9月の行政書士が注目すべき新聞記事
朝日新聞9月21日(朝)「認知症基本法」までの長い道 当事者や家族の声偏見の壁崩す:65歳以上の高齢者のなかで認知症の人は約443万人、認知症の前段階とされるMCI(軽度認知障害)の人は約559万人、そんな推計(2022年時点)を厚生労働省の研究班が今年5月に示した。合計で1千万人を超え、高齢者の約3.6人に一人だ。認知症はまさに誰もが当事者になりうるものだ。しかしかつて認知症の人は「痴呆」と呼ばれ、「何もわからない」「何もできない」という偏見にさらされてきた。1972年、「恍惚の人」(有吉佐和子著)が刊行され、認知症が進む高齢者と介護の現実に直面する家族を描いた作品は社会に衝撃を与えた。頼れる福祉サービスもほとんどなく孤立する本人、家族。1980年に結成された「呆け老人を抱える家族の会」は社会、政治の理解を求めて声を上げた。転機は2004年京都で開かれた国際アルツハイマー病協会(ADI)の国際会議だった。同年厚労省は「痴呆」をやめ「認知症」に改めた。2005年には認知症に関する正しい知識の普及を目指して認知症サポーターの養成が始まった。2014年には「日本認知症ワーキンググループ」が発足、本人が主体的に課題解決に取り組む動きが始まった。
2017年には再度京都でADI国際会議が開かれ、約200人の認知症の人が参加した。政府は2015年若年性認知症施策の強化など7つの柱を掲げる認知症施策推進総合戦略を公表、2019年には「共生」と「予防」を車の両輪と位置付ける認知症施策推進大綱を決定した。認知症の人を支える条例を独自に制定する自治体も増えてきた。全国初の愛知県大府市の「認知症に対する不安のないまちづくり推進条例」を始め、神戸市、世田谷区など20以上の自治体に条例がある。
こうした歴史を受けて2024年1月に施行されたのが「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」だ。検討は超党派の議員連盟で、議論では認知症の人や家族が参加して意見交換をした。基本法第1条では「認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすことができる」ことを目的に掲げる。「国民の理解の増進」「バリアフリー化の推進」「社会参加の機会確保」など12の基本的施策をあげる。基本法に基づき、9月には認知症施策推進のための基本計画案がとりまとめられた。前文で「国民自身や家族、地域の友人、職場の同僚や顧客など、今や誰もが認知症になり得る」状況を強調、「自分ごと」として考える時代であることを訴えた。そのうえで、「新しい認知症観」に立つ必要性を強調する。それは「認知症になってからも、一人一人が個人としてできること・やりたいことがあり、住み慣れた地域で仲間等とつながりながら、希望をもって自分らしく暮らし続けることができるという考え方」と説明する。重点目標の一つに「国民一人一人が『新しい認知症観』を理解していること」をあげる。
私見:行政書士として、最近任意後見制度について相談を受けているが、本人が認知症になっているかどうかが、法定後見、任意後見を利用する際、判断の基準となる。認知症について理解していると思っていたが「認知症基本法」が本年1月に施行されたことは知らず、自己の認識の浅さについて反省をした。また小生自身が74歳で行政書士の受験をし、75歳で開業をしたので、既に認知症の人になる可能性が高くなっており、他人事ではないと感じる。行政書士は成年後見人に指名されることがあり、受験校で民法の講師が認知症について平気で「呆け」という用語を使用することを聞き、認知症への理解は士業においてもまだまだと感じており、「認知症基本法」は、後見、相続などを仕事とする者にとり理解をするべき法だと強く感じた。
朝日新聞9月28日(朝)日本生まれ強制送還になりうる子8割に在留特別許可
難民認定の申請中でも強制送還できるようにした改正入管難民法施行によって日本で生まれ育ちながら強制送還の対象となりうる子どもたちが少なくとも263人いる。このうち8割に当たる212人に対し出入国在留管理庁は人道的な理由で日本にとどまることができる「在留特別許可」により在留資格を付与した。法改正による特別措置。帰国した子を除く40人の子については、「就学年齢に達していない」(26人)、「親に看過できない事情がある」(14人)として許可しなかった。改正入管法により、難民認定申請中であっても3回目以降の申請者らの送還が可能となったが、日本でしか生活したことのない子どもが送還されることへの懸念が国会審議などで焦点となっていた。昨年8月当時の斎藤法相は「今回限りの措置」として改正法の施行までに日本で生まれ小中高校で教育を受けている子に在留特別許可を認める方針を表明、不法入国など親に「看過できない事情」がある場合は認めないとの考え方を示していた。今回の措置に伴い、親や日本生まれでない兄弟姉妹の計183人にも在留特別許可を認めた。
説明:出入国管理及び難民認定法第50条」は、法務大臣は外国人が退去強制対象者に該当する場合であっても、一から五に該当するときは、外国人からの申請または職権で在留を特別に許可することができる。五は法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき、と規定する。すなわち許可を与えるかどうかは法務大臣の自由裁量にゆだねられており、手続きは、出頭申告、違反調査から始まり在留特別許可あるいは退去強制令書発布により送還となる。
朝日新聞9月28日(朝)「実習生失踪最多9753人ミャンマー急増 資格変更相次ぐ」:昨年1年間に失踪した外国人技能実習生が9753人にのぼり、過去最多だったことがわかった。ミャンマー人の失踪者数が前年の3倍近くに増加した。転籍が認められない実習先からいなくなり、就労先に制限のない在留資格に変更するケースが相次いでいると言い、出入国在留管理庁は運用を厳格化する。入管庁の発表では、23年中に在留していた実習生は約51万人、うち失踪者は1.9%を占める。国籍別ではベトナム(5481人)、ミャンマー(1765人)、中国(816人)の順となる。ベトナム人実習生の失踪者数は高止まりしており、劣悪な労働環境に耐えきれず職場から黙って姿を消す事例が相次いでいる。ミャンマーは前年から約2.9倍に増え、実習生に占める失踪者は5.4%と全体を大きく上回る。入管庁は21年、ミャンマーのクーデターによる政情不安を受け、実習生に限らずミャンマー国籍の人は、在留期限が切れても「特定活動」の資格を得て滞在延長を可能とする措置を認めた。その後ミャンマー人実習生が実習先からいなくなり、「特定活動」の資格を得るケースが増えたという。「特定活動」は就労先に制限がないことが背景にあると入管庁はみている。こうしたことから入管庁は10月以降、特定活動への変更を希望するミャンマー人実習生については、ハラスメントや倒産など実習が続けられない事情があり、実習先の変更も難しい場合に限って変更を認めることにする。
説明:特定活動は出入国管理及び難民認定法の別表第一の五に定められている在留資格で、いずれの在留資格にかかる活動に該当しない活動を行う外国人について、在留を認める場合に「法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動」と定義される。EPAでは看護師候補者など、ワーキングホリデー、インターンシップ、本邦大学卒業生などがある。