【浅草ロック座】Muse 2nd Season(6/1~6/10)
「浅草ロック座」は現存するストリップ劇場では、最大手にして最古参の劇場です。かなり今更ですが、今回は「浅草ロック座 Muse 2nd Season(Muse 2nd)」を観劇してきたので、感想をまとめていきます。
尚、まだまだ私はストリップ観劇初心者の為、業界用語や表現が異なる場合もあります。ご容赦頂けば幸いです。
Muse 2ndは本来、2020年4/4(土)~4/30(木)の日程で公演される予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点より、4/7(火)で一時中断していました。
今回出演している秋月穂乃果さんによると、踊り子さんは4/7(火)に「本日が楽日」だと伝えられたそうです。踊り子さんは非常に大きなショックを受けていたのではないかと想像します。
その後、スタッフさんの尽力により、再開の日程が大急ぎで調整され、6/1(月)~再び無事開幕しました。
浅草ロック座のクオリティーのショーを提供する裏には、踊り子さん含め全ての浅草ロック座関係者がどれほどの身体的・精神的エネルギーの燃やしているのか、いち観劇者の私が想像するだけでも、凄いものがあります。
今回こうしてMuse 2ndが再演され、踊り子さんたちの思いが再び舞台で弾けられることを非常に嬉しく思いました。
さて、今回の香盤表を見ていきましょう。
FEMME FATALE 1stでは官能的で禁忌的な百合を演じた「早乙女らぶ」さんから始まり、昨年デビューしたばかりの「藤川菜緒」さん、PASSION 2ndでキレのあるダンスを見せた「桜庭うれあ」さん、先日周年記念日を迎えられた「小野今日子」さん、今回一番印象的だった「秋月穂乃果」さん、個人的には「TO -Time is Over-」以来の「鈴木ミント」さん、そしてメインは新春公演 騒Roaringで最高のハイカラさんが通るを演じた「南まゆ」さんという非常に魅力的な香盤です。それでは1景から順に感じたことを述べていきます。
1景は早乙女らぶさんで「Under The Sun」、モネの「散歩、日傘を差す女」をモチーフにした景です。
今回のMuse 2edは、アート作品やアーティストをモチーフに、浅草ロック座流にストリップと芸術を融合させた公演となっており、1回はその幕開けに相応しい景でした。
浅草ロック座館長の早乙女らぶさんの開演の挨拶の後、幕が開くと、舞台上には、ゴッホの「向日葵」、ムンクの「叫び」、葛飾北斎の「富嶽三十六景」、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」、「ヴィーナスの誕生」など誰もが見たことのある絵画が並んでいます。
すると、絵の中から、それぞれの絵をモチーフにした踊り子さん達が飛び出してきました。
例えば「真珠の耳飾りの少女」の絵からは、まさに絵のとおり、青色のターバンと黄土色の服、そして真珠の耳飾りを付けた鈴木ミントさんが登場。「ヴィーナスの誕生」からは、貝殻で大切なところを覆っている南まゆさん、「向日葵」からは、向日葵をイメージした黄色い華やかな(まさに向日葵が擬人化したような)衣装を身に付けた秋月穂乃果さんが現れました。
2次元が3次元へと一気に切り替わる演出はとてもワクワクしました。
そして早乙女らぶさんは、モネの「散歩、日傘を差す女」の女性(モネの妻のカミーユ)を演じ、白いワンピースに日傘を差して、絵から現れました。
その可愛らしい顔とどこか懐かしみのある絵のイメージから、早乙女さんはどこか空想じみた雰囲気を漂わせています。
景自体は、ポップな音楽に乗せて、絵から現れた踊り子さん達がカラフルな色合いの衣装でステージいっぱいに踊り回るただただ楽しいものでした。
ステージが終わり、2曲目に入ります。早乙女さんがベッドに移動する際には、純白のワンピースとどこか初夏を感じる音楽とが合わさり、ほわほわと爽やかな夏を泳いでいるような感覚に陥りました。
ベットに入ると、官能的な音楽に乗せ、ワンピースをすらりと脱いでいきますが、その爽やかな空気は変わらずにステージに漂い続けていました。
2景のメインは藤川菜緒さん。タイトルは「岡本太郎」
2景は太陽の塔を背景に、藤川さんとバックダンサーの2人と共に情熱的なステージでした。照明も衣装も「赤色」が印象的で、藤川さんはその四肢をステージいっぱいに広げて踊っていました。今回の公演の中で1番激しい景だったのではないでしょうか。「芸術は爆発だ」という岡本太郎氏の言葉を浅草ロック座風にアレンジして作られた景なのかな?と勝手に想像します。
後ろのバックダンサーとの乱れぬダンスは「すごい!」の一言。藤川さんは「元某所ダンサー」とのことで、ダンス経験があるようです。ぴったり合うダンスを見るのって何で心揺さぶられるんでしょうね。
ベットはステージでの赤色の「爆発」からは一転、青色の「静」へと一気に振れます。照明は暗めの青色となり、激しい感情を内に抑えているような仕草もありました。
何故か2景から、太陽の塔が建てられた大阪万博の時代を生き抜いた1人の女性の動乱に満ちた人生を感じました。
3景のタイトルは「Yoko」メインは「桜庭うれあ」さんです。
「Yoko」はThe Beatlesのジョン・レノンの妻オノ・ヨーコをモチーフにした景です。オノ・ヨーコを桜庭うれあさん、ジョン・レノンを南まゆさんが演じています。2人とも実際にオノ・ヨーコとジョン・レノンの写真にもある、白いスーツとワンピース姿で登場。ヒッピースタイルのバックダンサーが2人を盛り立てます。
この景は当たり前かもしれませんが、The Beatlesのエッセンスが随所に盛り込まれていました。ステージが終わり、ベッドへ移行する合間には、幕間が降り、そこにバックダンサーがラブアンドピースを描くパフォーマンス。そして、オノ・ヨーコの姿が照射されます。
ベッドも個人的には大好きなThe Beatlesの「In My Life」の音楽を背に、桜庭さんからは情緒的なオーラが醸し出されていました。
さて、ベッドの最後の曲は一転、「パワートゥーザピーポー」と力が湧き上がるフレーズで有名な「Power to the People」。今までとのギャップがとても心地よく、心の中で勝手に盛り上がりました。
4景は「忘れえぬ女」メインは小野今日子さん。
一言で言うと、「大人」な景でした。1景から3景に対し、舞台装置も最小限(というかない)で、小野さん含め、バックダンサーの衣装は透けのある黒いワンピース。ステージ曲は「Merry Christmas Mr Lawrence」
小野さんの踊りは曲をなめらかに滑るよつに、ステージに流れていきます。
小野さんの景を見て、ストリップにおいて改めて音楽の存在はとても大きいと感じました。「Merry Christmas Mr Lawrence」のような有名で物憂げな音楽があるからこそ、小野さんの切ない踊りに、よりのめり込む事ができます。
音楽が先か、踊りが先か、テーマが先か、ストリップの振り付け方法をいち観劇者の私には分かりませんが、試行錯誤をしながら音楽の選定を行なっているのではないか、と想像します。
休憩(10分間)は、各踊り子さんによる演目紹介。各景のモチーフとなった絵画やシンボルを踊り子さん達が描きつつ、演目の解説をしていきます。休憩時間も全く退屈しません。
5景は「PWK」メインは秋月穂乃果さん。「PWK」をご存知ですか?どうやら、白い装飾をした車で日本全国を何かの電波と戦いながら廻っていたそうです(かなりうる覚え。間違っている可能性大)。
ダンサーは秋月穂乃果さん、早乙女らぶさん、鈴木ミントさん、桜庭うれあさん。4人ともミラーボールのような銀色の上下。メインの秋月さん以外は、白くキテレツ大百科の勉三さんのようなグルグルメガネを掛けていて、サイケ感がぷんぷんしました。
それにしても秋月さんの眼は、淡々と優しい。景自体は音楽、衣装共にとてもサイケデリックなムードでしたが、秋月さんの眼はどんなものでも来たものは否応なくに包み込む、そんな優しさに溢れていました(この眼は1景の時点で既に印象的でした)。
ベットシーンは、エアリアルリング。リング1つでここまで表現するに至った今までの努力の時間と才能に敬意を示します。本当にすごい。観劇中の私の(もし落ちたらどうしよう…)というのは要らない心配でした。
秋月さんはリングを使い、とても高い位置で踊っていて、私は劇場の奥、丁度真ん中より少し左側で手すりに手を置き、立ち見をしていたのですが、あまりの高さに秋山さんの姿が見切れてしまうほどでした。
「派手!!」というよりも、電気グルーヴの「虹」に調和した丁寧で優美なベッドでした。
6景のメインは鈴木ミントさん。テーマは「麗しのロジーヌ」
麗しのロジーヌは、骸骨を裸の女性が眺めているという絵画です(私もこの公演で知った絵画です)。
絵画を画像検索してみると、女性は少し微笑んでいるような表情をしています。愛おしそうな表情にも見えるし、恨めしそうな表情にも見えます。一体何を思っているのでしょうか。
景は絵画を浅草ロック座流に解釈した構成となっていました。骸骨と鈴木ミントさんが額縁の中にいて、回る盆の上で、艶やかに踊ります。赤い照明に照らされながら、骸骨の横で赤いレースをたなびきかせながら踊る姿は、2人だけの世界で妖しく語り合っているかのようにも、ミントさんだけが骸骨に語りかけているかのようにも見えます。何にせよ、狂気や情念や愛情を含んだ「赤」が劇場を包みました。
ベッドは、額縁から出て盆の上で官能的な踊りを見せます。そして、ステージに戻ると、最後にはまた額縁の中の骸骨の横に戻り、景は幕を閉じます。
1景と絵画→実写という構造は同じでしたが、1景のポップで楽しい雰囲気とは全く異なり、人の強い念のようなものを感じる景でした。一体、骸骨は誰なんでしょうか。
そして7景は南まゆさん。テーマは「ミュシャ」
美術に明るくない私でもなんとなく見たことがある絵画の作家さん「ミュシャ」
ダンサーは、南まゆさん、小野今日子さん、秋月穂乃果さん、早乙女らぶさん、藤川菜緒さん、ダンサーズの2名(すいません、どなたか断定できす・・・)。景はミュシャ作品の天上にいる天女のような世界観(完全に私の感覚)を再現した景でした。
何より、南まゆさんのふんわりとした出で立ちとすごくマッチしたステージでした。昨年観劇した、南まゆさんのエリザベートのクールな姿もすごく良かったですが、こういう可愛らしい景もやっぱり素敵です。
1曲目は、春を感じる軽やかな曲に乗せて、天上での天女たちの戯れ・・・といった感じでまろやかに皆踊っていました(完全に私の中のイメージです)。
私が1番印象に残ったのが、2曲目に入り、盆に乗りベッドへ向かう途中の南まゆさんです。1曲目とガラッと雰囲気が変わり、2曲目は「Florence + The Machine - Rabbit Heart」。ハスキーでグルーヴ感と疾走感に満ちた音楽を背に南まゆさんが、盆の上に座りながらベッドへ移動するシーンは「かっこいい・・・!!」の一言。これを書きながら、このシーンを観るためにもう一度浅草へ行きたいくらいです。威風堂々と座っている姿は、美しもあり、強くもあり、やはりかっこよかったです!
ベッドシーンも、その艷やかな四肢が優雅な音楽に乗ってたゆたう姿はとても綺麗で、照明も南まゆさんを照らすことができて、嬉しそうでした(完全に私のイメージです)。
フィナーレは「Green Muse」葉(?)があしらわれたフリフリの白いワンピース衣装はとても爽やかです。「PAX JAPONICA GROOVE - Starry Flight-」に乗せて、軽やかに舞う踊り子さん、ダンサーズの皆さんを見ていると、本当に浅草ロック座が再開して良かったと感じます。
今までの出演者が勢揃いするのがフィナーレの醍醐味。
さまざまな世界観の各景で主人公を演じた踊り子さんと、主人公たちと一緒にいたダンサーズの皆さんが、最後に同じ場所に立って踊るというのは、各時代の異なる世界を懸命に生きた人たちが現世で巡り合っているかのような「輪廻転生」すら感じます。
とまぁ長々と書きましたが、いやー良かった!!
まだまだストリップを観始めて間もない私ですが、度々ストリップについて今回のような感想をまとめていきたいと思います。