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患者・利用者満足度調査をNPS®︎を中心に設計・実施してみました

質のモニタリングの一つとして

 訪問看護にとって質を測るのってどうするんだ?という悩みは訪問看護の管理者や経営者ではよくぶつかることかと思います.医療や介護の質指標,看護の質指標なんて考え始めると壮大な話にも思えますよね.
 最近は医療の質で有名なドナベディアンの「構造(ストラクチャー)」「過程(プロセス)」「結果(アウトカム)」のモデルで考えることが多いと思います.その中でも重要に思える「結果(アウトカム)」は,厚労省や病院評価機構などのWEBページから一般的に以下の3つが多く言及されています.

① 患者・利用者満足度
② 従業員満足度
③ ケアの成果(病院で言えば死亡率や平均在院日数,褥瘡発生率など.ウィルではオマハシステムもここに入りますね)

また,訪問看護ステーションにおける自己評価ガイドラインにも利用者やご家族から直接評価を受ける仕組みを作るように,と推奨されています.

引用:一般社団法人 全国訪問看護事業協会 訪問看護事ステーションにおける業所自己評価のガイドライン https://www.zenhokan.or.jp/wp-content/uploads/h30-1-guide.pdf

 ウィル訪問看護ステーションではコロナ禍以前に利用者満足度調査を行ったことがありましたが,コロナ禍において止めてしまっていたため,定期調査の復活,および前回から更に進化させた形で実施をしました.その内容や結果について共有できたらと思います.

今回のメインテーマ「NPS®︎」を使ってみた

 NPS®︎(ネット・プロモーター・スコア)とは”顧客ロイヤリティ”を測るものとされます.昨今のサービスや品質を測る一つとして顧客満足度より顧客ロイヤリティが重要とも言われており,さまざまな国やさまざまな業種でNPS®︎が使われています.この「他の業種」とも比較ができるという点はこれまでの訪問看護の評価になく良い点だなと関心を持ちました.訪問看護のみならず,介護や福祉,入院医療,飲食,観光,不動産,エンターテイメントなど多様なサービスとも比較して考えることも,これから大事な視点になるのではと思います(もちろん訪問看護事業所間での客観的比較ができない現状をまずは改善すべきというのは重々承知の上で)

ベイン・アンド・カンパニー,機能別プラクティス,顧客・NPS®︎・マーケティング,NPS®︎とはhttps://editor.note.com/notes/n82eb8e2b2632/edit/(2023.4.4Acsess)より図引用

 また,訪問看護や医療・介護にこのスコアは本当に関係あるのか?と思う方もいるかもしれませんが,令和3年度厚生労働省老人保健事業 訪問看護の評価指標の標準化に関する調査研究事業 でもNPS®︎について言及されています.
https://www.jvnf.or.jp/katsudo/kenkyu/2021/kourousyouhoukokusyo.pdf

 私もこの検討委員の一人でしたが,ここで初めてこのスコアについて知りました.その後訪問看護ステーションでも調査していくことが望ましいかもしれない,と考え今回に至りました.

調査概要

 ご利用者様(ご家族様)と,医療機関や居宅介護支援事業所などの取引機関に分けて調査を行いました.また今回は,ウィル訪問看護ステーション江戸川と葛西・小岩・江東・大島サテライトおよび浦和事業所の6店舗での調査でした.
 事業所からの送付や看護師から直接配布を行うと回答にバイアスがかかるため,それらをできるだけ排除する目的に,利用者氏名と回答がケア提供しているスタッフへ伝わらない設計とし,在宅医療に特化したBPOサービスを行っているOkitell365さんに調査設計・配布・集計・分析の一連を委託しました.

結果について

 回収率はいずれも45%を超えました.非常に高い回収率でご協力いただいた皆様には感謝がいっぱいです.

利用者のNPS®︎

 利用者に対するスコアの結果は,「38.2」とかなり高い値でした.いくつか公開されている他業者の参考値に比べても高いことが窺えます.なおNetflixの2022年8月NPS®︎の-2.0と比べると圧勝しました(もちろん規模もサービスも違うので単純比較はできないのですが筆者はNetfilixが大好きなのでつい嬉しくなりました)

取引先のNPS®︎

 居宅介護支援事業所や医療機関などに対する調査スコアの結果は「16.8」と,高い値ではありますが利用者の結果と比べると半分程の結果でした.
なおNPS®︎を顧客満足度調査に利用している在宅医療事業者の先輩に聞くと,利用者・ご家族のスコアと比べ取引事業者のスコアは半分程度に下がることが多いとも聞いたので,そのようなものなのかもしれません.ただしだからといってそれでよいとの先入観はいけませんので継続してモニタリングをして改善を目指すべきだと考えます.

NPS®︎と下位質問項目との関連

NPS®︎のみでなく,さらに下位項目での質問も重ねました.この質問内容は,日本語版のClient Satisfaction Questionnaire 8項目(CSQ-8J)を基本とし立森ら(1999)の文献を参考に訪問看護に適するよう少しアレンジを加え作成しました.また下位項目の質問がNPS®︎との関連から「改善したほうがいいこと維持できたほうがいいこと」を見つけることができました

今後は,1回/年などでの定期実施を行い,「結果(アウトカム)」のうちの一つとして継続的にモニタリングを行いたいと思います.

ウィル訪問看護ステーションでは,質を測るという意味でのアウトカムも大切に訪問看護を実施して参ります,看護やリハビリのアウトカムに興味のある看護師さんやリハビリ職の方がいらっしゃれば,気軽に見学にお越しください.

<参考文献> 立森 久照 , 伊藤 弘人,日本語版Client Satisfaction Questionnaire 8項目版の信頼性および妥当性の検討,精神医学 41巻7号, 1999,pp711-717


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