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今年作った曲について語る 前編

どうせ書き始めたら長いんだわな。今年作った4曲について語ります。よかったら読んでってください。

1/4 雪と人魂の映える朝に

ボカコレ2023春参加曲

制作にあたって、「日常+ちょっとした違和感」というコンセプトが先にあり、「冬は雪に紛れて見えない人魂が飛んでいたりする」という設定を思いつきました。映像表現的に面倒だったこともあり、ひと部屋の中で完結する物語に。結局、散らかった部屋を作るのはそれなりに面倒でした!

仕事に疲れて飲んだくれ、二日酔いの頭で毎日希死念慮に苛まれる人物は、かつての私自身がモデルです。とまれ、すべてを自身に寄せると単なるオッサンのドアップとなり、視覚的な心地よさが失われてしまうので、モデルの見た目は大いに変更しました。
AccuRigというフリーの自動リギング(リギング=作った3Dモデルに骨を入れ、動くようにする)アプリを使い始めた作品でもあります。「作ったモデルを作品の中で生き生きと動かす」、私のライフワークになりそうです。

この歌の語り手は何を隠そう「猫」。メンタルボロボロの飼い主を応援すると同時に、弱った人間に憑き縋る人魂からの守護者であることを映像で表現しようとしました。

人魂は、人間には見えず、猫には見えます。「人によって可視・不可視が異なる存在であることを視聴者に説明する」って実は難しいようです。かの宮崎駿監督ですら、トトロにて「みんなには見えないんだわ」と、サツキちゃんに説明させていましたから。
本作では、飼い主がスマホを取り出して外の雪景色を撮影する場面を設け、スマホには人魂が映らず、飼い主も別に不思議がる様子はない…という一連のカットで、「人間には見えない人魂」を表現しました。…多分お気づきになった方はごく少数だったと思います!

これで分かるわきゃねーだろ!←当時の俺


映像表現って
① 物語の根幹に関わる故に全員が理解できなくてはならない情報
と、
②作者のこだわり的な部分で気づいても気づかなくても大勢に影響はない情報
があります。要は情報の優先度なんですが。
今作は①も②も関係なく、すべての情報があまりにもフラットでした。
「自分の表現したいことは、丁寧に、わかりやすく」が大切!と学んだ作品でした。

曲に関しては相も変わらず何の専門知識もないがために、碌にお話しすることすらできませんが、サビのメロディは我ながらキャッチーでお気に入りです。珍しくメロディが「降りて」きて、且つ、「これはいける!」と確信したメロディでした。
二日酔いで部屋も寒くて気も重い朝をイメージし、ヘヨンヘヨンに音をふらつかせてみたと記憶しております。

歌詞はこんな感じです!

夕べのワインが祟って 32点の目覚め
ねえ、撚(よ)れたソファーに転がるキミは
まだ取り柄の無い生き物だ

どうやら雪が降ったようだ
マイナス1℃の街で
……で、冷めた紅茶を飲み干して
また不幸が煮凝った顔してさぁ

最低なことがあって
力なく肩を落としていた
大抵は在り来りな
幸せとか探しながら

毎朝悩んでいるようだ
ドアと窓との二択で
ビタミンとカフェインを血に巡らせた
操り人形に見えるのさ

誰を敵に回したって構わない
二つ返事の愛情はここにあるから
稚(いとけな)さを笑われても

窓の外を真っ白く人魂と雪が染めていく
大丈夫、ボクがいるから!
今日も一匹(ひとり)待っているから

人間(ひと)知れず愛しながら

雪と人魂の映える朝に / 知声 より

紆余曲折の末に「二つ返事の愛情」という言葉をひねり出しました。これがこの歌の核になるといっても過言ではありません。無条件かつ無償の愛、いつでも味方になってくれる存在、未熟者にはそれが必要だ。と、言いたかったのだろう、とでも想像しておいていただければ幸いです。

余談ながら、春のボカコレ時にこの曲を自薦しまくった結果、最大級のシャドウバンを食らいました。自業自得もいいところですね。


2/4 COMET BOY

I or We GRAND PRIX参加作品。もちろんぼっち陣営。
そういやこれの結果発表とかどうなったんだろ?

コメットとは彗星のことです。タイトルの後ろにはうっすらと「彗星孤児」と書いてあります。BOYを孤児と訳したのは私の浅学と独断によるものです。
どうせここまで読んでる方は極々少数かと存じますので、書いておきましょう。この曲のテーマは「孤独」ですが、裏テーマがありまして、それが「中絶」です。

青く燻ぶった灰の戦慄きが
可憐なあまり力を込めた

やっとハロゲンランプに
追い詰めた猿は
見境もなく時に牙を立て消えた

目蓋を刺す幻は
銀の梢に沿って
海神に還る

歌えよ汀に
誰もいないでしょう?

頭上をかすめて
天使が逃げてく

COMET BOY / 知声 より

歌詞は100字強。文字数も時間も私の中で最短の曲です。
「青」は「静脈」、「灰」は「胚」、「戦慄き(わななき)」は「鼓動」…と、色々比喩を重ねた結果、なんかよく分かんない歌詞に仕上がりました。汀(みぎわ、水際)は彼岸です。主テーマ「孤独」は、世に産まれ得なかった水子の孤独だったりするのです。

なんだってそんなテーマで書き始めたか、ということを不思議と記憶していません。いずれにせよ、そのテーマを下敷きに「宇宙作りてぇ~!」という欲求とミックスさせて本作ができました。また、前回のボカコレでこの歌に出会ったのも大きかった。

今見るとかなり影響を受けていることが見て取れますね。

そして単純に「横に落ちてく涙」を私もどうしてもやってみたいんだわ。

↑やってない

上記作に影響を受けて、本作からシネマスコープ(映画の画面縦横比)を採用しています。広大な宇宙、ワイドショット多用しまくりの今作には、なかなか似合ったんじゃないでしょうか。降り注ぐオウムガイ型生物の大群をバックに、誰もいない砂漠を歩く主人公。お気に入りのカットです。「大量の異質な何かが空を埋める」は、前作以降、全作に共通して実施しています。

お気に入りのワイドショット。マスターショット?

宇宙船のデザインはオウムガイ、がメインです。が、裏テーマに合わせて子宮とかもデザインに組み込みました。コールドスリープマシンのモデルは昆虫の蛹だったり。さらに、宇宙船の噴出口を見ると、実は巨大な胎児が回転しているのです。「宇宙生物の胚を人間がどっかから奪ってきて、宇宙船の動力として使用している」という設定にしてあります。リア友に見せたら一発で気づかれてビビりましたが、皆さんはお気づきになられたでしょうか?

実はこんなのが内包されています

曲そのものは何というか、「狂ったように送信され続けるモールス」という設定だけ大事にして、あとは大してこだわっていません(宇宙っぽい音!を探してサウンドフォントを漂流した覚えはあります。)モールスの内容は
「あめつちの唯一無二と心得て涙も今や落つるを忘れ」
「(地球を遠く離れて旅をし、)結局地球は唯一無二の惑星だったと理解したころには、涙が(無重力のために)落ちることも忘れてしまった。」というSF×短歌みたいな内容です。

面白がって出てくるマシンや世界観に細かい設定をつけまくったのが、次回作の作りこみへとつながっていった気がします。

残り2曲は後編にて!

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