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じゃぐりサマーと私。

2023年9月下旬に行われたじゃぐりサマーに向けて私がどのように過ごしたのか、どんな思いを持っているのか、ということをこの記事に記していきたいと思います。



1.出場の経緯

2023年3月に関東ジャグリング大会を終え、2024年の大会に向けて動き出そうとしていたら、春頃になって「じゃぐりサマー」という学生大会が夏に行われると知りました。素敵な大会になりそう、という印象でした。最初は学業の事情で日程が立て込むことを恐れて出場をためらったのですが、学生大会に出られる機会が限られていることや、ハットの八幡さんや周りの方々が後押ししてくれたことで出場を決断しました。私は歴5年目だったことから歴2~6年目が対象のミドル部門にエントリーしました。

予測していたことですが、エントリーが殺到し、出場は抽選で決めることになりました。まぁ、私の演技なんて大したことないし、落ちた方がいいかもなーと思っていました。7月下旬、抽選結果がメールで届きました。

なんと、出場枠を用意できる旨が書かれていました。こんな私に出場枠が来るだなんて… 周りのジャグラー達の落選を聞いていたこともあり、身が引き締まると同時に強いプレッシャーを感じました。


2.演技作り

今回、大会出場にあたって、テーマがありました。それは、添削をしてもらった上で本番に臨むことでした。
後にも触れますが、今まではコンセプトを伝えきったらおしまい、という演技を組んできたために、演技内容は誰にも見せないことばかりでした。しかし、今回は大会運営という言い訳も通用せず、特に競技性の高い学生大会の出場ということで、しっかりと演技を練る必要があると感じていました。そこで、今回はしっかりと他の人に演技を添削してもらおうと思ったのです。
7月末から8月初旬の間には演技の骨格を完成させて、1か月かけて仕上げよかな~と思っていましたが、世の中はそんなに甘くないもので、過密日程をやり過ごしているうちに8月下旬を迎えてしまいました。

ここで一旦、演技について話していきます。

今回の演技のコンセプトは、コントラストをはっきりとさせること・自分しかやらないようなことをやることでした。

このコンセプトに至ったきっかけは、春ごろに00世代同期友達のレイン君から企画で演技にオススメの曲を選んでもらったことでした。

今までの私の演技は、変な動きをジャグリングに混ぜ、普通だったらカッコよく決めるところで敢えて流れを切り、微妙な空気を演出する、というものでした。
私は小さな頃から住む場所を転々とし、周りの同級生や大人たちからの批判や悪口に耐えることが多く、仲間外れに慣れてしまっていました。他人の気持ちを上手く把握出来ないことも多く、見た目の悪さを指摘されることばかりでした。バイトも全然続かないし、唯一やっている短期バイトでも、使えない人として定着してしまっている感がありました。こうした背景が影響しているのか、私には常に「自分は誰かに良く思われることなんて無いし、そんなことあってもいけない」と思うようになっていました。どうしても正統派のかっこいい演技を自分みたいなクズがやったら失礼だ、という気持ちが取れませんでした。

しかし、レイン君から送られてきた楽曲はこんなものでした。

こんな爽やかな曲で演技をしていいんですか!?という感じでした。新人戦の頃からカリスマ性を発揮し、大会運営もこなすトップジャグラーのレイン君に、自分という人間を認めてもらったような気持ちになりました。
よし、きちんと技にこだわった演技を作ってやる。私は決意しました。

しかし、レイン君がオススメしてくれた曲は、あまりにも爽やかすぎて、汚らわしい安x君にはもったいない、という感じがどうしても否めませんでした。泣く泣くこの曲は諦めることに。

しかし、ただ諦めるわけにはいきませんでした。すぐに曲の候補を考えはじめました。自分の魅力が他のジャグラーに比べて劣っていることは間違いないと考えていたため、ある程度、自分にしか出来ないスタイルを見せつける必要性を感じていました。今までのスタイルに真面目さを組み合わせることが今回の演技に重要だと確信していました。最初に浮かんだのはこれ。

大会名にサマーというくらいだし、EDMでノリもOK。おふざけも真面目もこの曲でこなせるだろう、と思いました。しかし、ディアボラーを中心に選曲センスの良いジャグラーは無限に湧いてくるものです。曲がダブったら即、比較にさらされてしまう厳しさがあることを考え、この曲は諦めました。

こうなったら、いっそ二部構成にしてしまおう、と思いました。ふざけ→真面目の流れをやっている人はいないだろうと考えたからです。

そこで、1曲目は、ふざけられる短い曲を用意しようと思いました。Oasis等のブリティッシュロックにハマっていたので、「そういえば、Blurって短い曲がチョコチョコあったよな」と気づきました。色々と探してみたところ、今回の1曲目に出会いました。マニアックな技との相性は良いだろうと思っていました。

2曲目は、なんと添削がはじまってから登場します。

演技を組んでいった過程についてちょっとだけお話しします。
前半パートは、スタジオを借り、3時間かけて完成させました。落とさないけれどもしっかりと珍しいコンボを求めていましたが、なかなかに苦戦しました。低血糖のような症状も現れはじめ、フラフラでしたがなんとか構成を考えました。泣く泣く捨てた技も多かったです。
後半パートは、今まで観てきた演技を参考に、近年の大会において印象の良さそうな技を選び、詰め込んでいきました。本当は5クラブもやりたかったのですが、安定性を重視して4クラブに留めました。

9月頭に、添削用に動画を撮ろうとしましたが、近所の柔道場はもう使えないし、周りに人がいる環境で、自分みたいなクズが撮影だなんて大層なことは出来なかったため、外で撮影を行いました。良い感じでノードロ状態だったのに、風が吹いてきて4パートは落としまくりました。日没を迎えてしまい、この後に撮影を行う機会は大会直前まで設けられなかったため、妥協することにしました。

添削を頼んだのは、海外ジャグラーと北里大jugg-usの先輩でした。これには理由があります。
まず、最初に述べたように、演技のダブりを避けたかったことがあります。海外の視点を演技に持ち込めば、絶対に周りのジャグラーにはない雰囲気・技の演技を組むことが出来る、と考えていました。何の魅力も無い私でも他人と違えば価値が生まれる、という魂胆だったのです。また、大会全体を考えた上でも、様々な演技があった方が観客にとって良いだろう、という偉そうな考えもありました。
もう一つの理由は、青春を取り戻したい、ということ。新人戦東日本杯がまともにあれば、jugg-usの先輩に演技添削をしてもらえるはずでした。そこから安xのジャグリングスタイルはサプライズ重視になり、添削とは無縁になってしまいました。おまけに、大学側の強い感染対策により学内での練習機会は激減しました。まともに先輩方と会えないまま自分は上級生になってしまったのです。この機会に青春を取り返す。強い決意でした。

いざ、添削、と思ったのですが、当時後半の部分に選んでいたロック調の楽曲が権利の問題で使いづらいことが発覚。非常に焦りましたが、安xは妙案を思いつきました。

後半部分を曲なしにして、海外ジャグラーに選曲してもらおう。

無茶振りだなーと思いましたが、やってみないと分からないところはあったので、とりあえず動画を送ってみることにしました。
スペイン語が上手くなかったため、海外ジャグラーは英語が使える人に絞りました。今度はスペイン語・フランス語も頑張ってみたい…
下手くそな英語を添えてのInstagramのやりとりには緊張しました。
何人かにメッセージを送りましたが、みんな気さくに返信してくれました。ありがたいことに、選曲もしてもらえました。それこそが、今回の後半部分の曲です。完全に理解した訳ではありませんが、人間関係の上手く行かない私に合っている曲のように思いました。先に組んでいた構成にも割とあっており、数週間で仕上げることが出来るだろうと確信し、使用を決断しました。

海外ジャグラーの添削は非常に貴重でした。倫理的にヤバかった私の演出もこの添削のおかげでマシになりました。強調すべき技について伝えてもらえたところも良かったです。

海外ジャグラーの添削を終え、前の曲で作った演技に新しい曲を無理やり貼り付けた危険な動画を先輩に送りつけました。
先輩からも、非常に多くのアドバイスをいただきました(なんと動画付き)。特に、演技の雰囲気づくりで先輩のアドバイスが非常に役立ちました。大会に向けて、気合十分でした。

しかし、立ちはだかってきたのが過密日程。9月中は、平日1回の外練習と週末のMalabaristasやjugg-usの練習以外に練習の機会がないという酷い状態でした。コンディションも上がらず、演技全てでドロップすることも珍しくありませんでした。他の選手や落選したジャグラーはもっと真面目に練習しているのに申し訳ない、という気持ちでいっぱいでした。それでもやるしかありませんでした。私なりに必死でした。努力と呼べることは何一つ出来ませんでしたが、努力じゃなくても何かを掴もうともがきました。

Malabaristasの大会で、トーラスさんが活躍していたことも最後の踏ん張りに効きました。クラブという道具への愛着・自身のジャグリング哲学を感じさせる演技で感動しました。今後も刺激を受けたい演技の1つです。


3.いのまてぃージャグリング交流会について

今回、大会にエントリーする際、所属を”いのまてぃージャグリング交流会”としました。これにも理由があります。

正直、私は自分の性格の悪さ・人望の無さに絶望していました。自分が関わった人を不快にし、品位を下げているような感覚に襲われ続けていました。昨年からお世話になっている名門Malabaristasのブランドを背負えるほどの実力も無いし、jugg-usの後輩たちにとって自分が良い存在かどうか、自信がありませんでした。小さい頃から、君の愛は独りよがりなんだよと言われ続けてきた私にとって、後輩との接し方は非常に難しいものでした。ただでさえ、言語がまともに扱えないのに、愛の表現となるとより下手でした。Malaaristasでも、皆さんが築いてきた文化に土足で踏み入れるようなことをしてきたのではないか、とヒヤヒヤすることが絶えませんでした。自分は練習の邪魔者でしか無いのかもしれないと感じることばかりでした。2023年3月の新人戦フリー部門に出場したとき、友達欲しさにMalabarisitasとjugg-usを名乗った自分の軽率さを恨みました。

しかし、事はその新人戦で起こりました。私も運営に関わった関東ジャグリング大会の主催で00世代の同期であるいのまてぃー君から、声をかけられたのです。
「君の演技は良かったけど、1つ文句がある。なんでいのまてぃージャグリング交流会を名乗らないんだよ。」
いのまてぃージャグリング交流会は新人戦の2週間ほど前に開催されていた交流会の名前で、私は開場から閉場まで10時間以上ずっと会場にいました。


正直、最初にその言葉を聞いたとき、泣きそうでした。こんなクズみたいな私に所属を名乗って欲しいと伝えてくれる団体があったんだな、という感動は大きかったです。関東ジャグリング大会の運営をこなしたご褒美は居場所だったのだと気づきました。一気に心が軽くなりました。次に大会に出るようなことがあれば、必ずいのまてぃージャグリング交流会を名乗ってやる。私の決意は固くなりました。


4.大会当日

当日は、早く起き過ぎないように気をつかい、本番に向けてコンディションを整えました。普段は早期覚醒に悩まされている私も、大会当日は良く眠れました。
受付前に、先輩から教えてもらった会場近くの広場でアップをしました。思っていたよりも調子が良く、気候も涼しかったため、なんか上手く行きそうな感じがしました。

会場に着いてみると、知り合いとのあいさつでほとんど時間が過ぎていきました。jugg-usの後輩やMalabaristasの皆さんとも話が出来ました。大会3~4日前から前日の夕方まで抑うつに悩まされ、誰からも嫌われているような気分だった私にとってありがたいことでした。いつの間にか知り合いを増やせたことに達成感のようなものさえ感じました。今までの4年半は無駄じゃなかったと思いました。

開会式後はジュニア部門でした。非常に申し訳ないことですが、自分の演技に集中しており、演技はまともに観られませんでした。

jugg-usの先輩たちと話してから衣装に着替え、照明・舞台チェックに臨みました。周りの選手を邪魔してはいけない、と強く感じて練習は控えめにしたことを覚えています。ディアボロ勢が難しい技を繰り出し続けていましたが、なんだか会場がピリついてきたな、と感じました。もっと会場の雰囲気が柔らかくなると拍手も出やすいかも、と勝手に考えた私は、自分の演技の前半部分への布石も込めて舞台上でふざけまくりました。とはいえ、ただふざけていたのではなく、照明の明暗を見分けたり、マットの感触を確かめてもいました。ピルエットをするにはマットが引っ掛かりそうでしたが、安x君の雑魚ピルエットなら大丈夫そうで安心しました。

本番では想像以上に一言コメントがウケて安心しました。確か、「先日、某SNSの名前がXに変わり、ようやく時代が私に追いつきました、ガッハッハ。」というものだったと思いましたが、これは、憧れのクラブジャグラーである南さんから、安xと名乗っていたらSNSの名前がXになって面白い、という旨を伝えられたことから着想を得ました。



自分の出番では、いかにも本番だなぁという感じでポロポロ落としましたが、上手くまとめた方かな、と思います。

演技を終えて観客席に戻ると、先輩から、入賞もありえる、と伝えられました。よくまとまったなぁとは思いましたが、そんなに良かったの?という感じでした。
ありがたいことに、南さんからも「ジャグリングが上手くなった気がします。周りの人も上手いので分かりませんが、入賞もあると思いますよ。」と伝えてもらいました。ジャグリングをはじめた頃から憧れていたジャグラーから上手くなったと言われるだなんて…本当に素晴らしい瞬間でした。

自分の演技が終わり、先輩方とアドバンス・フリー部門を観ている時間は本当に心が満たされるものでした。死ぬ前にこんな思いが出来るなんて…感無量でした。


一通りの演技が終わり、結果発表の時間が来たとき、もし入賞できたのであれば3位だろうな、と思っていました。ジュニア部門の発表が終わり、ミドル部門3位の発表の時が来ました…。keiさんの演技はキレがあって良かったなぁ、ヤマトさんは上手すぎるから優勝でしょー、なぽりたんさんも普通に上手かったよなぁ、小澤さんもめちゃ素晴らしかった…

「エントリーナンバー15…」

え!?俺??
見つめていたパンフの ”安x” に焦点が合いました。

正直、信じられませんでした。先輩方に、舞台上がってきな、と言われて舞台に進んでいきました。慌てて眼鏡を外しました。舞台では、自分が大会でアピールをしはじめた頃から見守ってくれていた八幡さんから賞状を受け取りました。本当に胸がいっぱいになりました。コメントを絞り出すのは大変でしたが、私が大会に出る動機として、クラブジャグリングを広めることが大きいため、ぜひクラブを握って欲しいと口から言葉が出てきました。

舞台から観客席に戻った後も、先輩から「やっぱり入賞したじゃーん」とか、「立派なガクチカだね」と茶化してもらって感激でした。

本当に、生きていて良かったです。


5.最後に

今回3位入賞を果たして、ホッとする気持ちもありました。あさぎさんやきなこー君といった同期のクラブジャグラーがしっかり競技会で活躍している一方で、私だけ妙な演技を披露しており、クラブ界の足を引っ張っているのかもしれないと思っていたからです。アドバンス部門では、南さんも入賞し、クラブジャグラーが元気にジャグリングをする様子をアピール出来て本当に良かったと思います。
jugg-usの後輩たちに対しても、たまに練習にやってくる変なおじさん、という感じでしたが、少しはいいところを見せられたと思います。

当然、反省点も多くあります。即席に近い形で演技を披露してしまい、構成面はもう少し練ることが出来たように思います。練習時間を確保できていれば、安定性も上げられたように感じます。今回、3位入賞を果たした中では、運が味方した面も非常に大きかったことは間違いありません。正直、周りの選手たちは”格上”という言葉を使っても良いほどでした。

これからは、今回の反省を活かし、統一感のある演技も含めて、幅広く取り組んでいきたいと思います。今後は、”安x”以外のブランドにも挑戦する予定です。
また、今回得た実績をジャグリング・クラブジャグリングの普及に活用したいと思っています。そのためにも、ジャグリング以外の要素(楽器、ビーズ細工等)に取り組むことから始めたいと思います。ようやく、新しいスタートラインに立てたように思います。

後日談ですが、ジャグリングに関係の無い友人たちにも入賞を喜んでもらえましたし、添削をしてくれた海外ジャグラーも私の入賞を祝福してくれました。自暴自棄だった私にとって非常に嬉しいことです。じゃぐりサマーを通して、色々な人との絆を確かめることが出来ました。本当にありがたいことです。


最後に、改めてこのような大会を用意してくださった運営の皆さんに感謝します。また、こんな私を受け入れてくれた東大Malabaristasの皆さん、北里大jugg-usの皆さんをはじめ、私に関わってくれた全てのジャグラーにありがとうと伝えたいです。皆さんと関わっていくことで、”安x”というジャグラーが作り上げられていったと思います。これからも精進してまいります。



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