赤いYahoo!と緑のLINEの経営統合の影でユニバーサルデザインに取り組んだチームを讃えたい
Yahoo!とLINEの経営統合がいよいよ実現し、ほんの僅かな期間、L社の前身企業に身を置いていたので他人事とも思えず、日本のソフトウェア産業の未来に期待を寄せつつあるのですが、そんな統合記念キャンペーンサイトに、見慣れないリンクがあることにお気づきでしょうか。
これです。リンク先にはこんなページがあります。
赤いヤフーと緑のLINE、どちらも彩度・明度がやや近い色合いで、ある種の色覚異常のある人にとっては見分けにくい色です。先天性色覚異常を持つ人は、日本では男性で約5%、女性で約0.2%の割合と言われていますが、諸外国ではもっと高い割合の国もあり、ユニバーサルデザインを考える上で、色の並べ方は非常に気を配るべきポイントです。今回、(イタリア料理キャンペーンのサイトでも作らない限り)日本ではあまり並べて使わない色のコーポレートカラーの会社が経営統合するにあたり、ピンときたデザインチームがいろいろと配慮を重ねたことが説明されています。私も、前職の上司が一部の色が認知しにくいという方だったので、資料作成で気を使っていたことがありました。
もちろん、IR的な配慮、アピールもあってのことだと思いますが、こういった注目を浴びるキャンペーンで、Web業界全体に、こういったアテンションを出していったことは、とても良いことだと思います。
人が感じる世界は千差万別
色彩感覚については、単に見分けのつきにくさ以外にも、「その色から感じる印象」の文化的な差異もあります。私は防災分野で長く仕事をしてきた中で、聴覚障害者の皆さんに「音声だけでなく文字でも情報伝達をする緊急警報システム」の開発を国の開発補助をいただいて取り組んでいたことがあるのですが、ろう者(先天性の聴覚障害)をお持ちの方に試作品に触れていただくと、「これでは緊急度が伝わらない」と言われたことがありました。
健聴者である私は、サイレン音などとセットで赤い文字を表示していると認識しているので、赤という色に、無意識にサイレンの音を紐付けて認知しています。しかも、文字と同じ内容がかなり切迫したナレーションで流れているので、自然と「切迫した情報である」と認知していたのです。一方、ろう者の方にとっては「赤は赤」だったらしく、当然ナレーションは聞こえていないので、「文字が点滅したり、下線が引かれていたほうが、強調のニュアンスが伝わる」と指摘を受けたのでした。自分のバイアスが排除できていないことを知り、頭を殴られたようなショックを受けました。
ちなみにその後、いろいろとお話を伺ってみたのですが、漫画のオノマトペや、吹き出しの形などが表す強調表現はろう者の方にも伝わるものらしく、最終的には、漫画的な表現を加えつつ、外国人や子共にも配慮して、やさしい日本語を加えるような改善を加えました。オノマトペが音声を超えて伝わるという事実は、マンガ文化について学生時代研究していた私にとって、大変興味深い事実でした。学術の世界に戻ることがいつかあれば、研究してみたいと思っています。
YとLの統合の先にあるもの
私が所属するJX通信社は、テレビ・新聞各社、自治体、民間企業にビッグデータを通じて報道取材のベースともなる速報情報を提供するAIシステムを提供することを事業のひとつとしていますが、そんなマスコミ各社にとっては、今回の経営統合はインターネットにおける報道のゲームチェンジャーであったYahoo!ニュースと、いまやユーザー数では業界2位のポジションにあるLINEニュースの経営主体が合併する、という出来事として写っています。新聞協会は見解を発表(PDF)し、ZHDは「ニュース事業の統合はない」と否定する、という流れになっていますが、このへんのセンシティブな過去の経緯については、こちらの本に歴史がまとまっています。
いずれにせよ、ZHDには、今までにない規模で、日本のインターネットの未来に対する期待と責任が課せられたと感じています。そんな船出のときに、こういったユニバーサルデザインへの配慮を怠らなかったことに敬意を表しつつ、JX通信社のNewsDigestも、つよいデザイナーチームががんばっているので、もり立てていければと思っています。
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自分の仕事(地方自治、防災、AI)について知ってほしい思いで書いているので全部無料にしているのですが、まれに投げ銭してくださる方がいて、支払い下限に達しないのが悲しいので、よかったらコーヒー代おごってください。