企画動画「歴代ダービー馬最強決定戦」(2019年時点)の感想
※動画【数字から読み解く『歴代ダービー馬最強決定戦』(スピード指数&個別ラップ&完歩ピッチ)】
◆感想
この動画は投稿当時(2020年)にも見ていて、最近思い出して改めて見てみたのですが、この手の話題はどうやったって賛否両論で荒れるのでいろいろと扱うのが難しいとは思いますが、これを初めて見た当時の感想としては、かなり妥当な結果というか、いい塩梅の結果だなあと思いました。
比較的オールドファンに人気がある(というか声大きいオールドファンが多い)ナリタブライアンやトウカイテイオー、比較的若いファンに人気がある(というか声大きい若いファンが多い)オルフェーヴル、ディープインパクト、キングカメハメハを絶妙に理由付けしつつ評価して配置。
それでいながら、上記の面子に比べると三冠馬や奇跡の復活などの特筆要素が少なかったり、時代が古いなどの理由もありニワカ的人気面で少し劣る(というか声大きいファンが少ない)ものの本当の識者なら高評価しないといけない馬(だと個人的に思っている)、ミホノブルボン、シンボリルドルフ、スペシャルウィークを上位評価に入れているのも安心感ある内容でした。
1.改修前コースの稍重で圧倒的パフォーマンスを見せた最強世代のダービー馬スペシャルウィーク
一方で、スペシャルウィークの補正最速ラップが11.25秒となっていて、コメントでも「平均ラップのレースに強く、究極の瞬発力勝負では弱い」となってましたが、スペシャルウィークは改修前の、昨今ほど高速でない頃の東京競馬場のコース・芝でスパートの全体ラップが11.2秒の残り400-200m区間で馬群を割って突き抜けてきているので、悪く見積もっても11.0秒、おそらく10.8~10.9秒の最速ラップを刻んでると思われます。稍重馬場で。
なので、確かにスペシャルウィークという馬のイメージ的には走法も大跳びで、末脚の持続力とスタミナの鬼なので瞬間加速力はスペシャリストに劣るみたいなイメージはあるものの、実際にダービーで見せたパフォーマンスを元に評価するなら、当時の馬場の稍重のダービーで優秀な瞬発力を見せていることを評価してもいいはずで、良馬場なら、改修後や今の東京競馬場のコース・馬場ならもっと速いラップを出せる単純計算になるでしょう。
まあ、単純計算ではなく様々な要素から総合的に補正をかけての企画ですから仕方ない点もありますが、無敗三冠馬や無敗二冠馬らを差し置いて所詮はダービーしか勝ってない馬をこの豪華メンバーの中で1位にするのは荒れるからやめとこう、みたいな大人の事情もありそうだとも思いました。
予想家の印が上位では唯一無印というのもいろんな意味で残念な所ですが、大人の事情を発動させる要素でもあったと思います。
スペシャルウィークは武豊騎手もストライドが大きいので不器用な所があると評してましたが、一方で小回りの有馬記念でも小回りスペシャリストのグラスワンダーのコーナリングに遅れずに着いていく機動力も持っており、本質的には何でも出来る要素の強い馬だと思います。
ダービーは2:25.8という走破時計が改修前当時のコースの稍重で記録されたものというのも優秀で、最後は着差がついたのと騎手がムチを落としたのもあり余裕残しでラスト200mのラップと推定ストライドがかなり落ちているようです。その分の査定マイナスもあるかもしれません。
良馬場で記録されたナリタブライアン(2:25.7)、トウカイテイオー(2:25.9)らのパフォーマンスがレコード級に評価(改修前ダービーレコードは2:25.3=アイネスフウジン・アドマイヤベガ)されていたことから考えても、スペシャルウィークのダービーはそれらをさらに上回るパフォーマンスだったと言っても罰が当たらないし、悪く言っても同等だと思います。
何かとロマンを盛って高く評価されやすいナリタブライアンやトウカイテイオーに比べると、ダービーにしてもその他にしても過小評価されていると思います。
また別の方の分析動画によると、当時のコースと馬場で、しかも良馬場よりはストライドが小さくなりやすい上にスピードも出にくい稍重でありながらコース改修前の馬では唯一推定10秒台のスパート時最速ラップと歴代著名ダービー馬たちの中で最もスパート時の平均ストライドが大きい馬となっていることからも、スペシャルウィークのダービーの走りやパフォーマンスが特筆に値すると思いますし、このメンバーでいうとミホノブルボン以外に負けるイメージが湧きません。
2.最も無限の可能性を感じさせた三冠馬シンボリルドルフ
シンボリルドルフは説明不要の皇帝ですが、今走りを見ても現代の名馬にも全く劣らない雄大な雰囲気と力強さと美しさを両立した走法が印象的で、どんな展開になっても対応可能な馬に思えます。
まあ、今(2020年代)でいうとシンボリルドルフはノーザンファーム生産馬で社台系クラブ所有馬かつ主戦ルメール騎手みたいな、あの当時に現代に近いような最先端の環境と待遇で馬の能力以外含めて大きな恩恵を受けたからこその強さもありますが。
三冠馬至上主義的に考えるならば、尚のこと忘れてはいけないのがこの馬だと思いますから、何かと最強馬といえばナリタブライアンだディープだオルフェだという大きな声が上がる中で、時代が古いせいもありますがルドルフの存在感が彼らに比べて低く固定されやすいのは過小評価だと思います。
最近の馬でいえばイクイノックスの上位互換みたいなことをやってた馬です。
ただ、ダービーだけを見たらルドルフはそこまでパフォーマンスが高いかというと世代のレベルの低さ含めて微妙な所なので、この企画内において圧倒的最下位になっているレイデオロ(2017)も馬自体は弱い馬ではないのですが2017年のダービー自体が2010年代以降には珍しい超スローペースで結果的にパフォーマンスが低くなったことで低評価になってる部分が大いにあり、その慈悲のない評価を元に同じようにダービーだけで考えるならルドルフの評価も3位まで評価するには結構下駄を履かせないといけなそうに感じるのも、この企画がなんとなくいい塩梅で神の手を使ってバランス調整してると思える所です。
3.幻の最強馬マルゼンスキーの上位互換の可能性があるミホノブルボン
ミホノブルボンは無敗や無敗に近い形の戦績のまま3歳や早期に引退した最強馬候補の中に意外と名前が出てきませんが、よくそこに名前が出てくる馬と比べてもナンバーワンの馬だと個人的には思います。
この企画にも名前があるキングカメハメハやドゥラメンテは勿論、アグネスタキオンやフジキセキ、マルゼンスキーなどと比べても最も強い可能性が高い馬だと個人的に思います。
マルゼンスキーは確かにその中でも異次元の戦績(通算着差)ではありますが本馬に全く落ち度がない不運とはいえ1800mまでしか経験がないですし世代があまり強くなかったので、実際に評価されてるほど圧倒的な馬だったかは実際はそこまで確かではないと思います。まあ夢を壊してしまいますが。
というのも、マルゼンスキーは唯一の1800m戦(不良馬場)で後の菊花賞馬プレストウコウ(2着)に7馬身差で勝っています。
よく、そこから菊花賞に出ても勝てたし当然ダービーなど三冠を全て大差で勝てそう、みたいなイメージが湧いて、高く評価されていますが、ミホノブルボンがまさに同じ1800m戦(スプリングS=重馬場)で後の菊花賞馬ライスシャワー(4着)に9馬身差(2着には7馬身差)で勝っています。
さらに、このライスシャワーの正体がただの長距離得意馬でなく、史上最強ステイヤーだったことが後に明らかになるわけですから、マルゼンスキーが勝ったプレストウコウも後の天皇賞2着馬でもあるので十分強い馬なのですが、天皇賞春を隔年で連覇しているライスシャワーと比べると流石に分が悪い上に後の菊花賞馬相手につけた着差もミホノブルボンの方が上です。
つまり、マルゼンスキー以上に後の菊花賞馬を圧倒していたのに、実際に菊花賞に出走できたミホノブルボンは僅差とはいえ逆転されて負けてしまったわけで、マルゼンスキーがもし菊花賞やダービーに出走しても絶対に勝てたとは言い切れないということになります。
したがって、後の菊花賞馬をマルゼンスキー以上に圧倒した上に実際にクラシック出走して強い世代の中で高いパフォーマンスで無敗二冠を達成したミホノブルボンの3歳時はマルゼンスキーより上と言っても罰が当たらないと思います。
また、ミホノブルボンは、距離適性外とはいえマイルまでは走れる馬だった後の史上最強スプリンター・サクラバクシンオー(12着)にも同じレースで勝っている(バクシンオーは3歳秋以降に覚醒していくので当時は強くないですが)点も、スピードスタミナパワー全てが3歳時点で抜けてる馬だったことを表すと思います。
ダービーだけで見ても、パフォーマンスは高く、この当時稍重以上の道悪で開催されたダービーで初めて2分30秒を切った馬(2:27.8)であり、ダービーが道悪でありながら良馬場開催のオークスの時計を上回った歴史上2例しかない年がこのミホノブルボン(1992年)と前述のスペシャルウィーク(1998年)。
また、ダービーの2着に当時は低評価(16番人気)の後の最強ステイヤー・ライスシャワーが来ていることからもミホノブルボンの作り出した展開が本質的にスタミナを持つ馬が好走しやすい厳しいペース・展開で、ハイレベルなレースだったようにも思わせます。
そんなわけで、スペシャルウィーク、シンボリルドルフ、ミホノブルボンで◎○▲というのが、私がこのダービーを予想する場合の予想印です。
ミホノブルボンが本命でも良かったのですが、この企画上では逃げ馬として他にサニーブライアンがいて、何が何でも逃げてやるという感じだったサニーブライアンと喧嘩するかもしれず、菊花賞で何が何でもと逃げたキョウエイボーガンの影響もあってか負けてしまったのもあり、ミホノブルボンを▲に落としました。(まあライスシャワーのその後やマチカネタンホイザを差し返して2着などの内容を考えるとただライスシャワーが強すぎただけという可能性が高いとは思いますが)
また、そのサニーブライアンもフロック視されながらレベル高い世代でのクラシック二冠を大外枠からの逃げ切りで連勝したのが不気味です。そのダービーを最後に故障引退となったのは残念ですが、ミホノブルボンと並んで他の歴史的名馬たちのファンをあざ笑うようにあっさり逃げ切る姿も結構想像できてしまう馬です。
ただ、ここでは同等かそれ以上にレベル高い世代の中で、人気を背負う立場で菊花賞まで最強馬として君臨し続けたミホノブルボンを上に取りました。
◆余談 出走馬以外でいないのが惜しいダービー馬
メンバーを見ると改修前コースのダービーレコードホルダーであるアイネスフウジン(1990)とアドマイヤベガ(1999)のどちらかは入れて欲しい気も少ししました。
その他、ウイニングチケット(1993)、サクラチヨノオー(1988)、メリーナイス(1987)あたりも走破時計やパフォーマンス的に惜しい所。
最近だとマカヒキ(2016)も人気やダービー当時の評判から考えるといないのは少し寂しいところがあります。
まあ、過去数十年からわずか18頭しか選べないとなると難しい所で仕方ありません。
今年(2024年)のダービー前に同じ企画を開催していたなら上記の馬に加えてコントレイル(2020)、シャフリヤール(2021)、ドウデュース(2022)らが新候補で、レイデオロ(2017)、ワグネリアン(2018)、ロジャーバローズ(2019)あたりが除外候補でしょうか。
◆余談データ
・東京競馬場改修(2002年)以前、東京芝2400mの道悪(稍重、重、不良)で2分25秒9を下回ったレース
・東京競馬場改修(2002年)以前、東京芝2400mの道悪(稍重、重、不良)で前半1000m63.0秒以下で上がり3F35.4以下を出した馬