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朝倉海のパントージャ戦UFCタイトルマッチの感想 ー 敗因と弱点

日本人初UFCチャンピオンをかけた試合という事で朝倉海選手にはかなり期待をしていて、応援もしていたが残念ながら2ラウンド負けしてしまった。試合前の感想としては、かなりPRに力を入れてるなぁという印象だった。

BreakingDownやRizinぽい煽りは必要なかった

初のアメリカ舞台で、更に夢にまで見たUFCのタイトルマッチなだけがあって、かなり気合いが入ってたのは間違いない。海外にインパクトを残し、多くの人に視聴してもらう狙いだったのだろう。実際試合前にパントージャに対して朝倉海は、

「お前はノーグッドだ、もっとプロモーションを頑張った方がいい」

という煽りをしていた。しかし、パントージャも視聴者も少なからず、

「何言ってるんだ?どっちが強いかを決める場だろ?」

と言いたげな反応と雰囲気を明らかに感じさせていた。個人的にも正直、ここでブレイキングダウンやRizinの様な日本的な試合前の不自然な煽りやパフォーマンスは必要なのか疑問に感じてしまった。確かにユーチューバーとしての活動など知名度や集客、収入面での活動は必要だったかも知れないが、やっと手に入れた大舞台とチャンスの場にたどり着いたたのに、ここではもう余分な演出はやる意味があったのだろうか?

純粋なMMAファイターと格闘技系ユーチューバーの差

ATT所属UFCフライ級チャンピオンであるパントージャは、終始不必要な挑発やパフォーマンスはしなかった。試合前から、試合中まで表情も変わらなかった。やる事は当日相手を倒す、勝つ事だけ。ATTには堀口恭司もいるが、本人のユーチューブではパントージャはチームがいるから特にアドバイスはしていないと言っていたが、試合後のパントージャは勝利者インタビューで堀口恭司のお陰だとも語っている。

UFCのタイトルに挑む時点で、朝倉海は格闘技だけに、パントージャだけに集中するべきだったのかもしれない。これは魔裟斗選手や前田明氏も常日頃から主張している事だった。もちろんそれだけが原因ではないにしろ、結果には出てしまっている事に変わりはない。

朝倉海は穴だらけのファイター

井上尚弥はボクサーだが、パワーもあり、タイミングも良く、スピードもあり、格闘技IQも高く、そして何よりもディフェンスがうまい

ディフェンスに問題がある

朝倉海選手も早いラウンドでの打撃のKOが多いので試合は面白くファンも多いが、穴だらけに見えてしまう。まずRizinの試合でも目立つのが、真っ直ぐ前に出てくるのでとにかくパンチをよくもらい過ぎてしまい、ディフェンス力に欠ける。相手をすぐに倒す事に成功すれば良いが、長引くほどに自分も簡単に殴られてしまう。

2回目の堀口戦もカーフキックを簡単に何度ももらってしまい致命的になってしまい、後に「もう対策はできる」と語っていたがその時にすべて対処出来なければ格闘技では終わりになってしまう。

寝技に消極的すぎる

朝倉海は豊橋では柔術の道場に通っていて(多分)、現在所属のJTTも柔術のジムらしい。本人も寝技が苦手なわけではないと語っているのをよく目にする。

しかし、Rizinでも自分から積極的にテイクダウンを取りに行こうとしたことはない。決め技での勝利もなく、グラウンドになるとすぐに立ち上がる。柔術がバックグラウンドのクレベルコイケは対称的に、自分から積極的に下に行こうとすらし、相手を寝かせたら出来るだけ立ちあがろうとはしない。それは、寝技に自信があるからだ。

パンチや膝に自信があっても、いくら打撃に自信が強くても、相手からすると選択肢が少ないので対処しやすくなる。

戦い方がワンパターン

朝倉海は穴だらけで弱点が多い。前田明は「パントージャの方がキャリアや経験が多くそこで差が出た」というが、単なる試合や経験の多さが勝敗の差を分けたとは思えない。今回のUFCタイトルマッチの戦い方は、これまでのRizinでしていた動きとほぼ同じだった。

速い動きと連動したパンチ、膝のカウンター狙い、タックルは切る、倒されたらすぐ立つ、また打撃、そして得意の早いラウンド狙い。

しかし、もしいきなり朝倉海がテイクダウンを取ろうとしたらどうだっただろうか?パントージャは焦ったはずだ。

「こんなの映像になかった」という混乱もなく、「観てきた通り、予想通りの男だ」「堀口の言ってた事は本当だ」とパントージャは試合中思ったかもしれない。

もし仮に朝倉海が積極的にテイクダウンを狙ってくる様な選手だったとしたら、打撃はもっと当たりやすく相手には対処しずらくなる。パンチやたまにくる蹴りだけ警戒してるファイターより、プラス打撃と見せかけて寝技できめにかかるファイターの方が注意すべき点が多くなり、自分の攻撃も選択肢が限られてくる。

快適なゾーンの外側

今までのバンダムから更に下の階級フライ級だった為、もしかしたらコンディションは万全ではなかったかもしれない。また、ホームの日本ではなくアメリカでの試合、初めてのUFCの舞台という事でメンタル的にもプレッシャーはあっただろう。だからこそ、やっと掴んだチャンス、知名度や煽りや盛り上がりや集客よりも、勝ちにだけ徹して欲しかった。このベルトだけは、純粋に自分の夢と勝利の為だけに時間を使っても誰も非難はしなかったはずだ。

魔裟斗氏もいう様に、最終的には「何かを得る為には、何かを捨てなければならない」のかも知れない。朝倉海の選択は間違っているわけではないが、恐らくパントージャにすぐリベンジするチャンスはなく、タイトル再挑戦もかなり先になるだろう。

日本人がUFCのチャンピオンになれなかったのは非常に残念だ。応援していたが、負けを受け入れるしかない。

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