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ゲーミフィケーションでインフラ老朽化をどこまで救えるか

JX通信社/WiseVine藤井です。弊社のニュースアプリ「NewsDigest」には、市民からの事件・事故などの目撃情報を投稿いただき、ポイントを付与する仕組みがあるのですが、日本鋳鉄管とWEFの「マンホール聖戦」があまりに有名になって、あちこちで「あー、マンホールみたいなやつですね!」と言われることがあります。

マンホール聖戦ってよくできてますよね

(さすが日本鋳鉄管、noteもやってるんですね)
インフラの老朽化は全国で一斉に起きていて、「なにか起きてから管理者が気づく」状態に陥っています。それを事前に市民の目で点検していく作業を、ゲーム感覚で進めていこうというのが「マンホール聖戦」です。スマホしながら歩いていると(いいことじゃありませんが)目線が下に行くのでマンホールが目に付きますし、よく見てみるといろいろなデザインがあって面白かったり、コンプリート要素もあります。撮影もしやすいですし、この仕組みにピタッとハマっていて感心したものです。

こんどは電柱だ

そんなWEF、こんどは電柱もコンプリートを目指すようです(こちらは日本鋳鉄管とのコラボではなさそう)。

幸い、最近はGIS分野も発達していて、事業者が持っているこういった設備の位置情報を外に引っ張り出してきて、ゲームに組み込むといったことも、思った以上に簡単にできたりします。

コンプリートのモチベーションを設計するためには、予めスポットがマッピングされていることがとても重要なのですが、例えばポケモンGOやピクミンbloomで、ポケストップやビックフラワーの発生場所になっているスポットは、Nianticのヒット作「INGRESS」でユーザーが投稿したスポット情報を下敷きにしています。
INGERSSはかなりマニアックなユーザー向けに作られていて、チームプレイの要素があったので、どこにスポットの設置申請をするか自体が戦略の一部になっていました。私は当時皇居周辺の放送局に務めていたので、皇居の真ん中にあるスポットにどうやってチェックインするか、頭を使ったものです(皇宮警察でもない限りどうやって入るんだと思っていましたが、見学会で無事にチェックインしました)。そのデータを間引きながら、どんどん裾野の広く設計されたゲームに応用していく考え方は、すごく優れているな、と思います。

電柱も、実はよく見ると「電力柱」と「電信柱」があったり、いろんなパターンがあります。さすがに今回は巨大な電柱の全体像を押さえるために、撮影方法を細かく指定していて、どこまでユーザーがついてくるのかわかりませんが、インフラ維持への新しい市民参加の形として定着しうるか、注目していきたいと思います。

NewsDigestの取り組み

JX通信社では、自社のニュースアプリ「NewsDigest」のユーザーから、事件・事故・インフラ破損などの情報投稿を受け付けています。
こちらはコンプリートというよりも、よりリアルタイム性を重視したものです。SNSなどから情報をAIが収集し、リアルタイムに災害情報などを配信している「FASTALERT」の分析・監視基盤を活用して、これらの情報もリアルタイムにニュースとして配信されています。

「FASTALERT」で収集・解析された情報は、Webサービスとして報道機関や自治体、インフラ関連企業などに販売されています。この仕組みを使った市民からの防災情報の収集の推進について、佐賀県武雄市、兵庫県三田市と相次いで協定を(僕ではなく、優秀なチームメンバーたちが準備して)締結しました。

当社の取り組みの肝は、単に収集するだけではなく、NewsDigest上でもユーザーがお互いに見ることができ、防災情報の市民共有サービスとして発展していくところにあります。市役所になんでも情報を送って、という仕組みは、どうしても「市役所への苦情窓口」になりがちです。みなさんが思っている以上に、市役所は人手不足です。予算も正直なところ、潤沢ではありません。市民同士で情報共有できることで解決できることは解決する、そして本当に重要かつ緊急な情報は、効果的に市役所にお届けする、そんな仲介役を当社が果たしていければと思っています。

GIS分野での活用を目指して

「FASTALERT」で収集された災害等の情報は、このようにSNSやNewsDigestからの収集の過程で、緯度経度情報と、発生時刻が付与されています。時間と空間の情報を持っているので、我々はこれを「発災情報時空間ビッグデータ」と呼ぶことにしました。

https://www.gisdata-store.biz/product/fastalert/

このデータをより一層活用していただけるよう、ESRIジャパンと連携して、GISプラットフォーム上でのデータ販売も開始しています。私自身、まだGISツールの利活用は勉強中なところもありますが、ArcGIS Onlineは本当に強力なツールで、ちょっとした分析はオンライン上であっという間にできてしまします。

先日の豪雨災害での静岡周辺の災害目撃情報の一部をArcGIS Onlineの地形図にプロットした例

近日、ESRIジャパンさんと共同ウェビナーを開催して、その活用法についてお話する予定です。ぜひお時間ございましたらご覧いただければ幸いです。

自分の仕事(地方自治、防災、AI)について知ってほしい思いで書いているので全部無料にしているのですが、まれに投げ銭してくださる方がいて、支払い下限に達しないのが悲しいので、よかったらコーヒー代おごってください。