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大阪府八尾市|子供に装着したウェアラブル端末からデータ取得・分析し、障害やいじめの兆候を事前検知

大阪府八尾市は、大阪府の中央部東寄りに位置し、西は大阪市に、北は東大阪市に、南は柏原市・松原市・藤井寺市に、東は生駒山系を境にして奈良県に接している町です。大阪市の近郊都市として発展し、今は人口が約26万人いる都市です。

母子健康手帳のデジタル化を実現した事例をご紹介します。

■本記事のまとめ
◎ 子供にスマート測定器(ウェアラブル端末)を装着させ、位置情報や脈拍・心拍などのデータを取得。
◎ 保育士が目視したデータと合わせて分析することで、障害やいじめの兆候を事前検知できるようになり、保育士の業務負担も軽減した。
◎ 教育機関などと協力し信頼できる子育て情報と、スマート測定器(ウェアラブル端末)で取得した子供の健康データをスマホで閲覧できる環境をつくった。

子育てリスクと保育士の業務負担の増大

子供の軽度発達障害やいじめ、生後間もない時期の寝返りによる窒息など、子育てにおけるリスクは日常生活に潜んでいます。一方で、信頼・安心できる子育て情報を掴みにくい状況です。

昔であれば、近隣の方ともコミュニケーションを取っているため、ご近所さんが子育てのお手伝いをしてくれたり、子育てに役立つことを教えてくれたり、ということがありました。しかし昨今ではお隣さんの顔も知らないという家庭も多く、実家から離れて暮らしている家庭では子育てに関する情報を仕入れる場がありません。Webで検索すれば情報自体はたくさん出てきますが、本当に信頼できる情報なのかが分かりません。

また、保育園においても保育士の業務負担は増大しています。両親が共働きの家庭が年々増えているため、少子化にも関わらず保育園への希望は増加しており、都市部では保育園・保育所の施設が増え続けています。保育士の仕事は子供の面倒を見るだけでなく、事務処理など雑多な業務も多いため、保育士の肉体的・精神的な負荷が高くなっています。

そこで、子育てにおけるリスクを低減しつつ、保育士の業務負荷を軽減するためにICT活用として「スマート測定器」「こども園(保育園)総合管理システム」の2つに取り組みました。

スマート測定器(IoTデバイス)の導入

子供にウェアラブル端末(下記画像参照)を装着することにより、位置情報・脈拍・心拍・血圧・歩数・ストレス度合いといったデータを取得できるようになりました。

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※画像:総務省 情報流通行政局HP

取得したデータを分析することで、障害やいじめの発生を事前に検知し、アラートできる仕組みです。幼い子供においては、ウェアラブル端末をつけると脈拍を常時測れるため、うつぶせ寝による突然死を回避することができます。

子供の安全を守れることはもちろん、保育士としてもメリットが多くあります。ウェアラブル端末以外にも、保育園に来た際にはICカードをかざすようにしたため、保育士が子供の出欠管理を行う手間が省けるようになりました。また、子供の健康状態をデータで取得できるため、心拍数などのチェックを行う時間や、身長・体重といった健康状態を記載する時間も削減することができました。

こども園(保育園)総合管理システム

発育情報、子育てQ&Aなどの子育てに関する情報について、信頼性の高い情報を整備し、保護者がスマートフォンで閲覧できる仕組みを構築しました。

信頼できる子育て情報が提供されるだけではなく、スマート測定器で計測されたわが子の健康データも確認することが可能です。測定されたデータは「YAOCCOデータベース」に全て蓄積され、一元管理されているためです。

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※画像:総務省HP

得られた効果

◯ 障害やいじめの兆候を検知
障害が疑わしい園児が3名(9%)見つかり、早期対応が可能となりました。

◯ 保育士の業務負荷軽減
事務作業が効率化され、保育士1人あたり1日平均13.86分の時間を削減できました。

◯ 保護者の満足度向上
保護者のこども園に対する満足度が70%にまで上がりました。

ポイント

今回の取り組みは、母子健康手帳データ化推進協議会が主体となって推進されました。民間事業者や教育・研究機関を巻き込みながら、持続可能にするためにしっかりとビジネスモデルを構築したという点は大きなポイントです。

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※画像:総務省HP

関係者が協力しながら実証を行いました。実証過程ではいくつもの障壁にぶつかりましたが、障壁に対して工夫を繰り返して成果を得ることができました。障壁に対して工夫された点が有益なポイントですので、2つご紹介します。

(1)子供がウェアラブル端末をつけるのを嫌がってしまう
目につかず、意識されにくい場所として足首につけるように工夫されました。腕に装着する際は、保育士による丁寧な言葉がけや、リーダー的な園児を中心に装着するようにして、無理やり装着するのではなく、楽しく装着するようにされたようです。

(2)ウェアラブル端末で収集したデータのみの分析で障害やいじめの兆候に気づきづらい
脈拍・心拍の情報など、ウェアラブル端末から取得できるデータだけでは、やはり分析の限界があったようです。そこで、実際に保育士が目視で確認した園児の行動データなども加えて分析するようにしました。保育士からヒアリングしたデータも合わせて分析することで、障害やいじめの兆候を掴めるようになりました。

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