
マイ楽 満天の星が輝いた
ディミトリとルスダンの生きざまを考えた
相思相愛でありながら、取り巻く環境のためにままらなかったルスダンとディミトリ。
そう、冒頭の物乞い(美稀千種さん)がつぶやく
「狭い土地をめぐっていがみ合い、争い、憎しみあい…」
そして何も残っていない荒廃した地上。
無邪気な王女様が、予期せぬ王位を継ぐことになり、動揺する。
兄の遺言を意向を聞かされ、ルスダンは「私にどうやってこの国を治めろというの?」と泣き叫ぶが、覚悟を決めた彼女は
「ディミトリ…手伝って」
天真爛漫な少女時代との決別の瞬間だった。ここからのルスダン(舞空瞳ちゃん)の立ち居振る舞いやしぐさが、あどけない子供から大人、王女から女王に変わっていく。舞空瞳ちゃん、見た目はかわいいタヌキ顔で童顔だけど、いつの間にか大人の女性、母親の芝居も違和感なく板についている。
ディミトリ。人質としてジョージアに来て、絶えず誰かに見張られている日々。日本史の授業で習った戦国時代の人質のようなものだろうか。なにかあれば、容赦なく命を取られる。気の休まることはないだろうし、己のアイディンティティであろう名前さえも、キリスト教の名前に改名せざるを得ないのだ。孤独な暮らしの中で唯一心を許せるのが、ルスダンの存在で、彼女こそディミトリにとって光だったにちがいない。宝塚の舞台だからディミトリは主役ではあるが、彼のセリフにあるようにあくまで「僕は影の存在」に徹している。前に出ることはなくとも。
そして若い二人に「勇気とは何か」を示唆するギオルギとパティシバ。歌で語るディミトリとの三重唱は、本当に聴福!
狭い土地をめぐって、世界中を引っ掻き回した男、チンギス・ハーン(輝咲玲央くん)。舞台中央ではジョージアダンスでモンゴルとの戦いが繰り広げられる。下手で高見の見物をしているチンギス・ハーンは立っているだけで「漢」の姿。さらに上手からギオルギに向かって矢を放つモンゴル兵がバイトの極美慎くんであるのを知ってしまったからもう目が足りない!2階席のほうがちゃんと認識できたのはなぜ?振り向き方を変えたのか?
極美慎くん、ミヘイルとしての初登場シーンもカッコよかったんですけどね。一斉に客席のオペラグラスが上がっていた。さらにルスダンとコトに及ぶシーン、原作通り「身の程をわきまえないことは百も承知しています…」のセリフの後にルスダンのドレスの裾を掴むしぐさ。マイ初日~中日ごろまでは、がしっと掴んでいたのが、中日を過ぎたころになるとおずおずと、震えるように掴んでいた。オペラグラス越しに見たしぐさだけど。
オペグラ上がりといえば、ジャラルッティーン(瀬央ゆりあくん)とナサウィー(天華えまくん)の登場シーンも然り。そういう演出なのが心憎い。というか、ジャラルッティーン、終始格好良すぎる。恐ろしい男だけど寛大な男、度量の広い男だ。ディミトリは最終的に二重スパイになってしまったが、ちゃんと彼の真意を汲み取っている。なかなかいないぞ、こういう男。
回を重ねるごとに芝居は深まっていくし、中日を過ぎたころになると、大詰めの舞台中央でディミトリとルスダンが愛を歌う。背後では戦っているジョージア対ホラズムの戦いが繰り広げられているシーンですでに涙腺が緩んできてしまった。ラストのアヴァク(暁千星くん)がディミトリ訃報を告げることをルスダンが拒み、ディミトリを求めてリラの樹の下で「生き抜くわ」と決意するところでは、もはや涙腺崩壊。原作に忠実な展開、そしてさらに膨らませた宝塚の技量!
狭い土地をめぐっていがみ合い、憎しみあうことの愚かさ、虚しさ…
勇気とは、たとえ世界を敵に回しても、自分の愛するものを守ること。
JAGUAR BEAT 眩暈がするほど斬新でおもしろい
「たいっへん長らくお待たせいたしました」開演を告げるこっちゃんの口調を文字化するとこんな感じかな。このショーへの思い入れと熱さが伝わってくる。観る側も「ヨッシャ!どっからでも来い」
ロック調にアレンジされた「G線上のアリア」にのって
「星組 暁千星 大劇場参上!」といわんばかりに踊るありちゃんとブラックパピヨン8名。
この時点でこの作品は勝利!
ありちゃんの加入で、星組のショーは本当にすごいことになってしまった。
歌やダンスの組み合わせもあらゆるパターンができるし、碧音斗和くんや稀惺かずとくんや大希颯くん等、若手にバンバン歌の場面を持たせたり、銀橋通行させるし、本当に目が忙しい。ラインダンスが前半にきててもかまわない。スターオンパレードのプロローグ、ことせおの歌い継ぎ、踊り継ぎが好き。同期の絆、関係の良さがうかがい知れる。電飾過剰、爆音という人もいるようだが、なにより星組パッション!炸裂だ。
どうも斎藤吉正先生の作品は好きときらいがはっきり分かれるらしい。
確かに、猛獣使いのありちゃんが持っていた鞭が、いつのまにか女豹ピースケの手に渡っているのも不思議だけど、深く考える必要はない。
ことありピースケのダンスを堪能すればよいのだ。
グランフェッテというのか?足を真横にさっと上げてくるくる回る。ありちゃんの一連の動きがすごい。ダンスのことは何も知らないけど、とにかく動きがきれい。踊れる男役というのは、月組時代でも際立っていたけど、星組に来て、さらにパワーアップしている。そしてあの笑顔を見ていやな気持になる人なんていない。歌ももちろん!でもそのあとにこっちゃんが登場すると、やっぱり声量の差はあるが。そりゃ、そうだ。
中詰め、こっちゃんが下手から銀橋に出て歌い、ワイルドキャッツたちと戯れた後、上手花道にはけていく。上手からダルマ姿のなこちゃんが銀橋にさしかかる直前、ことなこのアイコンタクト!あまりコンビ萌えしない私だけど、ことなこは例外となったことがこの場面で決定。
なこちゃんは、芝居もそうだけど、変にお慕い芸に走らず、まっすぐに相手と向き合う姿が好きだ。
ありちゃんとしんくんのダンスも素敵だ。男役同士の絡むダンスというのも絵になる。
トップシーンの「G線上のアリア」がデュエットダンスではポップになって登場。天国で結ばれたジャガーとクリスタという設定らしい。派手なリフトこそなくても充分魅せてくれる。これが卒業公演になる遥斗勇帆くんの歌は日ごとに力強くなっていく。そして、ソロで踊るありちゃん。舞台狭しと「ダンサー暁千星」は踊り、客席を魅了する。なこちゃんの歌に乗せて踊ることせおありのダンスは、何度見ても眼福だ。
こっちゃんの歌とダンスを全身で浴び、星組のパッションを感じたこの作品。今年の大劇場見納めは、眼福!聴福!最高!
マジでMagic キラキラ Beat!Beat!Beat!