Slackはコミュニティのナラティブを発掘できるツールだ
おはようございます。
裏山のウグイスが、やっと上手に鳴けるようになってホッとしています。
今日は、コロナ禍で、さらにその勢いを伸ばし続けているSlackについて書いてみようと思います。
①Slack、使ってますか?
コロナ禍でリモートワーク化が進み、Slackはなくてはならない場所になったという方も多いのではないでしょうか。
私にとっては、もはや、なくてはならないツールです。2018年1月から使い始め、使用するワークスペースは二桁に突入しました。
2017年4月からリモートワークに取り組み始め、少しずつ膨らんできたモヤモヤ感は、現在、形を変えて健在しています。この話はまた今度。
私は現在、全域が過疎地域に指定された場所に住んでおり、3才と1才の子どもがいます。1才の子どもの在宅保育を続けながら、いくつかの仕事を組み合わせて働いています。
そんな私にとって、Slackの一部のチャンネルは、オンライン給湯室(喫煙所?)のような役割を持ち始めていて、リアルで顔を合わせる家族やお隣さんとは絶対に話すことのないような話題にも花が咲くのを楽しんでいます。
②正統的周辺参加(Legitimate Peripheral Participation, LPP)
これから話すことは、以下のモデルのうち、Cの状態を指すことが前提となります。
A:すでにコミュニティが存在していた
B:主人公は最近このコミュニティに加入した(新参者)
C:主人公ははじめどうふるまえばよいかわからず、戸惑いながら試行錯誤する(周辺参加)
D:主人公は状況学習を深め、コミュニティから次第に受け入れられ、十全参加をするようになっていく
状況学習は、人工知能研究者のジー ン・レイブと人類学者のエチエンヌ・ウェンガーの書籍, "Situated Learning"(1991)で提唱された考え方です。
ちなみに、私は以前、この状況学習のモデルを使って、国際ボランティア参加者の変化について整理をしたことがあります。
③Slackでは、過去のやり取りが全部蓄積されたナラティブを新参者が辿ることができる
Slackでは、データがプライベートなオンラインプラットフォームで共有できるため、新しいスタッフやリーダーに、メーリングリストを設定したり、過去のメールを送信する必要がありません。また、離職者等をたくさんあるメーリングリストから外す手間もかかりません。
データのやり取りがリアルタイムででき、送信済みのメッセージを編集できるので、送ってしまった誤字だらけのメールにストレスを感じることもありません。
私の感じるSlackの画期的なところは、ナラティブ・過去の文脈が確認できるところです。コミュニティの文化がどのように生まれていったのかを見ることができる稀なツールだと感じています。「こういうつぶやきに、誰が反応して、そこからバズって、拡大して、予算がついたり広く認識されるなどして、プロジェクトになった」というのって、普通はコアに関わっている人が口を開かなければ、闇に葬られる情報です。メール文明の時代に働いていた頃は、過去に上層部がやり取りした内容を、どうしても必要な時だけ請求して、Re:がたくさんついた過去メールを転送してもらう、くらいしか方法がありませんでした。
でも、Slackを使っていることで、チャンネルに入っていさえすれば、過去にどのようなやり取りが行われたのか、今のメンバーのスタンスはどんなものなのか、などを新参者が古参の先輩にメール転送を依頼しなくてもたどることができます。
最近私は、特に自分がどんなナラティブに敏感になっているのかを探ることがありました。それは、コミュニティ内で過去に起きた信念対立と、その時に取られた対処方法であることがわかりました。信念対立が生じた原因がコミュニケーションの齟齬だったのか、方向性の違いだったのか、少しでも判れば、今度は私が誰かを誤って攻撃したり傷つけたりしなくても済むかもしれない。過去のやり取りの文章を見ていくと、慎重に動くべきか、のびのびとできるのかある程度体感することができます。コミュニティに関わっている人同士のやり取りは「関係の質」を判別する材料となります。それで、慎重に動くにしても、どこに琴線があるのか知っておきたかったというのもあって、時間のある時に少しずつナラティブに足を踏み入れていました。このような見解から、膨大なチャットの履歴は、組織の財産としてとらえてよいと感じています。
④過去の幻想に囚われることなかれ
こんな話をしていたら、とてもありがたいフィードバックをいただきました。(多忙にもかかわらず、このような細かなことにも時間を費やしてくださって本当に感謝しています!)
過去にあったやりとりを知れば、誰かを誤って攻撃したり傷つけたりしなくて済む、という考えもひとつだし、逆に、過去のその人やプロジェクトへの思い込みを強化してしまうので、変容後のありのままのその人やプロジェクトの「現在」を見れないというデメリットもあるように思います。
・・・どちらが100%正しいということはないですね。
確かに、過去にとらわれ過ぎてもいけないです。自分が認識しているAさんは、すでにAさんにとっては「過去のAさん」に過ぎないのだから。
あとはマインドセットのところで、「この人ちゃんとしてないな」とか「失礼なやつだな」と見られたくない、という思い込みもあったかもしれません。
おわりに
今日は、私がいかに小心者なのかということを自白する機会となりました。ダニエル・キムの成功循環モデルにおける「関係の質」については、さらに勉強を進めてみたいと思います。
さて、今日も一日が始まりました。きっと暑い日になる予感がします。