大企業からスタートアップ企業へ転職する前に読んでおきたい、ここだけの話
先行きが不透明なこんな時代だからこそ?!
『ここは一発、スタートアップ企業とやらに転職して人生の勝負に出るぜ!』
でも、その前に
ーそもそもスタートアップに入るってどういうこと?
ー大企業と何がどう違うの?
ーストックオプション?IPO?なんだか分かるようで分からない。
そんな方向けに、妻子持ちのわたくしが”40代で、大企業(ベネッセコーポレーション)からスタートアップへ転職した”経験を元に、10年以上のキャリアを持つ現役人事担当者がフィクション風に綴ってみました。
パートナーが「これからはスタートアップの時代だ!とにかく転職する!」と言っていて、どうしたものか、と思っている方にもオススメです。
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ストックオプション(SO)で一攫千金?
えくしびくん(以下「え」)「よ~し、スタートアップに転職して一攫千金を狙うぞ~」
わいこば先生(以下「わ」)「ちょっとちょっと、えくしびくん、突然どうしたの?」
え「いやあ、なんか最近、『○○億円調達しました!』とか、『最年少社長が上場しました!』とか、そういうニュースを見ると、もしかして自分もスタートアップに入ったら大金が手に入るのかな!?って思って」
わ「なるほどねぇ、でもどうやって一攫千金を狙うか知ってるの?」
え「ふっふっふっ、知ってますよ、ストックオプションがもらえるっていうんですよ。ス・ト・ッ・ク・オ・プ・シ・ョ・ン」
わ「いわゆるSOね。それで、どうしてストックオプション(以下SO)をもらえると大金になるのか知ってるの?」
え「ええと・・・とにかく、お金に変えられるんでしょ?!」
そもそもSOってなんなの?
わ「まず基本的なところから。SOというのは新株予約権というんだけど、細かいとこを端折ると、安く買ったものを高く売れる権利のようなものなんだ」
え「え、でも、買ったあとでそれより安くなったら損するんじゃないの?」
わ「そう、だから、高くなったときにだけ株を買うことができる予約券を買える権利なんだ」
え「???・・・よくわかんないです!!」
わ「わかりやすく、例えばの話をするね。ある社長が資本金100円で起業して100株発行したとする。この場合の株はSOではなくて、生株(なまかぶ)って呼んだりするよ。社長さえよければこれを他の役員や従業員が1株1円で買うこともできるんだけど・・・」
生株はSOとは違う
え「えー、そしたら生株欲しい!」
わ「でも、もし、その会社の時価総額が1億円とかになってたら、10%の生株を買うには1,000万円が必要なんだけど、えくしびくんは用意できる?ややこしいことに、そのためのお金を社長から借りたり、分割払いとかはできないようになってるんだけど」
え「そんなお金、持ってません」
わ「そうだよね。しかも、生株は持っている株の比率で経営に関する権利も変わったり、色々難しいルールがあるので、ここではSOの話にしぼると、さっき、時価総額っていう単語が出てきたと思うけど」
え「見たことある!時価総額1兆円超えか!?とかそういうのでしょ?」
わ「そうだね、わかりやすく言えば、その会社の価値のことなんだけど、IPO(上場)前後、つまり、上場前と、上場後で扱いは変わるんだけど、この時価総額がSOに大いに影響があるんだ」
え「IPOもキーワードはよく見かけるんだけど、よくわかんないでーす」
SOより大事な時価総額
わ「さっき、例として100円の資本金で会社を創業したと思うのだけど、この時点では時価総額は100円です。でも、どこかの誰か、、、そうだね、よくあるのはベンチャーキャピタル(以下VC)が目をつけてきて、”Youの会社はもっと価値があるよ!イッちゃいなよ!お金なら出すよ!”って話になって仮に、1,000円って評価されたとすると、この1,000円が時価総額になる。なんと10倍!」
え「なんか、簡単に上がるんですね。」
わ「もちろんそんな簡単な話じゃないんだけど、詳細は端折るとして、株の総数は変わっていないので、100株で1,000円ということになる。1株の価値が10倍の10円ということね。そしてここで株を20株、VCに渡すと200円の価値になるので、20%の株を渡して200円をもらう。これで調達額が200円ってことになる。
この場合、自社株比率が80%で、プレバリューが800円、ポストバリューが1000円となって、プレ800円、ポスト1000円って言ったりする」
え「最初、自分からは100円しか出してないのに、200円もらえるんですね!」
わ「もちろん、出資してもらうためには事業計画を何度もプレゼンして、こいつの会社はでかくなるかも・・・って思ってもらうのはそう簡単なことじゃないよ。
会社を作る(登記する)にも、30万円くらいかかるしね」
え「それでも、お金が湧いてきたように見えるな~」
わ「厳密には株の20%を渡してるのでタダでもらったわけじゃないんだけどね。でもって、最初は社長が100%持っていた株が80%に薄まるので、これを株の希薄化(ダイリューション)って言ったりするよ」
希薄化(ダイリューション)
え「希薄化が進むとどうなるの?」
わ「一般的にはさっきの自社株(社長+取締役や従業員といった社内で持ってる株)比率、つまり経営陣がコントロールできる株の比率が何%かが大事で、そこよりも社外のVCとかが持っている比率が高くなりすぎると、最悪、会社の経営権を取られたり社長を交代させたりすることができるので、一般的には、株式全体の1/3以上、もしくは1/2以上を社内で持っておくことが多いんだけど、経営者の考え方によってケースバイケースかな。」
え「面接とかで、いま、どれくらい社内で株を抑えてるか、聞いたりできるの?」
わ「中々そこまで突っ込んだ話を採用面接で聞くことは少ないかもしれないけど、重要なポジションで入るのであれば教えてくれることもあるかもしれないね。
ちなみに、この最初に資金調達するのを、エンジェルラウンドとか、シードラウンドとかいったりする」
え「あ、シードAラウンドとかシードBラウンドで○億円調達とか見たことある!」
わ「そうそう。厳密に、何回目のラウンドはいくらです、て決まってるわけではないんだけど、目安はあるのね。
あとは、いついくら調達したかで、おおよその時価総額は推測できるんだよね。当然、どれくらい希薄化(放出)したかによるんだけど」
え「それで・・・SOの話は・・・」
キャピタルゲインで大儲け?
わ「そうだった。つまり、SOは時価総額が100円のときにその1%が買える権利をもらったなら、その権利を使うことを(権利を)行使するっていって、1円で1%の株が手に入るんだよね」
え「それを売っても意味ないですよね?」
わ「そう。厳密には税金とか手数料がかかるのでむしろ損しちゃう。
※SOにも色々種類がありますが、多くは税制適格の無償SOですが、税制非適格の場合、行使時にさらに多く税金がかかるため、発行時には専門的知識が必要です。ここでは詳しく触れません。
え「SOは、さっきの100株とは違うの?」
わ「うん、それとは別に追加で発行できる権利なので、例えばSO発行は10%までというルールになっている場合は、10株発行できて、それを役員や従業員に渡す感じ」
え「その10%の枠を超えたらどうなるの?」
わ「それ以上は渡せないのであまり初期の段階からバンバン付与できないんだけど、起業したての頃は今後についても不安定なので低い給与でジョインしてもらう代わりに多めのSOを渡すこともある」
え「まだ、SOで大儲けのカラクリがわかんないです」
わ「まあまあ落ち着いて。SOを1%もらってから、その後、業績も順調に推移して、時価総額が1,000円になった時に行使したとしたら、100株のうちの1%分の株が1円で手に入るので、それをすぐに売れば1,000円の1%だから10円が手に入る。同じ要領で、もし時価総額が1万円になっているときに行使して売れば、100円が手に入る計算だね。この手に入るお金をキャピタルゲインっていったりする」
え「・・・大して嬉しくないような・・・」
わ「そうだね。でも、もしこれが1%のSO付与時が10億円で、その後、時価総額が100倍の1,000億円になったときに行使して売ったら手に入るキャピタルゲインは?」
え「ええと・・・じゅ、じゅ、10億円!」
わ「そういうこと。だから、SOをもらうときにはできるだけ時価総額が低い時にもらうときがポイントで、そこから時価総額があがればあがるほど、お金がたくさん手に入るということになるね。
でも実際に時価総額1,000億円の企業のSOを10億円の頃に1%付与されるというケースはかなり少なくて、持ってるSOの平均は0.36%というデータもあるみたい」
ストックオプションとスタートアップ その実態に迫る。 | STARTUP DB MEDIA | 日々進化する、成長産業領域に特化した情報プラットフォーム :
上場(IPO)するときの時価総額
え「でも、大体、上場するときの時価総額ってどれくらいなんですか?」
わ「一概にはなんとも言えないけど、数10億円というケースが多いかな。
あんまり金額が小さいと、経営も不安定かもしれないし、上場目的の1つの”もっと大きい資金調達して成長”することが難しいとなると、まだ上場しない選択肢もある。
だから、100億円を超えたらすごいし、いきなり1000億円超えることは中々ない。ちなみに上場企業は3700社で、1,000億円を超えてるのが700社くらいみたい。
2016年のLINEの上場時には1兆円を超える?といわれたりもしたね(2020年6月は1.2兆円!)」
え「ちなみに、いわゆる”株式会社”ってどれくらいあるの?」
わ「200万社くらいあるみたいだね」
日本の各都道府県の株式会社数と上場会社数 | 上場企業サーチ :
え「そ、そんなにあるんですか!?でも、、、200万社のうちの3700社ということは・・・。0.18%、、、1000社のうちの2社しか上場できないってことかあ・・・」
わ「上場というのは株式市場に上がるので上場っていうのね。上場前に株のやりとりはあまり自由にできないんだけど、上場することで証券取引所で自由に株を売買できるようになるので、人気さえ出ればどんどん株が売れて、どんどん時価総額もあがるんだけど、もちろんそんな美味しい話ばかりじゃない」
え「どんどん、下がることもある」
わ「そういうこと。いずれにしても、上場して初めてSOが行使できるようになるので、スタートアップならまずは上場を目指すわけ」
時価総額上位:株式ランキング - Yahoo!ファイナンス :
え「証券取引所、、、東証一部とかそういうの?」
わ「そう。東京証券取引所市場第一部は国内で一番上のところなんだけど、色々ある市場の中で、スタートアップのほとんどはマザーズという証券取引所への上場を目指すよ
2000年にあのサイバーエージェントもマザーズに上場したんだ(その後、2014年に東証一部に市場変更)」
どうしたら上場できる?
え「とにかくSOを手に入れて、自分の会社が上場すればいいんですね!」
わ「もちろん簡単なことじゃないけどね(苦笑)。だから、従業員のモチベーションアップのためにSOを付与するケースも多いね」
え「そういえば、入社の報酬オファーのときに、1.年収、か、2.それよりも低い年収+SO、を選択をさせるケースもあるって聞いたんですが」
わ「会社によってはそういうところもあるかもしれないけど、上場しなければSOはただの紙切れなので、選んで生活が苦しくなるくらいだったら、年収(現金)を取る手もある」
え「そもそもどうなったら上場なんですか?」
わ「上場するためには、監査というステップが必要で最低2年かかるよ」
え「さ、最低、2年も!?」
わ「うん。会社が上場企業として問題ないかを2年間チェックして、クリアできたら初めて、上場申請ができるようになるんだけど、途中でなにか問題が見つかったら申請が延期になったり、最悪、上場をあきらめるケースも」
え「2020年はコロナの影響で取りやめた会社が激増したんですね・・・」
わ「こればっかりは運もあるので、なんとも言えないんだけど」
上場までのスケジュール
わ「資金を調達しているスタートアップは、大体何年後に上場を目指しているかという計画があるはずなので、それなりの会社規模になってきていたら、面接でも聞けるかも。
上場申請をする期、つまりその年のことを基準の申請期(N期)として、直前期(N-1期)、直前々期(N-2期)と呼んだりするよ。
成長中の企業であれば、今、どの期なのかによって、時価総額がどれくらいなのか?、SOをどれくらいもらえるか(付与してもらえるか)?が変わってくるのね」
え「わかりました!面接の最初に、”今、Nマイナス何期ですか?!”って聞いてみます!」
わ「それは、極端すぎると思うよ(笑)」
え「え~、じゃあどうしたらいいんですか?」
わ「そうだねえ、、、やっぱりまずは上場を目指しているか?目指しているのであれば、前年と今年の売上、と来年の予測、そして、上場のために必須の監査法人や証券会社が決まっているのか?あたりによって、いつくらいに上場を考えているか、想像できるかも」
え「もちろん、計画通りに上場できるとも限らない」
わ「そうだね。どれだけ準備をしていても何が起こるかわからないし、例えば申請までしたのにその後、社長がおねえちゃんとスキャンダルで中止とかもあるので、証券取引所の鐘を鳴らすまでは気が抜けないというわけ」
え「他に、SOについて知っておいたほうが良いことはありますか?」
わ「さらに細かい話になっちゃうけど、SOをもらうときの契約書に、”もらってから2年は行使できない”とか、”上場後、1年に25%ずつしか行使できない”とか、色々条件(べスティング)があるけど、それはまた、もらえたときに考えたらいいかな・・・。
もし、興味が出て勉強するなら、こちらの本がオススメだよ」
どうやって上場できるスタートアップかどうかを見極めるか
え「大体、わかりました。まずはSOをもらえるか。入社時にもらえなくても、その後、付与してもらえそうか。そして上場できそうか。それにはどれくらいかかりそうか、ということですね」
わ「SOの話ばかりしてしまったけど、会社が順調に成長して、きちんと活躍して評価されれば、給与の上昇も見込めるので、順調に上場に向かっているかどうかが大事だね。
もちろん、自分が働きたいと思える会社であることが大前提にはなるんだけど」
え「でも、まだ入社したいかどうか分からないうちに、上場できそうかどうかなんてわかんないですよ」
わ「最近は、売上目標やSOについて書かれた会社概要のスライドを公開しているような会社もあるので、探してみると色々勉強になるよ」
それで結局のところスタートアップへ転職するの?
え「うーん、手っ取り早く大金持ちになるのは難しいことがよーくわかりました・・・」
わ「うん、上場までの道のりはとても険しいし、キャピタルゲインだけをモチベーションに毎日がんばるのもそれはそれでしんどい。
あの最短での大型上場と言われたメルカリも上場に5年以上かかってるからね。
だから、経営層が信頼できるか、事業内容を愛せるか、ビジョンに共感できるか、ピンチのときにも耐えられるか。そういう目で会社を探すことかな」
え「でも、、、入社する前の転職活動中にそこまで詳しく見極めるのは難しいですよね?」
わ「もちろん。入社後だって市場環境が大きく変わるかもしれないし、経営陣が総入れ替えになることもある。
博打の世界と言ってしまえばそのとおりなんだけど、、、上場は視野に入れつつも、あくまでスタートアップという環境でしかできない経験を積むことや、スキルアップ自体をゴールにおいて、SOやキャピタルゲインがもらえたらラッキーくらいがちょうど良いのかもね」
え「とりあえず転職するなら、最低年収●●円で、肩書はCxOで・・・」
わ「転職する年齢にもよるけど、大企業のそれなりのポジションから転職する場合は、年収は下がるケースがほとんどで、いきなり肩書がもらえることも少ないよ。入社して実績をあげてはじめて、評価されるというのがほとんどかな」
え「そっかあ、、、うまい話ばかりじゃないんですね」
わ「しかも社長や役員は、自分より年下みたいなケースも多いしね。それでも挑戦してみる?」
え「わかりました!でも、せっかくスタートアップに転職するなら、どこがオススメの企業ですか?教えて下さい、わいこば先生!」
わ「ん~、じゃあ、ここから先は本当に読みたい人だけに、ここだけの情報を教えましょう」
ここから、私が30名規模のスタートアップに在職(2015年~2020年)し、執行役員事業統括や資金調達を行った経験から、スタートアップに転職を検討している人向けに具体的なノウハウを書いたものになります。
あくまで1つの個人的意見となりますので、ご容赦願います。
<目次>
1.まずは外から会社の情報をチェック
2.気になる会社へのアプローチ手段
3.本選考へエントリーはリファラルが理想
4.選考~面接~オファー~入社
おわりに
1.まずは外から会社の情報をチェック
いわゆる会社概要(アウトライン)としてこちらの6項目、
・設立日
・従業員数
・資本金(資本準備金含む)
・社長のプロフィール
・株主構成(主にVC)
・事業内容
からチェックしてみます。
設立日
いわゆる会社が創業した日です。
いつ設立したか、よりも設立からどれくらい経過してどうなっているか、がポイントです。
もちろん、設立日から短く、より成長している企業が魅力的でしょう。
すでに資金調達をしている場合、一般的に調達から10年以内には上場(IPO)、もしくは売却(M&A)といった、イグジット(EXIT)を株主(VC)から求められるので、設立日から10年以上経過している未上場のスタートアップに行く場合は上場やSO付与は期待しづらいかもしれないません(そういう状態をゾンビと呼ばれたりします。潰れずにただ生きながらえているリビングデッド)。逆にできたばかりなのに資本金が多い場合は、どうやって調達したのか、調べてみましょう。
従業員数
創業時には大きく2パターンあり、「社長が代表取締役CEOとして単独で起業」する場合と、「知人と共同代表として複数のメンバーでスタート」する場合があります。
それぞれのメリット・デメリットについてはこちらの本がオススメです。
従業員数が10人なら、どうやって集まった10人なのか?CEOの前職からのつながり(リファラル)なのか、社員からのつながり採用なのか?年齢構成は?職種構成などを、コーポレートサイトや、Wantedlyやコーポレートサイト、noteなどの社員紹介から把握するのがポイントです。
当然、ジョインするときの人数が少ない方が仕事の幅も広く、裁量権とやり甲斐は大きい分、仕事はハードになります。
一例ですが10人以下の会社にコーポレート(管理)部門として入社した時は、経験してようがいまいが、人事(採用・労務・給与)、総務、広報、法務、経理、株主対応、など、一人でなんでも対応しなければいけません。
あとは、人数は変わっていないのに極端に離職率が高い(人が大勢入れ替わっている)場合も要注意です。
資本金
スタートアップにおいては調達した資金=手持ちのお金であることが多いので、会社の運転資金となります。つまり寿命です。
資本金を節税のために減資していることもありますので、過去の資金調達のプレスリリース(PR TIMESなど)を探して、そこで調達した金額とその時期から、あとどれくらいのキャッシュを持っているか、がポイントです。
スタートアップは最初の3年くらいはこの資金を使って、毎月赤字でも事業拡大に先行投資しますので、「今はまだ赤字か?」「黒字化いつしそうか?」「その理由は?」を想定しましょう。
例えば、毎月経費に2,000万円使っていて、売上が1,000万の場合、マイナス1,000万円ですから(バーンレートといいます)、1億円調達していてもこのままだと10ヶ月後で資金ショートになりますから、この残りの期間、10ヶ月以内に経費を減らすか、売上を伸ばすか、また次の資金調達をするか、生き延びるためにはいずれかが必要になります(この10ヶ月をランウェイ=滑走路といいます。飛び立てないというよりは、墜落するイメージですが。)
ここまで詳しい情報が公開されているケースはほとんどないので、気になるところがあれば入社後に知らなかった、、、とならないように、面接などで直接聞いてみましょう。
社長のプロフィール
すでに年商が数億円となっていて順調に成長しており社員数も50名以上のような場合にはそこまで社長プロフィールに神経質になる必要はないかもしれませんが、事業が軌道に乗るまでは社長による影響力はかなり大きいです。
どういった性格・キャラクターなのか、学生起業家なのか、もしくは過去にどんな企業での経験があるのか、得意なのは営業なのか開発なのか、等など。例えばCチャンネルの森川さんでならLINE、メルカリの山田さんなら、ウノウで、どのようなことをされていたか、どのような人脈やアセットがあるか、というところですね。
他にも、CEOと、役員陣(取締役、CxO)とはどういう関係性なのか、大学が同じであれば古い知り合いなのか、理系大学つながりであれば技術力を推してるのか、どうやってジョインしたのか?などから、つながりの強さを見たり、CEOが開発が得意なら、COOが営業が得意といった、能力から役割分担について見ます。
あとは、起業したエピソードや資金調達したときの想いなどが、プレスリリースやブログ、noteなどにあがっている場合が多いので、事前に検索して読んでみましょう。あわせてtwitterなどのSNSもチェックしておけると、いざ、面接を受けるときに「こんな記事、読みました」とアピールできると強いです。
すでに起業経験や会社の売却経験があるといった場合は、成功確率があがる可能性もありますが、シリアルアントレプレナーのように、IPOを目指さずに売却自体がゴールになる可能性もあるので、一概にはなんとも言えません。
株主構成
株主としては、いくつか種類があります。
・銀行系VC
・事業会社
・CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)
・独立系VC
・個人投資家(エンジェル)
詳細の説明は割愛しますが、今、入ろうと思ってるスタートアップと同じ業界で伸びているスタートアップと同じ株主が入っているかどうかが1つポイントになります。
例えば、HRtech企業向けのファンドを組成している名のあるところからHRtech企業として出資を受けているような場合は、プラス評価と見て良いでしょう。
細かく見ていくと、銀行系VCが多いと事業が堅いとか、SaaS系に投資を積極的な独立系VCが入っていると有望SaaS企業であるとかもありますが、名前だけではそれぞれいくらずつ出資しているかまではわからないので、単にたくさん投資家が入っていればよいということではなく、あくまで1参考情報として。
事業内容
なんといっても、ここが一番大事です。
自分が興味を持てないビジネスやサービスでは仕事に身が入りません。IPOまで数年は関わるわけですから、心の底からやりたいと思える仕事はなにか考える必要があります。
スタートアップの場合は、大手企業への転職のように”業界や事業は二の次”で、単に「カスタマーサクセスをやりたい」とか「経理財務をやりたい」とか「UI/UXデザインをやりたい」等、職種を理由で転職することは稀で、まずはじめに”ビジョン共感”を重視します。
入りたいと思った動機が、別の会社でも実現できるものではないか?面接で問われることは多いです。
次に、慈善事業ではないので”今、参入している市場が伸びているかどうか?”を見ます。ビジョンもポジションもマッチしていても、すでに頭打ちだったり、これからシュリンクしていく市場では厳しいです(そうなる前にピボットするとは思いますが、間に合わずにそのまま倒産するケースもあります)
1100万ダウンロードの写真SNS「Snapeee」運営元が倒産 「ギリギリまで試行錯誤」も事業化できずサービス終了 - ITmedia NEWS :
例えば、2020年であれば、AIや、IoT、SaaSや、オンラインサービス市場が伸びている傾向がありますが、例えば、AIといっても、自社で開発した技術を持っているのか?SaaSであれば、よく聞けばただのサブスクリプションモデルだったりしないか?など、ここは時間が許す限り深掘りましょう。
これらの会社分析をできた上で面接で合格するには、改めて「どうして強い興味関心を持てたか?(ビジョン共感)」、そして事業を伸ばしていくのに「自分がどう役に立てるのか?(スキルセット、ポテンシャル)」、そして、「会社のカルチャー(雰囲気)とマッチするか?」
この3点について会社側の要望とすり合わせができるかどうかに合否がかかってきます。
人事がどのような採用面接をしているかは、こちらの本が参考になりました。
2.気になる会社へのアプローチ手段
会社の見方がわかったところで、より詳しい情報を手に入れるためのおすすめの方法は3つです。
- すでにスタートアップで働いている知人からヒアリングする
身近にスタートアップに転職している人がいて仲が良ければ、職場や社内について聞いてみましょう。特に大手企業だったり転職経験が少ない場合には想像以上に違う環境であるため、情報は大いに越したことはありません。
特に裁量(ポジション)と報酬については、大企業とまるで異なる場合がありますので、よくよく確認したいところです。入社後に気づいてすぐにまた転職というケースも多いようです。
- スタートアップに特化した人材紹介に登録して企業について教えてもらう
中々、そんな知人はいないというような場合には人材紹介のエージェントを利用してみましょう。いわゆるリクルートやパーソルキャリアのような大手でもスタートアップの情報は無くはないのですが、スタートアップ特化型した紹介会社や個人エージェントの方がよりリアルな情報を持っています。
ベンチャー転職求人/スタートアップ転職求人の専門エージェント | キープレイヤーズ :
上記の2社はどちらも利用したことがありますが、信頼の置けるエージェントです。
- Wantedlyや、peatix、compassなどでミートアップイベントに行く
3つ目な、(今はリアルイベントは自粛中ですが)、スタートアップの多くは様々なイベントを開催しています。いきなり「転職したい!エントリーだ!」は、ちょっとハードルが高い場合には、事業内容も知れて社長や社員にも会えるので、オススメのアプローチ方法です。
イベントの種類は大きく分けて4つ。
ー 採用目的イベント(リファラル採用狙い。採用広報)
ー 営業目的イベント(見込み顧客、リード獲得狙い)
ー スキルアップ勉強会(主にエンジニア、テック向け)
ー 単純に交流目的(オフィスお披露目など)
好きなものに参加するのがよいですが、採用目的のものが、会社についてより深く知れるので探してみましょう。
3.本選考へエントリーはリファラルが理想
いよいよ転職の意思が固まったら、選考へ!
さて、どういった選択肢があるのでしょうか。一般的な企業への転職とはちょっと異なります。
2.気になる会社へアプローチの流れからエントリーしていく方法が多いのですが、改めて整理してみます。
・コーポレートサイトから自主的に応募
スタートアップの企業サイトにある「Recruit」「中途採用」「仲間募集」といったページから応募する方法です。
すでに会社の情報収集が万全で、採用ページにエントリーフォームが完備されているようであればここからで良いのですが、例えば、すでに締め切った職種が募集されていたり、経歴情報がうまく伝わらないなどもあるため、他の方法を検討した上で、「やはり自主応募がベスト」であれば利用しましょう。
・Wantedlyやビズリーチ、Green、キャリアトレックなどのサイトでスカウトを受ける(もしくは自分から応募)
スカウトを受けての転職は最近かなり増えてきており、ビズリーチのCMを見たことがある人も多いのではないでしょうか。スタートアップにおいてもかなりメジャーな採用方法です。
スカウトを受けるためには最初はレジュメの登録が面倒かもしれませんが、まずは各サービスに登録しましょう。そして、その上でスタートアップの人事からみてスカウトしたくなるような経歴情報の入力がポイントです。
スタートアップはとにかく想定外のことが起きますので、過去にそういう事態に対処してきたことがある、0⇒1の立ち上げをしたことがある、これまでのキャリアのここが活かせる、といったことを書いて置くと良いでしょう。
また、SNS上で強い理由がなければアイコンは履歴書用写真である必要はありませんが、笑顔の自分の顔写真に設定しておくのが無難です。
当然、内容は定期的にアップデートをかけましょう。
・人材紹介会社のエージェント経由で応募
特に創業間もないスタートアップでは知名度も低く、数ある会社の中に埋もれてしまうため、短期間でピンポイントで欲しい人材を採用するために人材紹介会社を利用します。
いくつかのエージェントとやりとりしていくとわかりますが、そこはやはり人。レベルもピンキリですので、ぜひ、複数登録してみて自分の悩み相談に親身になってくれるところを見つけましょう。良いエージェントであれば、無理な転職や気が進まない求人への応募などを迫ってこないはずです。少しでも気になることがあれば、遠慮せずに、色々聞いてみましょう。
その一方で、スタートアップ(に限りませんが)が人材紹介に支払う手数料の相場は年収の35%のため、採用費用が負担になるスタートアップでは予算の問題から人材紹介会社を利用していない場合もあります(表向きにはそういう理由は出しませんが)。
別の理由ですが、昨年LINEがリファラル採用を強化のニュースが出ましたが、裏では人材紹介の理由を辞めたのでは、という噂もあります。
これら場合は、他のチャネルを探してエントリーするのがよいでしょう。
・リファラル採用を利用して応募
リファラル採用とは、入りたい会社の中で既に働いている社員の紹介で入社する手法として、近年注目されています。以前は、「縁故採用」「コネ採用」と敬遠されておりましたが、今は有効的な応募方法の1つになり、ネガティブなイメージはなくなりました。
海外のIT大手(Google、Facebook、Microsoft、Appleなど)では、主な採用手法として用いられており、国内でもその利用比率は高まってきています。
特にスタートアップへの転職方法としてリファラルは注目度が高いのですが、求職者側からするとそもそも入りたい会社の社員に知人がいないと使えません。そういうときにはまずは前述のイベントに参加して社員と仲良くなり、そこでFacebookなどのSNSでつながることで共通の知人などが見つかりましたら、そこから関係性を作っていきます。
時間はかかるので急いで転職したい場合には不向きですが、入社前にどういう会社かわかった上で入るべきかを判断できるので、有効です(私自身、初めてのスタートアップ転職はリファラルでした)
また、採用人事の方でもSNSでの関係性やつながりからどんな人かをチェックしています(これをリファレンスチェックといいます)
大企業の転職では調べないようなこともチェックされる場合があり、そのためのチェックサービスも最近はありますので、SNS上での投稿や友人情報は注意が必要です。
SNSをやっていなければ問題ありませんが、それはそれでITリテラシーを不安視されるかもしれません。
番外編
エンジニアやデザイナーであれば、最近増えている副業プラットフォームなどを活用して、まずは業務委託として勤務して、その上でマッチしたら転職するという方法も増えてます。
こちらはすでに副業の経験がある方向けの上級編といえるでしょう。
4.選考~面接~オファー~入社
エントリー後は、各社によって様々な違いがありますのでここでは多くは触れませんが、いきなり社長との雑談が面接だったり、オフィスに会議室がなくて外にあるカフェで面接になったりもします。
1つポイントとしては、一発目が「会社見学」とか「カジュアル面談です(選考なし)」ということも多いのですが、実際は裏で選考しているケースがありますので、良い評価をしてもらいたい場合には、そのつもりで準備していきましょう。
一般企業の面接とは異なることも多いですが、「型や過去の実績にとらわれずに、今できることを精一杯やる」というスタートアップスタイルは、すでにここから始まっています。
最初は戸惑うこともあるかもしれませんが、あまり難しく考えすぎずに、会社や社長のこと知れたらいいな、くらいの軽い気持ちで進めるくらいでよいのではないでしょうか。
健闘を祈ります。
おわりに
いかがでしたでしょうか。スタートアップへの転職にさらに興味が湧いたでしょうか。それとも・・・。
スタートアップ的な環境変化と急成長を知るのにはこちらの本もおすすめです。
どのスタートアップにどのフェーズで入るかによって、見える景色は全然変わります。それでも、飛び込んでみるかどうかを決めるのは貴方次第です。
私は、スタートアップへ行く前にベンチャー3社を経験していましたが、それでもなお、サラリーマンをしていたらできない新しい経験をいくつもできました。
・調達した3億円が残金200万円になり、あわや倒産
・大手通信教育の会社社長や役員との会食
・テレビ東京からの1本の電話からWBS出演広報を未経験で担当
・80坪の恵比寿の一等地に1人総務としてオフィス移転
・複数株主からの3.3億円の資金調達業務を未経験で担当
・etc...
そして、これらの経験と引き換えに、日々、自分で判断して仕事を進めるスタンスと、精神的、肉体的タフさを求められました。
(私が勤務していた会社の当時の社長はこちらの本のうちの8割型は自分の会社でも発生したとfacebookに書いていました。)
特に家族がいるような場合は難しいことも多いと思いますが、いきなり今の会社を辞めて起業することに比べれば、イベントを覗いてみたり、副業を考えてみるのはこれからの100年時代に、必要なことではないでしょうか。
もしも、スタートアップや転職で相談されたい場合には、お気軽にご相談ください。
(終わり)
<おまけ>
2003年~2008年まで株式会社ライブドアに在職していた時のことを2014年に出版しました。こちらもよろしければ御覧ください。
こちらは、私が過去にいたスタートアップでの資金ショートからの資金調達のストーリーを書いたものです。あわせて御覧ください。
いままで以上に、おもしろコンテンツ、お役立ちコンテンツを製作する費用に充てます!