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泣いていたら分からない『ミュウツーの逆襲』⓪

前書き

先日『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』を観てきました。
日曜日という事もあり、客席はほぼ満席、久しぶりにポケモン映画を観に行った僕は改めてポケモンの人気を再認識させられました。
客層は半分は小さな子供連れの家族と、もう半分は僕と同じくらいであろう20代半ばから30代前半の男女という感じでした。
映画が始まり物語が終盤になるにつれて、予想通りと言うべきか、周りから明らかに大人と思われるすすり泣きの声が聞こえてきました。そんな中僕はというと、片肘をついて、あごに手を当てながら、眉をひそめて画面を値踏みするように観ているこの男を、きっと隣のカップルは嫌な客だと思ったでしょう。
というのも、前日に予習と復習も兼ね1998年公開の『ミュウツーの逆襲』を観ていたからです。改めて観るとやっぱりかっこいいし綺麗だし感動するし大好きな映画なのですが、それ以上にこの映画、深すぎるし難しすぎて頭を抱えてしまいました。
そういう理由で映画館での僕は斜に構えてるわけでもなく、何かこの映画にヒントはないものかと、考えるのに必死で涙が引っ込んでしまったという訳です。
たしかに映画というのは気持ち良かったり、悲しかったり感動して涙を流したりすることでストレス発散して何か感情を動かすために観るものという側面がありますが、一部僕のように理屈や理由を探しに映画を観て、どうにか批評(決して『批判』ではない)してやろうと思っている人間も少なからずいる訳で、そういう人間にとって自分を「感情を動かすプロ」である映画に委ねてしまうと、「良いもの観た感」に満たされて考えることを放棄してしまうのでそれを防ぐためにこういう姿勢で観ることもあります。
この『ミュウツーの逆襲』についても、感情を委ねてただただ観てしまうと、この映画がどういう話なのか分からなくなり、それにすら気付かないでなんとなく「いい映画だった」で終わってしまいます。

「そんなの分からなくて結構」という意見も勿論あると思いますし、『ミュウツーの逆襲』については、ストーリーや何を言っていたのかが分からなくても面白いし感動するのがこの映画の素晴らしいところだと断言出来ます。なのでこれを読むことで昔のあの素晴らしい思い出を壊すことになるかも知れませんし、あくまで個人の考察なので、そういうのが気になるという方は閲覧非推奨です。

という訳でこの記事では『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』ではなく、リメイク元である1998年の『ミュウツーの逆襲』について、「この映画がどういう話なのか」「あのセリフ、あのシーンはどういうことなのか」ということをポケモン映画にあまり造詣のない自分なりに出来るだけ具体的な理屈で考察をしたいと思います。具体的には、

①この映画におけるアイツーの意味
②「ここはどこだ?私は誰だ?」の意味
③ミュウツーの「逆襲」とは何だったのか
④ミュウの存在と目的
⑤ラストシーンについて
 なぜサトシの仲裁で戦いを止めたのか?
 なぜポケモンの涙で石化が解けた?
 なぜミュウツーは去って行ったのか?
 なぜミュウツーは記憶を消したのか?

について考えてみます。もし、これについて明確に答えを持っている人がいるならコメントで是非教えてほしいです。何故なら自分を納得させる回答がまだ出ていないのにこれを書いているからです。

さて、考察するにあたって出来ることなら、今一度『ミュウツーの逆襲』を観てからこの記事を読むことを推奨します。あらすじは最低限にしか説明しませんので、昔に観ただけだとやはり記憶があやふやになっている部分もありますし、今観ると改めて凄い映画であることに気付くかも知れません。
ちなみに実は『ミュウツーの逆襲』は色んなバージョンがあり、今回は「完全版」と呼ばれるディレクターズカット版の話で進めますが、DVDもしくは動画配信サービスのものはおそらく「完全版」ですのでほとんど問題ないかと思います。
また今回は考察するにあたり『ミュウツーの逆襲』の他に、
・前日譚である『ミュウツーの誕生』というドラマCD
・本作の脚本を担当している首藤剛志氏のコラム(http://www.style.fm/as/05_column/05_shudo_bn.shtml)
を参照しますが、首藤氏のコラムはあくまで参考程度です。というのも、よく「監督・脚本家・プロデューサー等のスタッフがこう言ってるからこれが正しい」というような論がありますが、これは正確ではないからです。なぜなら映画は監督や脚本家、プロデューサーのものではないからです。あくまでその人達は映画を作る上での1セクションの人にしか過ぎず、その人が作品全てを担ってる訳ではないからです。したがって『ミュウツーの逆襲』とドラマCD『ミュウツーの誕生』のみを一次資料とし、記述します。
前置きが長くなりましたが、次より本題に入ります。

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