無理ゲー社会 著:橘玲(たちばな・あきら)
あとがき引用
ひとびとが「自分らしく」生きたいと思い、ばらばらになっていけば、あちこちで利害が衝突し、社会はとてつもなく複雑になっていく。これによって政治は渋滞し、利害調整で行政システムが巨大化し、ひとびとを抑圧する。
「リベラル」を自称するひとたちには受け入れがたいだろうが、リベラル化が引き起こした問題をリベラルな政策によって解決することはできない。すべての”不都合な事実”は、「リベラルな社会を目指せば目指すほど生きづらさが増していく」ことを示している。
ヒトの認知能力には限りがあるので、わたしたちは複雑なものを複雑なまま理解することができない。こうして、「なにか邪悪なものが世界を支配している」と考えるようになる。この陰謀思考の標的は、右派では「ディープステート」、左派では「資本主義」が最近の流行のようだ。
だがどれほどワラ人形に呪詛(じゅそ)の言葉を投げつけても、この巨大な潮流はせき止めることはもちろん、流れを変えることすらできないだろう。
それに加えて日本の若者たちは、人類史上未曾有の超高齢社会のなか、増え続ける高齢者を支えるという、”罰ゲーム”を課せられ、さらには、1世紀(100年)を超えるかもしれない自らの人生をまっとうしなければならない。この状況で「絶望するな」というのは難しいだろう。
それにもかかわらず、きらびやかな世界のなかで、「社会的・経済的に成功し、評判と性愛を獲得する」という困難なゲーム(無理ゲー)を、たった一人で攻略しなければならない。これが「自分らしく生きる」リベラルな社会のルールだ。
わたしたちは、なんとかしてこの「残酷な世界」を生き延びていくほかはない。
2021年6月
目次引用
❶「自分らしく生きる」という呪い
①『君の名は。』と特攻
②「自分さがし」という新たな世界宗教
❷知能格差社会
③メリトクラシーのディストピア
④遺伝ガチャで人生が決まるのか?
❸経済格差と性愛格差
⑤絶望から陰謀が生まれるとき
⑥「神」になった「非モテ」のテロリスト
❹ユートピアを探して
⑦「資本主義」は夢を実現するシステム
⑧「よりよい世界」をつくる方法
エピローグ「評判格差社会」という無理ゲー
あとがき 才能のある者にとってはユートピア、それ以外にとってはディストピア
285ページ読了
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