キングジョージ6世&クイーンエリザベスS優勝馬、出走馬のジャパンカップ成績~2024年ゴリアット出走~
※2024年11月19日加筆、修正
※2024年11月20日修正
◆2024年キングジョージ優勝馬ゴリアットJC参戦
2024年ジャパンカップには同年のキングジョージ6世&クイーンエリザベスS勝ち馬であるゴリアット(Goliath=セン4歳)が出走予定です。
ゴリアットは単純に今年のキングジョージ勝ち馬というだけでなく、同じくジャパンカップ出走馬であるG1競走6勝馬オーギュストロダン(牡4=父ディープインパクト)、そして今年の凱旋門賞馬であるブルーストッキングらをキングジョージで破っています。
つまり、欧州現役最強馬候補の馬に勝っている馬ということで、暫定的に欧州最強馬といっても過言でない戦績でのジャパンカップ出走。
陣営もリップサービスもあるでしょうが、かなりジャパンカップ制覇への自信を見せています。
ただキングジョージといえばアスコット競馬場芝2390mで、日本調教馬が勝つのは凱旋門賞以上に難しいとも言われるコースで行われます。
時期的にも凱旋門賞や秋のブリティッシュ・チャンピオンズシリーズ開催よりは道悪開催率は低いですが、高低差22m(ロンシャン10m、中山5.3m、京都4.3m)と起伏が激しくコーナーから直線、ゴールまでほとんどが上り坂なので、コースはスピードや軽い瞬発力を強みとするコースに強い日本馬とは真逆の能力を要求され、そこで強い勝ち方をしたということは日本の芝レースと異なる適性、強みを持っていることを想像させ、特に東京競馬場芝2400mのジャパンカップでは好材料とは言えないように思えてきます。
現在と過去特に90年代以前では日本競馬の適性も現代とは異なるので、単純比較は難しい所がありますが、過去のキングジョージ勝ち馬がジャパンカップでどのような成績を残しているかを調べてみました。
◆1.キングジョージ出走馬のジャパンカップ成績(最高着順)
※手動抽出なので抽出漏れや間違いが出てる可能性があります。
キングジョージ優勝馬のジャパンカップ成績(同年)
同年の勝ち馬は4頭出走し好走馬は出ていません。
最高4着が2009年コンデュイットで、同年のジャパンカップ勝ち馬はウオッカ。
コンデュイットは2008~2009年にアメリカのBCターフを連覇しており、比較的軽い馬場への適性を見せていたといえますが、惜しくも好走を逃しました。
ただ、最後の例が2009年で、15年前なので参考になるかは分かりませんが、一応同年の勝ち馬はジャパンカップ一桁着順、7着以内に収まっており、近年の欧州馬は適性差でジャパンカップ10着前後、二桁着順も珍しくないのと比較すると悪くないようにも見えます。
JC出走経験あるキングジョージ優勝馬(同年出走以外)
2000年キングジョージ覇者にして1999年凱旋門賞馬モンジュー、2012年キングジョージ覇者にして2011年凱旋門賞馬デインドリームが1番人気に支持されていますが、好走できずに終わっています。
モンジューの1999年は日本馬が欧州G1を最も好走し勝っていた時期であり、欧州馬が最もジャパンカップで好走、勝ち負けしていた時期でもあり、日欧の適性差が小さい時代でした。4着ですが2~3着とは僅差であり、善戦しています。
2012年のデインドリームは2011年、高速の良馬場開催の凱旋門賞で5馬身差圧勝&レコード勝ちしており、日本のスピード競馬への適性も高いと評価されてか1番人気に支持されました。
また同年のエリザベス女王杯では凱旋門賞でデインドリームの3着だった欧州馬スノーフェアリーが優勝しており、欧州最強級の馬は日本でも強いという認識が広まっていたこともあると思いますが、6着に敗れました。
この2頭を倒した日本馬は1999年スペシャルウィーク&2011年ブエナビスタの父娘で、ともに同年の凱旋門賞馬かつ3歳馬を倒しており、その相手が翌年キングジョージ優勝馬になって前年の凱旋門賞制覇と合わせて欧州最強馬となっているのも類似しています。
モンジュー騎乗のキネーン騎手はジャパンカップ後にスペシャルウィークについて「キングジョージを勝てる馬だ」と評したらしいですが、その翌年モンジューでキングジョージを馬なりで圧勝して見せました。
スペシャルウィークのキングジョージ出走を見てみたかったところです。
スペシャルウィークの母父父ニジンスキーはキングジョージ優勝馬で、モンジューのように馬なりで圧勝しています。
◆2.JC好走したキングジョージ出走馬
日本調教馬以外だと最後の好走馬は2002年ファルブラヴ
ジャパンカップ好走したキングジョージ出走馬の最高着順は2着で、何故か勝ち馬からは好走馬が出ていませんが、2~3着馬からはジャパンカップ好走馬が出ています。
特に凱旋門賞も1996~1997年2年連続2着、1996年ブリーダーズカップ優勝がある上にキングジョージ2着、ジャパンカップ優勝のPilsudski(ピルサドスキー)は歴史上でも最も世界芝完全制覇に近い馬の1頭だったといえます。
日本調教馬ではハーツクライが少頭数6頭立てとはいえ1~2着と僅差のキングジョージ3着、ジャパンカップも1着と僅差の2着という実績を残しています。
しかも、2着になったエレクトロキューショニストに直線で噛みつかれたことで伸びが止まったという話もあるので、それがなければ勝ち負けできていた説があります。
◆3.キングジョージ出走日本調教馬のジャパンカップ成績
シュヴァルグランは明らかに衰えた後の晩年のキングジョージ挑戦でしたが、11頭立て6着とそれなりに頑張っています。父親がキングジョージ好走経験馬のハーツクライであったおかげもあるかもしれません。
ハーツクライ産駒でいえば最高傑作候補のジャスタウェイや、リスグラシュー、ドウデュースの挑戦も見てみたかったところです。
特にリスグラシュー、ドウデュースはともに急坂コースが得意というようなレースぶりを古馬で見せており、父ハーツクライの好走を見ても坂を上り続けるアスコットのキングジョージで好走できた可能性があるかもと思わせます。
◆4.同一年のキングジョージ&ジャパンカップに出走した馬の比較
キングジョージはジャパンカップと適性が大きく異なるとは思いつつも、両方に出走した馬の着順の前後はそのまま引き継がれることも多いようです。
2024年の今年も5着馬オーギュストロダンと優勝馬ゴリアットが参戦します。
キングジョージの内容はゴリアットの大圧勝で、100回やっても200回ゴリアットが勝つレベルで、大きな適性差がありました。
オーギュストロダンは前年にもキングジョージ出走して10着惨敗しており、完全に適性が足りてなかったと思われます。
2009年キングジョージ勝ち馬でありながら4着善戦したコンデュイットはBCターフを連覇した馬で、キングジョージを勝てるだけでなく適性の万能性や経験値も併せ持っていたことがジャパンカップの4着善戦にもつながっていたと思われます。アメリカの芝やコース形態は欧州よりは日本に近いので、日本馬の好走馬も多く、今年もシャフリヤールが2年連続BCターフ3着に好走、ローシャムパークは日本国内G1未勝利馬ですがBCターフでクビ差2着に好走しました。
ゴリアットは欧州でもまだG1勝ち鞍はキングジョージのみ。全盛期まっただ中とはいえ、実績から見る経験値と適性の万能性には不安があります。
一方のオーギュストロダンは血統自体もディープインパクト産駒で日本と縁深い上に、前述の善戦したコンデュイットやかつてジャパンカップを制覇したキングジョージ2着のピルサドスキーと同じく、BCターフ優勝経験があります。(2023年BCターフ優勝)
そこから考えるとジャパンカップではオーギュストロダンがゴリアットを逆転し先着する可能性が高いようにも思えます。
◆5.ゴリアットはJC好走できるのか
今までキングジョージ勝ち馬からはジャパンカップ好走馬が出ていません。
キングジョージ勝ち馬の最高成績は2009年4着のコンデュイット(同年)で、のちの勝ち馬の最高成績も1999年4着モンジュー(前年)です。
ただ、キングジョージ連対馬や好走馬からはジャパンカップ好走馬や勝ち馬が出ているので、好走可能性がないとは言えないと思います。
また、近年2023年前後から東京競馬場や京都競馬場の芝は欧州志向に変わってきたという説があり、欧州血統馬の好走も増えてきているため、欧州調教馬のJC好走難易度も下がってきた可能性があります。
一方で、かつてのいわゆる日本的、または米国的な主流血統馬が減ってきたので欧州血統馬の好走が相対的に増えてきただけという説もありますが、個人的には芝も欧州志向に変えてきたのだと思っています。某馬場の研究家と親しい某競馬評論家が言ってたので。
ゴリアット(Goliath)はキングジョージでは同年の凱旋門賞馬ブルーストッキング(2着)に圧勝し、同じくジャパンカップに出走するオーギュストロダンも5着に下しており、実質的に欧州最強馬といえるパフォーマンスを残しています。
セン馬なので凱旋門賞には出走権利がありませんが、出走していても好走可能性は高かったと思われます。
今年が日欧の競馬界のターニングポイントになる可能性がある
今回、キングジョージを2年連続凡走しているオーギュストロダン、つまり明らかにキングジョージが苦手な馬と、キングジョージで凱旋門賞馬やオーギュストロダンなどに圧勝してみせたゴリアットがともにジャパンカップに出走するというのが面白いところで、これでオーギュストロダンが先着、好走するようならば、キングジョージでの強さはジャパンカップとは真逆の適性、能力だと象徴することになりますし、ゴリアットが先着、好走するようならば、キングジョージでの強さ、欧州G1での強さがジャパンカップや日本で強さを発揮するための適性、能力と再び近づいてきたことを象徴することになると思います。
欧州最強マイラー・チャリンのマイルCS健闘
2024年は日本のマイルチャンピオンシップ(京都芝1600m、良)に欧州最強マイラーであるチャリン(牡4)が出走し、2~3着と僅差の5着に善戦しています。
スタートで日本馬に遅れをとったこともありますが、欧州での強さほどではないにせよ、十分能力を見せてくれましたし、展開や馬場次第では好走、勝ち負けもあったかもと思わせました。
ジャパンカップは東京競馬場なので、京都競馬場とは求められる能力、適性が違いますが、再び欧州強豪馬が日本でも強さを見せられる時代が来る可能性も感じさせるレースでした。
今年のジャパンカップは確かな逃げ先行馬が不在で、スロー展開が予想されますから、欧州調教馬はスローに慣れていて、本当の瞬間的加速力では日本調教馬より上なので、展開次第ではゴリアットの好走可能性も無視はできないと思っています。
ただ、今年は日本馬勢だけでも好メンバーなので、適性と能力の総合力で劣る可能性が高いように思います。
ドウデュース、チェルヴィニア、ジャスティンパレス、ドゥレッツァ、スターズオンアースあたりが頭を争えると思うので、基本的にはその5頭で頭を争い、その他日本馬は3着争いならという形でしょう。
そしてディープインパクト産駒で日本適性臭がより強い欧州馬のオーギュストロダンもいますから、圧倒的能力で対抗できたとしても少し3着までは足りないという感じになりそうです。チャリンのように。