鹿児島県奄美大島|フリーランスが最も働きやすい島化計画を推進
奄美大島は、鹿児島から南に約380キロメートルに位置し、日本の離島では佐渡島に次いで大きな島です。人工も日本にある島々の中でも最も多く、約6万人が暮らしています。
奄美大島では、2017年度から「フリーランスが最も働きやすい島化計画」を進めています。ICTを活用して仕事を創出し、移住や定住を促進しているこの取り組みについてご紹介します。
■本記事のまとめ
・「フリーランスが最も働きやすい島化計画」を策定。
・奄美市にフリーランス支援窓口を設置、フリーランス寺子屋と称して勉強会やイベントを開催。
・ランサーズやGMOペパボのminne(ハンドメイド雑貨の販売サイト)との提携を通じて、講座で学ぶだけでなく仕事を任せるところまで仕組み化。
学校を卒業すると島外へ進学せざるを得ない若者たち
奄美大島には大学がありません。そのため高校を卒業し、大学へ進学するためには奄美大島を出ていかなければいけません。
仕事に就くにしても奄美大島では仕事が豊富にあるわけではないため、島外へ就職してしまうこともあります。また、進学して島外で生活する中で「島に戻りたい」と思っても、仕事がないという理由でUターンを諦める人も少なくありませんでした。
そこで企業誘致にも取り組んでいましたが、奄美大島へ進出する企業は少なかったため、「フリーランス」を支援することで仕事を増やすというアプローチへ変更されました。
フリーランスであれば、インターネットを介して首都圏など本土の企業から仕事を受注することが十分に可能です。そのため自然豊かな奄美大島でフリーランスとして活動する移住者・定住者を増やすことで人口増加、経済活性化へ結び付ける狙いです。
フリーランスが最も働きやすい島化計画
フリーランスを支援するために「フリーランスが最も働きやすい島化計画」が策定され、この計画の中で4つの目標が掲げられました。
(1)2020年までに200人のフリーランスを育成すること
(2)50人のフリーランスの移住者を呼び込むこと
(3)子育てをしながら稼げる子育てワーカーを支援すること
(4)年収300万円のフリーランスを育成すること
これらの目標を目指すために様々な取り組みを行っています。
〈フリーランスが最も働きやすい島化計画での取り組み例〉
・ICT活用企業・地元企業と連携による島での働き方支援
・人材育成セミナーなど各種講座の開催
・奄美市にフリーランス支援窓口を設置
・「奄美フリーランス協会」設立支援
・移住支援(空家バンク、定住促進住宅)
・コワーキングスペースの提供
・インターネット環境の整備
奄美市のフリーランス支援を設置しフリーランスを育成
「フリーランスとして活動して仕事をしたいが、何をすればよいか分からない」という住民のために、奄美市は市役所に「フリーランス支援窓口」を開設しました。
住民のフリーランス育成を行なうために開催する奄美市オリジナルの教育プログラム「フリーランス寺子屋」を設立し、動画編集やパワポで作るデザインなどの講座を開催しました。
ランサーズとの提携施策
「フリーランスが最も働きやすい島化計画」は、奄美市とランサーズ株式会社が提携して行った施策でした。
この計画策定にあたり、課題解決の方策を検討していくなかで、「時間と場所にとらわれない新しい働き方をつくる」というビジョンをもつランサーズ株式会社と、「ICTを活用した産業振興に取り組む」市の施策の方向性が合致し、課題解決に向けて連携協力を行うこととなり、協定締結に至りました。
※奄美大島HP
フリーランス寺子屋などを通じて育成したフリーランスの仕事を獲得するとして、個人間や個人法人間で業務のマッチングサービスを提供するランサーズを活用しました。フリーランスの仕事が受注できるため、非常に相性の良いサービスです。
ランサーズとしても自治体との提携を通じてサービスの利用者を広げることができるため、Win-Winの関係を築くことができています。
ポイント
開設している講座が「ただ学ぶだけではなく、仕事を任される」ことまで出来る点がポイントです。
たとえば、メディア等への掲載原稿を執筆するライティングの受講生は、奄美大島の情報発信を行う株式会社しーまからの業務委託で、ライティング業務を経験することができる。初めて行うフリーランス業務に不安がないよう、納期管理や品質管理はしーまが担当。ライティング講座の受講から業務の請負まで至った人だけでも81名存在するという。
※画像・文章:地方創生 連携・交流ひろば
一般的な勉強会では、学んで終わりのものが多くありますが、当然ながら学んだものを実践で活かさなければ意味がありません。とは言え、学んだことをすぐに行動して活かせる人が多くないのが実情です。
そこで、奄美市のように仕事を任せることまで仕組み化することで、(言い方は悪いのですが)強制的に仕事(実践)で活かすことになります。
ランサーズ社との提携はこの点においてもシナジーがあります。
また、ランサーズ社だけでなくGMOペパボ株式会社との提携により、GMOペパボ社が運営する国内最大のハンドメイドマーケット「minne(ミンネ)」を通じて、奄美大島で作った雑貨の販売も行いました。売り上げがのび、実店舗を構えるまでになったようです。