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かずさ
2020年6月4日 22:04
その光景を、忘れることができずにいる。 淡い青色に染まった紫陽花の向こうで揺れる、白いワンピース。 薄曇りの空を割って幾筋も降り注ぐ、あたたかな光。 緩く手を繋いだふたりを包む、穏やかな空気。 振り向いたその人の、はにかんだ笑顔を。 忘れることができずにいる。「今年も、咲いたね」 縁側で庭を眺める父にそう言って、湯呑みとお茶菓子を載せたお盆を隣へ置いた。 そうだな、と呟いた父