Fnaticに学ぶ「ロータス」の戦略
こんにちは、xela です。今回から以前使っていたブログではなく、noteに投稿していこうと思っております。よろしくお願いします。
先日、Valorant Masters Tokyo において熱戦を繰り広げ、Fnatic が LOCK//IN に続き 2 連覇という快挙を成し遂げましたね。前のブログを読んでくれた方や、私と関わりのある方には伝わってると思いますが、私は Fnatic の戦い方が大好きで、1番上手いと思って推しているチームです。なのでこの結果には非常に興奮しております。
そんな Fnatic なのですが、EMEA リージョンから Masters Tokyo まで 10回以上戦っているのにも関わらず、勝率が 100% のマップがあります。
そう、「ロータス」です。Fnatic のロータスは今大会でおそらくかなり注目を浴びたと思いますし、今後 Fnatic のロータスを真似しようとするチームも増えてくるんじゃないかと思います。
なので、今回は ロータスにおける Fnatic の基本戦略について、私なりに分析していこうと思います。前置きが長くなっても仕方がないので早速本題に入っていきましょう。
構成
まずは構成についてです。Fnatic がロータスで採用した構成は
になります。
今回はあくまで Fnatic にフォーカスした分析にするつもりなので、詳細な数字は省きますが、Masters Tokyo にて Fnatic 以外のチームで Astra を採用しているチームはいません。基本的には Omen を採用しており、T1のみHarborを採用しています。Fade 採用も他リージョンで考えるとそれなりに珍しいのですが、EMEAではそれほど珍しくはありません。
この構成をどのように運用していくかについては後ほど話していきますが、端的にこの構成の強みを挙げると、プラウラーや、回収モクによりエリアの確保を狙える回数が増やせることと、グレ系や吸い込みといった遅延スキルが多いことになります。要は「エリアの確保」と「エリアの維持」が強い構成になります。
攻めについて
まずは Fnatic の攻めについて話していきます。基本的に Fnatic は A メインか C メインを確保してからの展開を基本戦略にしています。具体例として今回の記事では決勝の 「vs Evil Geniuses 戦」を参考にしていきましょう。
Fnatic はこの試合で 12 ラウンド中 7 ラウンド、上の図のような形(多少の違いはある)を取りました。C メインコントロールを狙いつつ、A ガレキ付近への進行をわからなくする狙いの形です。この形の利点としては、A・B・C すべてのメインの情報が手に入ることです。そのため最終的にどこを攻めるべきかのプランが立てやすくなります。
さらに、相手視点ではどこかエリアを取りに行かなければ Fnatic がどこを攻めてくるのかわからないため不利な状況を強いられることになります。
そのため、相手がどこかしらのエリアを取りに来ることがFnatic側も予測できるのでその情報を取りつつ C メインコントロールを狙います。
さて、ここで活きてくるのが Fade になります。プラウラーは2回使うことができるため、相手が取ってきた(可能性のある)エリアを、自分たちのエリアを確保した後に取り返すことができます。こうすることで相手はどこを攻めてくるかわからなくなりますね。
このように Fnatic は C メイン、もしくは A メインをコントロールした後で、さらに逆サイドもコントロールしてからの展開をdefault プランにしていると考えられます。
ここで肝になるのが、Fnaticの最終的な攻め先です。この試合ではFnatic は最終 A 攻めを3回、C 攻めを3回、B 攻めを6回しています。これがFnaticの狙いだと私は考えています。順を追って解説して言います。
現在の「ロータス」の定石として、攻めも守りも「A メイン」を重要なポイントとして戦うチームが多いかと思います。これは「ヘイブン」と同じで、このエリアを取らないと防衛側視点、敵の侵入経路が増えてしまうためです。
しかし、逆に言えばこのエリアを防衛側がコントロールできれば1人でこのたくさんの侵入経路を見ることができます。そのため、このエリアをいかにコントロールするかが大事、といった定石が定番でした。そうすることで Retake のめんどくさいCサイト(めんどくさい理由は省略)に人数を割くことができるようになります。
つまり、「できれば Retake にしたくない C に人数を割くために A が重要だ」ということになりますね。だからこそ Fnatic は相手にとって重要なAメインとCメインのコントロールを狙っています。ここまではわかります。
では、どうしてせっかく「Aメイン」も「Cメイン」もコントロールできたのに、最終的に「めんどくさい Retake 」を押し付けれる C 攻めではなく B攻めなのか?について私なりの分析を話していきます。
最終B攻めの理由
この理由はいくつかあると思いますので、1つずつ話していきます。
① 時間の関係
まず1つ目の理由は「時間の関係」です。流れ的に「Cメイン→Aメイン→C攻め」のようにしてしまうとかなり時間がかかってしまいます。なので、設置を遅延されてしまうと相手に早めの Retake を許してしまったり、最悪設置ができない可能性があります。安定択を選ぶチームである Fnatic としては避けたい選択肢だと考えられますね。
②相手のエリアの取り返しの可能性
2つ目は「相手のエリアの取り返しの可能性」です。Cメインをコントロールした後にAメインをコントロールを狙いに行きますが、このタイミングで相手がCメインを取り返しに来る可能性が高いです。もちろん詰め待ちやラークを残してCメインの情報を取得できますが、defaultプランとして「C→A→C」を狙うのは安定してるとは言いづらいですね。
③Bの人数が少ないだろうから
おそらくこれが1番大きな理由だと思います。当然といえば当然ですが、Bサイトはただでさえ人数を少なくしてることが多いのに、これだけAとCに圧力をかけているのだからBサイトが必然的に1番安全に攻めれると予測できます。
④構成的に解除遅延が狙いやすいから
そして2番目に大きな理由がこれだと思います。Bサイトは比較的安全に設置しやすいサイトではありますが、普通は他サイトに比べて Retake がしやすいサイト(理由は省略)になります。ですが、Fnatic の構成にはたくさんの遅延スキルがあります。なのでサイト内やチョークポイントで、ある程度時間を稼ぎつつ人数を削れれば最終的に遅延して勝ちというパターンが狙いやすくなります。
⑤挟みやすいから
これは③と多少かぶるのですが、要は攻めやすいからですね。基本的にはAメイン・Bメイン・Cメインのすべて(相手が取り返した場合2つ)コントロールできてるので、Bを攻める際に挟みの形を作りやすくなります。なので設置の成功率が上がりますね。
⑥ラークを残しやすいから
Aメイン・Cメインの両方をコントロールできているので、A・Cどちら側からもラークが狙えます。さらに言えばラークを残していなくても相手にプレッシャーを与えることができます。
なので④と合わせて、「サイト内やチョークポイントで時間を稼ぎつつ削る→解除阻害スキル→ラーク」のように繋ぐことが狙えます。ラークせずにサイトカバーでも強いですし、ラークでも強いです。C側の回転ドアやBリンクが近いので、ラークをやめてすぐにカバーに切り替えることもできます。
以上6つが大まかな理由として挙げられるのではないかなと思います。
Cメインコントロールの効果
またCメインコントロールの話?と思う方もいるかと思いますが、ここからはまた別角度でのCメインコントロールの使い方の話をしていこうと思います。決勝の「vs EG 戦」において Fnatic が初動にCメインコントロールを行ったラウンドが、12 ラウンド中 7 ラウンドあったといいましたが、そのラウンドというのは具体的に、「1ラウンド目、2ラウンド目、3ラウンド目、4ラウンド目、6ラウンド目、8ラウンド目、9ラウンド目」になります。
ここからわかるように「早い段階で・連続的に」この戦い方を見せています。厳密に言えばほかのチームとの試合などでは1ラウンド目などは違う展開から入ることもあるのですが、それでもやはり早めにこの展開を見せます。ここから Fnatic の狙ってることが予想できます。それは「印象付け」になります。
敵にこのCメインコントロールからの展開を印象付けることによって、相手はこの動きに対して何かしら対策を打とうとしてきます。他のマップも含めて、Fnatic はその「相手の対策とタイミング」の予測が異常に上手いのです。以前私のブログの記事にも書きましたが、Fnatic は「印象付けによって相手の動きを誘導してる」といってもいい精度で相手の動きを予測しています。
実際この試合でも1~4ラウンド目まではCメインコントロールから入り、5ラウンド目でいきなりAメインコントロールからの展開に切り替えてます。さらに恐ろしいことに5ラウンド目で Evil Geniuses は Fnatic のCメインコントロールに対して、Cメイン3枚で対応しようとしたラウンドでした。
まるでゴースティングしてるかのような神回避ですね。
このように敵に「印象付け」をすることにより、敵の動きを予測しやすくなり、別のエリアへの展開が簡単(予測ができれば)になります。
さらに、普通であれば下の図のように Astra の回収モクを使った場合
「角に敵が渡った可能性がある」というプレッシャーを相手に与えられますが、この「印象付け」が成功してる場合防衛側視点「相手はCメインのコントロールを重視してるから奥に相手が大人数いるかも」というプレッシャーが心理的にかかりやすくなります
このように Fnatic のdefaultプランにはいろんな効果があると考えられます。他にも細かいところで言いたいことはたくさんあるのですが大雑把な部分はこんな感じです。
守りについて
続いては「ロータス」における Fnatic の守り方についての私なりの分析です。
Fnatic はこのように A メインをコントロールを狙う形をdefaultプランとしています。これ自体はかなりシンプルですね。Cサイトに注目してほしいのですが、Viper と Killjoy を配置しています。これは先ほど攻めの時にも説明したように C サイトの Retake がかなりめんどくさいからだと考えられます。なので C サイトは中で耐える動きを想定していますね。
ここからの展開として、Aメインに敵が来た場合は3人でカバーを取り合って戦うことが想像できると思いますが、そうではなく相手がゆっくり展開してきた場合の Fnatic の動きを分析していきます。
このように A を Raze 1枚の配置にすることができます。そして意外なのがBサイトをAstra と Fade の2枚配置にすることでしょう。上図にも文字を入力しておりますが、この配置によってできる動きをそれぞれ話していきます。
A攻め
もし相手がAを攻めてきた場合、
このようにBサイトからすぐにカバーを寄せることができます。BサイトはAに近い上にスクリーンもグレもあるので、Astra と Fade がカバーに行くまでの耐久は容易だと言えます。さらにBの入り口を見ているスキルがアラームボットではなくタレットなので、Bメインの入り口を見なくていいためBリンクからのカバーがしやすくなります。
B攻め
もし相手がBを攻めてきた場合、
Aの Raze と C のKilljoy がすぐにカバーに入れます。そのため実質4人体制でBを守ることができます。また普通であれば、A1・B2・C2の配置は予測しづらいため、相手がAサイトからBを挟みに来るためにはそれなりにリソースを割かなくてはなりません。なので、Aガレキ周りを1人ラークしていたとしても、カーテンを抜けてBリンク側からカバーに行くとは考えにくいです。行けたとしても Fnatic がサイト中を制圧し終わったタイミングが想定されます。(攻め側視点 Viper の位置が見えてないため、A に Viper が残っている可能性が捨てれないため)
C攻め
もし相手がCに攻めてきた場合、
B サイトにいる Astra と Fade がすぐにカバーに行くことができます。ただでさえ Viper と Killjoy という鉄壁の布陣なのに、カバーにすぐ行けるのでそう簡単にCサイトは取れないでしょう。さらにセットアップ的にサイト中の敵は足止めされる可能性が高く、そのタイミングで回転ドアから Astra と Fade が挟みに行けばかなり有利に撃ち合いができます。
このように最初にAメインのコントロールさえできてしまえば、どのサイトに来てもすぐにカバーがいける配置を取ることができます。
マップの2分
今回の記事では基本的には Fnatic の大まかな動きについての分析をテーマに書いてきました。なので細かい部分やセットなどは基本的に触れてこなかったのですが、1つだけもう Twitter に画像が載っちゃってある程度反響があったみたいなので、ここで改めて自分の考えと合わせて紹介しようと思います。
ざっくりいうと守り側の Fnatic が見せたこのカーテンが「何これ」的な感じで反響があったみたいです。これは私の記憶が正しければ FnaticはEMEAリージョンでは使ってなかった(間違ってたらごめんなさい)と思います。Masters Tokyo の PRX 戦で初めて見せて(多少スキルの入れ方が違う)、EG 戦で注目を浴びたと認識しています。
このカーテンの目的を私なりにざっくり分析すると、マップをこのカーテンの左側と右側で2分することだと考えています。こうすることでB前の攻め側のタレットを簡単に壊すことができますし、カーテンの左側に対してかなり圧力をかけることで、相手に Killjoy と Raze の守るA側を攻めるように誘導することが Fnatic の狙いだと思います。相手のタレットを壊せるため、相手がそのままAを攻めてきた場合裏取りも楽になりますし、Killjoy と Raze がAを守っているためサイト中の遅延がかなり狙えます。そのためもちろんそのまま表からのカバーも間に合います。
さらに相手がBリンクからBを狙ってきたとしてもこのカーテンで妨害ができます。
さらに、もしこの吸い込みやスタンに合わせて、グレを入れたり人数をかけてpushしたりすれば、相手に対してかなり嫌な印象をつけることができます。Fnatic はまだ、この使い方を見せていませんが、こうすることで今後のラウンドで相手のCメインコントロールをドライなどで簡単に済ませることを防ぐ効果が期待できます。
最後に
いかがでしたでしょうか。今回は「ロータス」における Fnatic の戦い方について分析していきました。もちろんこれはあくまでdefaultプランですので、細かいところや別のプラン、別の配置、相手の動きに対する対策や対応プランもたくさんあります。中にはかなり面白いものもあるのですが、それらについては今後気が向いたら記事にまとめようかなと思ってます。
ここまでの内容を見ると「なんだ、それだけ?」と思う方もいると思います。Valorant という競技において複雑なセットや超人的な個人技に目が行きやすいですが、Fnatic の強さの本質はそこではないと私は思っています。
Fnatic は基本的なことを完璧に近い精度でこなしているチームです。要は教科書のようなチームなのです。スキルの入れ方や戦い方、サイト中での耐久の仕方やスキルのセットアップまで、そのほとんどが「チームであらかじめ決めていた動き」なのです。Fnatic は少人数戦以外の部分で「個」を出すことはほぼありません。だからこそ1番 valorant が上手い「チーム」なのです。「ほぼ」という言い方をしたのにはちゃんと理由がありますがこれはまた別の機会にお話しようと思います。
ここまで、思い付きで原稿も作らず淡々と書いたような駄文を長々と読んでいただきありがとうございました。ここまでのまとめなどを書こうと思いましたが疲れたのでめちゃくちゃ短く一言でいうと「基礎が一番大事」です。
また、ここまで Fnatic の戦い方についての分析を書いていきましたが、Boaster 選手に聞いたわけでも mini コーチに聞いたわけでもないので、「実は全部間違ってて、私の妄想でした☆」ってこともあるので、重ね重ね申し上げますがあくまでも「私なりの分析」でございます。
改めましてありがとうございました。
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