【写真が導いてくれた私の人生】衝撃を受けた報道写真とアートの境界 — Vincent Laforet編
部屋に飾りたい写真からの出発点
写真に夢中だった学生時代、私の評価基準は単純明快でした。「部屋に飾りたいかどうか」。どこかおしゃれで、見る人に「いいね」と言われるような写真を撮ることを目標にしていました。しかし、写真の技術や知識に乏しく、美術館でアートの価値や背景を理解することもできなかった私は、表面的に「かっこいい」と感じるものだけを基準に撮影を続けていました。
そんな中、ニューヨーク・タイムズの写真記者であったVincent Laforetさんの作品に出会い、私の価値観が大きく変わることになりました。彼の写真は、「報道写真は記録のためだけのもの」という固定観念を根底から覆すものでした。
https://www.vincentlaforet.com/
報道写真の新しい可能性を示した写真家
Laforetさんの作品に初めて触れたのは、オリンピックで撮影された写真でした。飛び込み競技で、水中から水面へと向かう選手をプールの底から撮影した写真や、シフトレンズを使って撮影されたトラック競技のシーン。これらの写真は、報道写真の枠を超え、物語性やアートとしての美しさを兼ね備えたものでした。
特に衝撃的だったのは、彼がハリケーン・カトリーナの取材で撮影した写真です。浸水した街で救助を待つ人々や、水没した車、整然と並べられた冷蔵庫など、被災地の現実を伝えるこれらの写真は、ただの「災害の記録」ではありませんでした。そこには、現実の中に潜む物語があり、見る者に深い感情を呼び起こす力がありました。
「報道写真でありながら、アートとして成立している」
このLaforetさんの作品に感銘を受けた私は、彼のWebサイトやブログを定期的にチェックし、彼の動向を追い続けました。
映像と写真の境界を越えて
Laforetさんの影響は、写真だけに留まりませんでした。私が彼の映像作品に心を奪われたのは、彼がCanon EOS 5D Mark IIで制作した短編映像「Reverie」を見た時です。この作品は、静止画の美しさと動画の躍動感を融合させ、それまでの映像作品の概念を一新するものでした。
特に印象深かったのは、この作品が撮影経験の少ない状態で、わずか48時間で制作されたことです。プロトタイプのカメラを使用して新しい可能性を試しながら制作されたこの作品は、技術や知識に縛られない創造性の重要性を教えてくれました。また、「写真と動画は別物」という私の固定観念を崩し、両者が連続する表現の一部であることを気づかせてくれました。
この影響を受けた私は、真似をしながらも、映像の中に写真的な構図や光の使い方を取り入れる試みを始めました。Laforetさんが示した映像と写真の融合は、私にとって新しい表現の扉を開くきっかけとなりました。
写真家としての転機
Vincent Laforetさんの影響を受けたことで、私の写真への向き合い方は劇的に変わりました。それまで「おしゃれな写真」や「かっこいい写真」を追求するだけだった私が、写真を通じて物語を語ること、そして見る人の心に何かを残すことを目指すようになったのです。
さらに、写真だけでなく映像への興味も芽生えました。一枚の写真で伝えられる感動もあれば、連続する映像でしか描けない物語もある。この考えに触れることで、表現の幅が広がり、写真や映像の新しい可能性を追求したいという気持ちが強くなりました。
Laforetさんとの出会いは、写真家としての私に新たな道を指し示すものでした。彼が切り開いた写真とアート、そして映像の境界を越えた表現の世界は、これからの私の創作活動においても大きな指針となっています。