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京都の芸妓さんが教えてくれた「たった500円で男になる方法」

さて。

お久しぶりです。

春花園に来て10ヶ月が経ち、生活のリズムにもすっかり慣れ、毎日が違って楽しい日々を過ごせています。

もちろん超大変だけど。笑

おそらく日本中探しても休みなし(1ヶ月半に一回くらい)、お給料なし(少しのお小遣いはある)、365日3食親方と一緒という本当の徒弟制度で弟子をしている人は相撲の世界とウチだけでしょう。

ということで、たまには浮世離れした話、面白かった経験をここに綴ろうかなと思います。

俺は今、寮で俺含め4人の弟子と生活しています。

日本人は俺だけ。

他はポーランド人、台湾人、プエルトリコ人。

普段の会話は英語で、ご飯を食べているときは各国の政治システムとか文化、ど下ネタについて話すことが多く、普段話しているだけでも沢山色々なことが知れて、俺は勝手に「国内留学」と呼んでいます。

日本人は俺だけで、しかも8年ぶりの日本人弟子なので親方がどこかに行くときは日本語がわかる俺が一緒に行くことが多いです。

ありがたいことに1年目なのに色々なオークションに連れて行ってもらったりお客さんのところに連れて行ってもらったりして親方の色々な立ち振る舞いや交渉、売り方や人との付き合い方を間近で勉強させてもらっています。

3週間ほど前も親方と京都に行ったのですが、その時に盆栽界の超有名な愛好家の方との接待があって、連れて行ってもらいました。

京都の接待とはどんなものかと思っていたら、ある意味想像通り、けど「これが噂のか」といったお茶屋さんでした。

部屋に入ると牡丹鍋が用意されていて、部屋の前には屏風があって、尺八やら何やらが置いてあって。

こっちが5人いたのですが、それに対して舞妓さん2人、芸妓さんが3人。

ご飯を食べる前にその舞妓さんと芸妓さんが踊るのですが、正直何がいいのかはよく分かりませんでしたが、なんか踊っていました。笑

はんなり、はんなりって感じで。笑

あの踊りだけを見るならTikTokで可愛い素人の女の子が踊っているのを見ている方がいいなって感じでしたが、場の雰囲気はありました。

そして一緒に牡丹鍋をつつくのですが、何が面白いのか分からないお決まりのくだりみたいなのが繰り広げられて、難しい、、

舞妓さん「私はこの間お餅を7個食べたどすぇ」
お客「じゃあ今日は8個だべようか」
舞妓さん「兄さん、それだと太ってしまいますぅ」
わっはっは。みたいな。

えーーーーーーーー!!むずぅ!!!!!!

この会話が急に始まってみんなが笑っていたのですが、俺にはさっぱり。

「この舞妓さんは急にお餅の話をして、わけわからねーな」と思っていました。笑

後から聞くと気に入った舞妓さんには牡丹鍋のシメにお餅を沢山食べさせるという慣習があるそうです。

そんなん知らんて。笑

まぁそんな感じで牡丹鍋を食べていて、味はめちゃくちゃ美味かったので沢山食べながら芸妓さんと喋っていて「印象に残っているお客さん」の話になりました。

京都の芸妓さんです。

一晩で100万が普通の世界で働く女性が印象に残っているお客さんって凄そうじゃないですか。

その芸妓さんが印象に残っているのはお客さんとお店を移動している時に起きたそうです。

お茶屋さん遊びはお店を3軒くらいはしごするんですね。

その移動がタクシーの時もあれば、近ければ歩きの時もあるのですが、そのときは歩きで移動していたそうです。

そしたらたまたま移動中に夜にやっていたアートの無料展示があったらしく、ふとそこに寄ってアートを少し見たそうです。

入り口でよくある紙コップのコーヒーももらって少し見ていたそうですが、お店の移動中というのもあってすぐに出たそうなんですね。

その展示場を出る時にそのお客さんが受付の女の子に
「ご馳走さまでした」と言って500円を置いていったそうなんです。

普通に無料の展示でもらったコーヒーに対して「ご馳走さまでした」と言えるだけで礼儀正しいのに、その時にさりげなくワンコイン置ける姿が印象に残っているそうです。

なんだか粋ですよね。

この間春花園に親方の友達がいらっしゃって。

その人はもう定年しているのですが、松下幸之助のもとで働いていたらしいです。

その方が帰られる時に俺が駅まで送っていくことになったんです。

大事なお客さんや親方の知り合いは俺が駅まで送っていったりすることはしょっちゅうあるんですが、その松下幸之助のもとで働いていた方だけが今までで唯一「運転ありがとうね」と言って1,000円のチップをくれたんです。

たった数分の運転で送迎だけですが、その人の腰の低さ、言葉の使い方、そしてさりげなくそういうことをやってくださる姿はすごい印象に残っています。

芸妓さんの話といい、俺のチップの話といい、さりげなくお金をあげればいいという単純な話ではなく、なんだかそこにある温度感が絶妙に色っぽくて粋の世界なんですよね。

芸妓さんが「最近は温かいお客さんが減ってきてる」って言ってました。

実態の分からない、言語化できない「粋」は本当に素敵だから、無くなってるのは寂しいよな〜。



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