●In-sect【短歌連作】【詩】
これから何になるの、と聞かれて明日seaになるかもと言う
切符の欠けを手が気にしていて、気にするたびに汽車は出ていく
写真こぞうがあざみを撮るリズムのなかわたしたち無人駅の駅内に居る
それは前景と言えるようだった初夏風の音 君の汗 その馴れ初め
似合わないシャツを着てどこかへ出向く美しいは心の内にある
英語をみんな片仮名に変えて行く心地季節のなかでもう羽化をする
(insect)
TEL越しにすみれ咲くとき地続きになっているのかも私達
夜はレールで運ばれて来るそのときは音になり全てほかの物事
レールの百足は整然としたかおのようまじないのことばにも水かける夜
ありがとうとどういたしましてで織りなして男物のジャンバーがきわだつ
夜もまたひとつサークルとしてえがくあたまの氷へぬくみが溶けだす
だんじょだんじょで白の秘密をさぐりつつこれからの部分がもうこそばゆい
運ぶこともする事も見つけだしてからたった一度の明日に合わせる
誰かのことを友人と呼ぶ集まりでソクラテスはかぎかっこで囲む
風鈴が皆で鳴るとき汗のたまみながまなこをむけるともしび
(violet)
ゴッホが椅子を描いたようなことと言うその日常をうみだすのは願い
あまたの願いを踏みつけている草原できみと会い人として喜ぶ
花とか草に分類される気持ちなら陽を浴びてまた夜にもなった
絵を描き続けるような一日の終わり人が来て描いたものをまた広げさす
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人間にはむかししっぽが生えていたといってもきっとあなたは信じない
けどわたしたちには生えていた
おたまじゃくしが蛙になるように
海からくじらが上がってくるように
目を閉じて見てみればまわりには花が咲き乱れていて
目を開けてみてもそこには誰もいない
けど夢の中身は無秩序だらけで
ニューロンは夜になればあちこちが互いにくっ付いたり離れたりする
ダンスを踊るみたいに
生物の進化論を昼間は学んでみて
そこにどれくらいの希望的観測があるのかを考えさせられる
蜘蛛が消化液を外に吐き世界を飲み込むとき
わたしはお腹の中で世界を育てていて
目を閉じれば外には花が咲き乱れていて
目を開けてみてもそこには誰もいない
けど夜になればニューロンは互いが誰かも知らないままで
くっつき、離れ,そこでダンスを踊っている
わたし達にしっぽが生えていた頃を、覚えては居なくとも
わたしたちはいつもそこでくっつき、
離れ,そこでダンスを踊っている
猿は確実にわたしたちじゃなくとも
わたし達は確実にたった一日で進化を遂げる
ニューロンがそうしたいとかんじるように
クラゲが海水を飲み込んで、太陽を理解しようとするとき
わたしはお腹の中で世界を育てている
あなたはきっとそこにいる
髭が生えていて,しっぽが生えていない
親切心を持ち合わせた無垢なあなた
そこでまだ誰のものでも無い進化の眠りみたいに
手と手を取り合ってダンスを踊っている