【本編 ep4】家を飛び出した日(後編)
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生まれて初めてのタバコ
全力で後悔したわけだが、不思議と冷静にはなれた。
『翌日仕事に行かなければならない』
何故かそう思い、終電間際の電車に乗った。
朝の満員電車でもなければ、
足取りが重い家路でもない。
電車の中は暖かくて、少しほっとした。
暖かさのせいか、それとも一連の出来事で消耗したのか、いつのまにか寝てしまった。
職場の最寄駅に着き、目が覚めた。
少し眠ったことでさらに冷静になっていた。
とりあえずネットカフェに泊まろう。
その前に明日の着替えが必要だとドンキに向かう。
パンツ、肌着、靴下、ワイシャツを買う。
どういうわけか、値段とかデザインとかをみながら買った。
こんな時でも意外と冷静なんだなと少し驚いた。
そして、こんな時でもお腹が空く。
ショックなことがあると食事も喉を通らないという話を聞くが、これは自分には当てはまらないらしい。
人として大切なものが欠落してるのではないか?
自分を軽蔑しそうになりながらもしっかりラーメンを食べた。
その後は今日の寝床へ。
ここで初めて携帯を手に取る。
元妻、そして両親からLINEと着信が来ていることに気づいた。
両親には話したくないと思い、着信拒否。
LINEもブロックした。
元嫁は子どものことで連絡があったことを考えてブロックせずに、通知をオフにした。
色んなことがあって、寒くて、疲れていた。
その後、少し落ち着いて、お腹も満たされて、安心したのか、すぐに眠ることができた。
翌朝目が覚めるとシャワーを浴び、
昨晩買ったものに着替え、職場に向かった。
いつもより1時間ほど早い出社。
特にやることもなかった私は、誰もいないオフィスでPCを立ち上げ仕事を始めた。
職場では不思議といつも通りだった。
少し先の話だが、この後別居状態が1年以上続くのだが、誰にも気付かれなかった。
厳密にいうと1人を除いて誰にも だが、
それは行動に違和感があったとかではなかったので、普段通り振る舞っていたということになる。
変わったことといえば、誰よりも早く出社し、誰よりも遅く帰るようになったこと。
ネットカフェと職場を往復しているのをみられたくなかったからだ。
仕事をしている時は何故か心が落ち着いた。
遅くまで仕事をしていれば疲れからすぐに眠れた。
とにかくあの現実と向き合いたくなくて、無理やり仕事と向き合った。
幸か不幸かこれがきっかけとなり、
成績が爆上がりし、出世街道を突き進むことになる。
それがわかるのは半年以上先のこと。
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