中途半端星人、オレ

こんばんは。突然ですが皆さんには憧れの念を抱くフィクション作品のキャラクターっていたりしますか。まあ現代日本人なら誰にでも一人くらいはいるんじゃないかと思います。恐らくそのキャラクターは生きざまが格好良かったり、他の人が持たない特別な能力を持っていたりするのでしょう。あるいは単純に見た目が良いからという理由もあるかもしれません。かく言う私にも憧れのキャラクターが複数おります。特に2022年は映画やノベル形式のゲーム作品に触れる機会が多く、幾度となく魅力的なキャラクターに癖を捻じ曲げられたりしました。今回はその中でも特に私を限界化させた、シン・ウルトラマンに登場するメフィラスというキャラクターについて少し語りたいと思います。タイトルはそのうち回収します。
(以下シン・ウルトラマンのネタバレあり)
(最近アマプラに追加されたので加入している人は是非視聴してみてほしいです)

シン・ウルトラマンにおけるメフィラスというキャラクターは、ウルトラマンシリーズに登場する異星人(同作品では外星人と呼称)ということで、御多分に漏れず地球の征服を企んでいるのですが、他の異星人と決定的に異なっている部分があります。それは「暴力が苦手」という彼の性格です。彼は武力を行使して人類を屈服させるのではなく、地球文明の遥か先を行く先端科学技術でもって他の異星人の侵略から保護する、という名目で支配下に置こうとします。謀略を張り巡らせ事を運ぶ知的なキャラクターです。

個人的にシン・ウルトラマンは超が付くくらいの名作だし、これを読んでくれている人には自分の目で同作を観てほしいと考えているので、物語の核心に近い部分であるメフィラスの思惑や計画の全体像についてこれ以上語ることはしないのですが、まあなんやかんやあって彼はウルトラマンと交戦することになります。さて、先述の通り、彼は「暴力が苦手」で謀略系のキャラクターということで、やはりステゴロの戦闘はあまり得意ではないのかな?と推測できるわけですが、これが強いのなんのって、あのウルトラマンをどんどん追い詰めていくんです。近接格闘ではほぼ互角な上、彼の放つ「グリップビーム」はウルトラマンの「スペシウム光線」より明らかに出力が高い。この後に判明した並々ならぬ事情によりこの戦闘は決着が付かなかったのですが、あのまま純粋な暴力の応酬が続いていればおそらくウルトラマンは負けていたのではないかと思われます。そう、メフィラスのいう「暴力が苦手」とは決して「暴力を行使するのが不得意」ということではなく、単純に「暴力行為が嫌い」という意味だったのです。もちろん山本耕史氏の演技や、異星人としての本来の姿の禍々しい造形もこのキャラクターの魅力のうちの欠かせない部分なんですが、私個人的には「戦闘が嫌いなだけで実は滅茶苦茶強い」というキャラクター性に一番痺れさせられました。

ここからは愚痴のパートです

やりたくないし嫌いなことでも卒なくこなせる人ってやっぱりかっこいいですよね。だから憧れる。私なんて「苦手なこと」それ即ち「嫌いなこと・やりたくないこと」ですし、逆も然りで「得意なこと」それ即ち「好きなこと・やりたいこと」になってしまいます。これは偏に私の特技の少なさ、能力の低さによるものです。
ほとんど何にもできないからちょっとでも何かで上手くいったり、おだてられたりするとすぐ舞い上がり、それが自分を構成する大切な大切な要素になってしまう。これが本当に辛い。何が問題なんだと問われるかもしれませんが、私にとっては深刻な問題です。得意だ好きだと打ち込んでいくうちに、「打ち込んでいるそれそのもの」が好きなのか「それが得意な自分」が好きなのかだんだんわからなくなってくるのです、そしてそれは往々にして後者になる。気付けばそこまで興味を抱けなくなったことを惰性で続けている私がいる。それでも、自分を構成する大切な要素だからやめることはできず、ずるずると、、、

私は小学生のころ社会科という科目が心の底から大好きでした。きっと同級生にとってのナルトやワンピースが、私にとっての日本史や世界史だったんだろうというほどに熱中し、毎日のように「マンガで分かる歴史」を読んでは友達や先生にクイズを出したりして遊んでいました。しかし中学、高校と上がるにつれ、それは「純粋な興味の対象」から「偏差値を上げるための手段」あるいは「知的な雰囲気を纏うためのエンチャント」へと変化していきました。あれだけ好きで自分から色々調べていた日本史や世界史にも、勉強という形式でしか触れることがなくなったのです。勉強苦手なのにね。
そして惨めなことに、その期間で形成された「普通よりは少しだけ歴史や社会情勢に詳しい奴」というこの期に及んではもはや何の役にも立ちそうにない壊れかけのアイデンティティを今でも大事に抱えています。そんなわけで、自分とは違って学問への純粋な興味を失わず、修士や博士の道に進む人たち、あるいは学術の領域に疾きに見切りをつけ、専門的な技術を手に付けようと邁進する人達を見ると、眩しすぎて「自分の前半生一体なんだったんだ?」と自問するはめになります。アイデンティティクライシスです。

メフィラスは見るからに自信に溢れています。きっとこんなことに悩む必要もないでしょう。ハイスペックなんでしょうね。謀略も暴力もできるし話術は巧みで最先端の機器も軽々と操作できる。戦闘描写から察するにスポーツも万能でしょうし、たぶん料理とかも上手いんじゃないかな。メフィラス星にスポーツや料理といった概念が存在するのかはわかりませんが。
私が彼を推す理由は、フロイト先生に言わせてみれば代償行動なのでしょう。うんともすんともいかない自分の人生を、完璧超人の他人、あまつさえフィクション作品のキャラクターに託すという情けない逃げの一手だ










「じゃあお前、今日なにか努力と呼べるような努力を一つでもやったのか?」←あまずい消せ消せ

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