。
ファンの間で色々あったようではあるがそれはまた別のお話…
*-*-*-*-*-*-*-*-*
ライブも終わり数か月が過ぎた。
あれからというものの、3人がサインを描きすぎて腱鞘炎になったり、POP UP STOREの準備で大忙しだったり、ぬいぐるみの監修をしたりと色々あった。
俺もすっかり業務になれ、一人で仕上げ、あとは最終確認をもらうだけという業務になっていった。
異なるのは3人の動向。
ある時を境に、全く事務所に来なくなってしまった。
なんでも3人にはそれぞれ別の仕事も持っているらしく、そちらの稼働が多くなってしまったとのことだった。
特になゆたさんはめったに見ることがなくなった。
上長3人がいなくなったからと言って、手抜きの仕事をするのは何か違う気がした。
お給料は少なくない額をもらっているわけであるし。
ある日、事務所に行くと一枚の封筒があった。
恐る恐る中身を確認すると、驚愕の内容が書かれていた。
『俺くんへ、
君は本日付けでクビにします。
クビといっても会社都合退職扱いだから安心してください。
君はよくやってくれた。相当激務だっただろう。
ただ、並みのブラック企業で働いてきていた君と我々は全く違う。
君にはまだ無限の可能性があります。
言い方はよくないですが、こんなところでくすぶっていいひとではない。
次のステップへ行く段階だと考えています。
以上を踏まえて、私たちの枠目は終わっただろうと思います。
私たちも次の大きなステップを目指しています。
離れても共に頑張りましょう。
封筒の中にいろいろ用意しておきましたので有効に使ってください。
株式会社La prière 代表 nayuta 』
そうして、俺は無職になった。
ただ前とは確実に変化している。
いい方向に傾くと、確信できた。
*-*-*-*-*-*-*-*-*
あれから1ヵ月、無事再就職できた。
思い切って業種職種を変えて心機一転で直したのが功を奏したのか、今は働くことが楽しく感じる。
全てはあの3人に感謝だ。
都内の道を歩いて次の取引先に向かう。駅前の大型ビジョンから懐かしい声が聞こえてきた。
そして後ろからも……
「大変だ大変だ大変だぁ!」
そうしてまた、実りのある1日となるのであった。
Fin.
あとがき
お読みいただきありがとうございました。
時系列が多少狂っているかと思いますが、そこは二次創作ということで。
このネタは、nayutaさんがおしごとを辞められ個人事業主となり、屋号が[株式会社nayuta]となっているのを発見したときに思い付いたネタであります。
nayutaさん社長の会社、勤めてみたいですね。
主人公の名前が「俺くん」ですが、いい名前が思いつかなかったので考えるのをやめました。
あくまで、3人の活動者の掲げる旗についていっているのが我々、らぷりすだと考えているので特定名をつけずにこの形にしてよかったと考えております。
男性呼称にしたのは申し訳ないです。ただ、「私くん」や「僕くん」にしてしまいますと何となく語呂感が悪かったため、「俺くん」にしました。
「ワイくん」は2ch感が出てなんかイヤだなって。
最後は「もげたま」とか「効率厨」とかと同じような終わり方に使用かとも思いましたが、まだ ”La prièreさんの終着点” ではないと思うので。
まだまだLa prièreさんの旅は続いていくはずだと思ってます。
間のライブの話ですが、StTで一番印象に残った事件でしたので想像マシで書かせていただきました。トラウマだったり嫌な思い出をよみがえらせてしまったなら、ごめんなさい。
24/12/15現在、目立った動きがぬいの発送とオンゲキコラボですが、2025年に目に見える活動が再開されることを祈っています。
最後に2024年もLa prière Advent Calendarの企画・主催を務めていただいたEtrisさんに感謝いたします!ありがとうございます!
そしてすでに記事を掲載された方、これから掲載される方にも感謝いたします!ありがとうございます!
それでは、皆さん良い年をお迎えください!
おつぷりえ~る!
La prière Advent Calendar2024, 16日目の担当は
夜明けドリンクさん!
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