拳銃のことなど
子どものころ、家に拳銃があった時期がある。
青黒く鈍い光沢を持つ、コルト型(リボルバー型でない)の拳銃だった。
たぶん、コルト・ガバメント(M1911)だったと思う。
いま、コルト・ガバメントをネットで検索してみると、出てくる画像は、グリップが木製か樹脂製、または象牙などの獣骨製のモデルばかりだが、私が見て、触っていたのは、銃床全体が青黒い金属製だった。
父が、私に手渡して持たせてくれたとき、「あっ」と小さく叫んで落としそうになった。
小学生の私の手には、あまりにも大きくて、重かったのだ。
実際、片手で持ち上げることもむずかしく、この銃を完全にホールドして、自在に敵に向かって発射するなど、不可能だと感じた。
その時点で、だいぶ興味は失せたのだが、食堂につづく二畳間の天井に近い棚の上にひょいと載せてあるだけだったので、その後もこっそり、踏み台に乗ってはその銃を愛でたものだ。
たしか、1人だけだが、学校の友だちにも見せて、自慢した記憶がある。
実銃を、子どもに見せびらかし、持たせてみたり、いつでも触れるような場所に置いておくなど、とんでもない父親だが、まぁ、そういう人だった。
忙しい人で、ほとんど家にいなかったが、仕事の合間などによく映画に連れていってくれた。観る映画は、私が大好きだった——その前に父が大好きだったのだろうが——西部劇、ギャングもの、スパイもの、ミステリーなど、アメリカのアクションものばかり。そこには、当然、ピストルが登場し、決闘シーンや銃撃シーンがどっさり登場する。
私の遊びも、弟や友だち相手の撃ち合いっこばかりだった。すでに、小学校低学年にしていっぱしのガンマニアだったのだ。