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尾道灯りまつりの記憶

ちょうど一年前「東京百年レストラン(1)(2)(3)」などの著作があり、僕の食べ歩き師匠の一人である伊藤章良さんが広島を訪れてくれた。
コロナもあってお会いすることがなかったので、久しぶりの旧交を温めたのだが、その時「シャオヘイ、君は尾道灯りまつりを知っとるか?」と言われた。
僕はそういうイベント事に関心が薄いので知らないと答えると「あれはいいぞ」と言われるではないか。
伊藤さんもご存知ないまま、尾道に宿泊されたのだが、ちょうどその夜が尾道灯りまつりだったようだ。

広島市からだと尾道市は近いし、ぜひ行くべきだと力説され、それならば次の年に行ってみようと予定していた。
そして今年が先日の2023年10月7日(土)だったので、期待して訪れたという訳だ。

尾道港は平安時代に築港されており、当時は当然電気がないので夜は真っ暗になる。
当時の船は帆船なので、必ず昼間に寄港できるとは限らず、風や潮の調子が悪いと日が落ちてから港に入ることもある。
そうすると、どこまでが海で、どこからが陸なのかもわからない。
そのため港には常夜灯という、夜を徹して灯りを点けておく設備があった。
それを模して20年くらい前に始まった祭りだと地元で世話をしている人に教えてもらった。
「尾道のモンは祭り好きだからな」というのが彼の意見だ。

17時半から晩ご飯を食べ、暗くなった19時過ぎに外へ出ると、街中、至るところに紙灯籠が置かれているではないか。

商店街だけでなく、北側の坂道にも灯籠が置かれる

派手な飾り付けをするわけでもなく、いつもの尾道が蝋燭の灯りでライトアップされるだけ。
それだけでこれほど非日常な風景になるのだ。

紙灯籠は地元の子供たちが絵などを描いている

多くの紙灯籠には地元の子供たちが絵や模様を描いており、願い事が書かれたものも多かった。
自分の紙灯籠を家族と一緒に探している子供たちがたくさんいた。

個人の住宅と思われる

それだけでなく、個人の住宅で影絵を披露してくださっている家もあった。
オフィシャルには掲載されていないが、このような隠れた見どころがあるのもこの祭りの魅力だ。

竹灯籠や手前や奥の左右に見える紙灯籠はその地域で掲出

この場所も地域の人たちが自前で灯籠を出し、管理しておられた。
梵字や仁王の絵が描かれた灯籠や、竹の灯籠を追加で作られたようだ。
そして中には蝋燭が入っているので、祭りの間はずっと立哨されていた。
強い風が吹いて、紙に火が点けば火事になる恐れがあるため、持ち場を決めて必ず立哨する方々がいらした。
蝋燭の火が消えれば再び点火するのも彼らの役目だ。

個人宅で今年は立ち入り不可になっていた

上の写真は個人宅の庭で、今年は改装中とのことで立ち入り不可になっていた。
例年は入れたようで、毎年ここを楽しみに来ているという人がいらした。
灯りまつりの中でも特に美しい場所だった。

西國寺の境内

大勢の人たちが向かっているので訪れてみた西國寺が最大の人気スポットとのことだったが、ちょっと僕には派手すぎるように感じられた。
しかし、この高台にあるお寺から街を見下ろすと、そこには絶景が広がっていた。
こちらのほうが僕には好ましい。

西國寺の参道を彩る紙灯籠と尾道の街の灯り

ステージもなければお囃子もない。
パレードも出店もない。
ただ静かに蝋燭が揺れて、人々がそれを眺めている。
点灯は18時からだが、暗くなるのは19時くらいで、終了は20時半。
正味1時間半で終わってしまう儚いお祭りだ。

しかし、それがいい。

やっと涼しくなり、夜の尾道をそぞろ歩くのには最高の季節。
慣れ親しんだ尾道の、隠された魅力を発見できた。
訪れるなら大勢よりも親密な人と2-3人が良いだろう。
実際の景色は僕の写真よりも美しい。

なお、この日は時間貸しの駐車場が満車になるため、車で訪れるならakippa特Pで予約しておくと安心だ。

オマケとして次のページでは、この日、どこで何を食べたのかを紹介しておこう。

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