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千紫万華(重紫) のこと

最近、上陸した《千紫万華》(原題:重紫)の感想を見かけるようになったので、結末について自分が調べた補足などを少し書こうと思います。
(前置きが少し続くのでネタバレ部分は↓からどうぞ。)


《千紫万華》は、生まれつき悪いものを引き寄せついでにイケメンたちを次々と狂わせる文字通り"魔性"体質を持ったヒロインと世界最強の師匠との間に情が芽生えて、最終的に世界と愛の間で苦しむドラマです。
演技は発展途上()とはいえお顔がとても可愛いヒロイン·楊超越のお相手は独孤伽羅の宇文護でお馴染み徐正溪、脇を固める女主にメロメロ組は山河令の蠍ちゃんとお坊ちゃん、そして長相思の涂山璟、ダークサイドには星漢燦爛の太子と三皇子が出てくる、顔面つよつよな大量の相手との逆ハー展開です。化粧は濃いめですが眼福過ぎて視力が上がりました。

ただし致命的な難点があり、とにかく話が安定しません。

正直言って、(原作小説はともかく)このドラマの大筋と展開はかの有名な《花千骨》とほぼ同じなので、中国ドラマらしい美しく整った禁断の愛と悲劇を求める方は《花千骨》で充分かと思います。

そしてこちらはとにかくとっ散らかったドラマですが、目の保養が過ぎるからなのか、定期的に刺さる展開が襲ってくるからなのか、ツッコミどころのあるものの方がかわいいからなのか、何故かわたしはこのドラマが今でも心に残っていて、実はとても好きなのです。OSTも良くて未だに聴いています。
視聴を積極的に勧めはしませんが、安定しない物語である前提で誰かと一緒に(これが一番大事)ツッコみながら見るならば、この上なく楽しいドラマだと思います。
本国配信時はみんなで最後までたどり着いた達成感が半端なくて(笑)、テレビ放送の感想をSNSで言い合うのはめちゃくちゃ楽しいのではないでしょうか。
いまから感想が楽しみです。

ちなみに配信は先でしたが、張彬彬の《月歌行》は姉妹編で同じ世界観の未来を描いた物語に当たります。わたしは未視聴ですが、こちらも原作と比べると中々の魔改変具合とききます。

以下ネタバレです。




結末のこと

さて、ストーリーがとんでもない暴れ馬な千紫万華ですが、それにもめげず最後までたどり着いた方はもれなく思うことでしょう。

真の黒幕と思われたdead moon氏、あっけなさすぎでは、と。

本国配信で最後数話を課金までして先行開放したものの、この件について謎しかなかったわたしは、本国の原作小説読者の解説を探して微博の海に潜りました。
すると有識者曰く、多くの仙侠に共通する世界観に習い、この世界には仙人(/魔尊)よりも強い存在として神(魔神)という立ち場があって、亡月は魔神設定なので本来は洛音凡(仙人)では敵わない相手なのだそうです。だからずっと神のクラスに昇格するため修行し(ようとし)ていました。
けれど洛音凡は入魔して己を高めて神になることは不可能なところまで来てしまったので、最後に自分を犠牲に重紫を浄化して力も与えることで彼女を"神"に押し上げて魔神を倒し世界が平和になった、というのが元の結末なのだそうです。
恐らく検閲で削られて(魔神設定が通らなかった?)こんな過程と結末にせざるを得なかったのではと言われていました。

中国のドラマには放送規定に則った検閲があり、つまり国の許可を得なければ放送できません。匙加減はその時々によって異なるそうですが、"魔"族は通らない事が多いようです。
(ex. 蒼蘭訣の月族も原作では魔族)
加えて近年1話45分×40話までというルールが追加され、それ以上の話数想定で作られていた数々のドラマが内容削減を余儀なくされており、辻褄の合わない展開の出現に一役買っているように感じます。
(U-NEXT版は50話ほどあるようですが本国配信は40話+番外でした。)
以前は前後編にするという抜け道もありましたが、最近は続編(前後編とする場合も含む)は1年以上あけて放送するように、という規則ができてしまったので難しくなってきました。
こちらの道を選択した長相思は第1期と共に撮影済みだった第2期の放送までに1年かかった上、第2期は元々35話だったものが検閲で→21話→23話となり、最終的には12話分の削除がかかってやや駆け足な展開になっています。

なお千紫万華の本国配信では最後にふたりが夫婦として穏やかに過ごす9分ほどの番外があり、円盤特典に含まれているのは確認しましたが、上陸配信版にもあるでしょうか。
これは原作の「その後ふたりの魂は剣霊となり、各地をまわりながら幸せに暮らした」という締めくくりの部分を描いたものだそうです。
予備知識無しでは意味不明です。

個人的に特に大きな情報の欠落を感じたのは秦珂・亡月・親世代で、長相思のお陰で恐らく日本でも話題になり始めているであろう鄧為(秦珂)は出番が少なすぎて、配信終了記念のファンミに不在だったのも残念なところです。
彼は《长月烬明》でも削減の煽りを食らったひとり(いや被害者はほぼ全員なのですが彼は特に)だったので、不憫としか言いようがありません。

(ちなみにこのドラマには《重紫之雪仙情》という陰水仙と雪陵の物語を描いた番外映画がありまして、まさか上陸予定などは…?)

などなど、色々言いたいことしかないドラマですが、わたしとしては分裂してしまった気持ちで2回目を始めた洛音凡の狂気がホント好きなので見て良かったと思っていて、この出会いに感謝しています。

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