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10月の行政書士に関する新聞記事(1)

外国人の不法滞在、外国人の人権、今後さらに士業とのかかわりが深くなるAIと弁護士法とに関する記事があった。他に、奈良県宇陀市の農業委員が議会で認められず、農業委員会が開かれない記事が先月に継続してあった。原因は、行政、議会との確執があるようだが、行政サービスを市民に与えられない責任は大きいと感じる(なおこの問題と行政代執行法については次回に紹介をする)。
朝日新聞10月11日(朝)「不法滞在者集うマンション」「『空き室対策』29人住まわせた疑い、書類送検」:不法滞在者のインドネシア人29人を所有するマンションに住まわせたとして警視庁は10日、不動産会社経営の男性ら2人を入管法違反(不法滞在)の幇助の疑いで書類送検し発表した。経営者は「空き室対策のためにオーバーステイと知りながら住まわせていた」と認めている。警視庁国際犯罪対策課によると、送検容疑は2018年8月から今年7月、茨城県大洗町で所有するマンションに不法滞在のインドネシア人を住まわせ2100万円の家賃収入を得たとみている。捜査関係者によると、摘発されたインドネシア人は短期滞在などで入国し、「大洗に行けば働くところと住むところもあるなどと言われた」と供述しているという。同国出身者とマンションを繋ぐ「ブローカー」に「誰でも住める」と紹介され、短期滞在の資格で住み続けている人もいるとあかす。漁業資源を有する大洗町は水産加工業が盛んな地であるが、高齢化率は30%を超え、日本人従業員数は年々減少し技能実習生を含む外国人に頼っているのが現状。町によると人口約15千人のうち外国人は1千人を超え、その半数はインドネシア人という。町内で水産加工会社を営む男性は、「実習生を数人雇っているが、繁忙期には手が足りない。その時だけ別に外国人を雇っていた」という。ある会社の従業員という男から「外国人を短期で雇ってくれないか」と言われ繁忙期に限って雇っていた。「身元を確認していないからオーバーステイかわからないが、実習生ではない」と打ち明ける。技術実習生は受け入れ機関や人数にも制限があり、住居や渡航費も事業者側の負担となる。男性は「繁忙期のためだけに技術実習生を増やすと経営が成り立たなくなる」と悩む。サツマイモ農家の男性も「大きな農家は繁忙期には人が足りない。短期で雇える外国人を紹介する会社経由で外国人を連れてくると聞く」と語った。人出不足が深刻化する中、労働力として頼りにされている外国人たち。そんな中で今回の摘発で不法滞在者の存在が明らかになった。
私見:行政書士の職域には入管業務が含まれるので、不法滞在の問題は無視できないと感じた。政府は各地で問題となっている人出不足を補うために、国際的に評判の悪い技能実習生を廃止する方向を示した。しかし単純作業をする労働者は入国させないし、水産加工などは留学生が資格外活動許可の範囲でできる作業ではない。ここにこうした問題が発生する素地がある。法務省の不法就労防止のパンフでは、不法就労をさせた場合は「不法就労助長罪」に問われ、3年以下の懲役・300万円以下の罰金を科せられる。そもそも「在留カード」を確認しないことは、過失であり免責されない。すでに技術実習生を入れている企業は、不法就労防止について政府の方針を認識している場合が多いであろう。その上で安易にアルバイトのような形で外国人を雇用しているのは、問題の根が深いと感ずる。
朝日新聞10月9日(朝)私の視点 外国人の権利侵害をなくすためヒューマンライツ実現を:クルド人など外国人へのヘイトスピーチが横行している。今年、外国人の永住権をはく奪できる入管難民法「改悪」法案が国会を通過した。今や司法が外国人の権利を擁護し、国民と外国人が共生できる日本を作ることが求められている。問題は最高裁のマクリーン判決(1978年)にある。在留資格延長を認めた米国人英語教師マクリーン氏の要請を入管が拒否した。理由はベトナム反戦運動に参加した政治活動の故だった。表現の自由など「国民」の権利を保障する規定は外国人の権利を明文で保証していない。最高裁は、国民の権利の保障は外国人にも及ぶとの原則を認めたが、政治活動を理由に在留資格を認めなかった。「(外国人は)煮て食おうと焼いて食おうと自由」(60年代の法務省入国管理局参事官の言葉)という古い考え方は変わらなかった。外国人差別は今も続く。79年に自由権と社会権の国際規約という条約を日本が批准し状況が一変した。憲法で保障される人権のほかに、国際法によって保証される「human rights」を日本が受け入れ二重の権利保障体制ができた。ヒューマンライツは人類の権利だから、国民だけでなく外国人の権利も明文で保障する。憲法98条2項は条約の順守を義務付けている。最高裁はマクリーン判決から脱却し、憲法上の権利だけでなく、条約によるヒューマンライツの補償をすべきだ。また元最高裁判事泉徳治弁護士は、条約違反も上告理由とする民事訴訟法の改正が必要だと力説する。理由は最高裁が条約違反の主張に真剣に向き合う必要が出てくるからだ。全ての条約違反を上告理由とすれば最高裁が忙しくなるので、ヒューマンライツ条約違反に絞ってもよい。その上で権利を侵害された個人が条約機関に直接訴えることができる個人通報権を認め、ユーマンライツ実現のための国内機関を設置する。そうすれば外国人の権利侵害は劇的に減ることが期待できる。
私見:最近youtube shortで川口市のグルド人が無法行為をしており、許せないとの投稿が多くなった。朝日新聞9月3日(朝)の記事で、「切り取り動画あおられた差別」、投稿男性「騒ぎになるとは」との記事があり、川口市長までも脅迫され被害届を出したとある。2015年ドイツのブパタル大学に留学をしていた時、シリアで迫害をされたクルド人が難民としてドイツ政府の支援を受け、大学でドイツ語教育を受けている姿を思い出した。現在そのドイツの旧東ドイツ州の2州で外国人を排斥する党が政権を握ったとのニュースがあった。日本でも経済格差が広がると、こうした排外主義が発生する傾向が現れる現実に驚く。排外主義は日本でも存在するのだ。ドイツでは統合以来旧東ドイツ州では経済状態が依然悪く、旧社会主義国であり門戸が開かれていなかった東ドイツ州では難民への怨嗟が発生した。1990年の東西統合時、東ドイツを訪問した際、[Auslaender raus](外国人は出て行け)と言われたことを思い出す。ITC時代の申し子であるSNSは個人が自由な意見を発表できる貴重なツールだが、市民の人権に対する成熟度がITCの進展と同時に向上するとは限らないし、外国人の不法滞在を利用して儲けるのは、一部の日本人であることは忘れてはならない。
朝日新聞10月7日(朝)「AIで法務分野支援 広がる活用」:ChatGPTなどのAIを活用し企業の法務分野を支援するサービスが広がっている。背景には法令順守の徹底などで業務が増えているのに、人材が足りないことがある。一方サービス内容は従来、弁護士が担っていた業務で、進化するAIに今後仕事を奪われる可能性を心配する人もいる。今法務に強いIT企業が、企業の法務担当者らを支援するサービスを相次いで提供している。法務ITの「リーガルオンテクノロジーズ」は10月中旬ChatGPTを活用して契約書の中身を要約したり、翻訳したりできるサービスを始める。法律相談サイトなどを運営する「弁護士ドットコム」が8月に始めたサービスは法律用語がわからなくても、知りたいことを文書で入力すると裁判の判例や法律書のデータベースから答えを引き出すことができる。こうしたサービスが増えた背景には、事業の国際化や法令順守への対応で法務の仕事が増えていることがある。企業内弁護士でつくる日本組織内弁護士協会渡部理事は、「規制の国際化、複雑化に加え、国際的な緊張の高まりで法務の仕事が爆発的に増えたが、人材不足で人員が増えない。効率化は死活問題」と話す。企業の法務担当者でつくる「経営法友会」が20年に実施したアンケートでは、法務部門の「今後の課題」として最も多くの回答が集まったのは「法務業務の効率化・IT化」だった。複数回答で回答者の49%が同じ回答を選び、5年前の15位、22%から大きく増えた。採用でも即戦力を求める傾向が強まっている。
弁護士法の壁」:弁護士法では弁護士と弁護士法人以外が、報酬を得る目的で法律業務を扱うことを禁じている。AIによる契約書類審査サービスを利用する会社が増え、一昨年法に抵触するのではないかという指摘が相次いだ。そうした中、法務省は昨年8月「違反にならない場合のガイドライン」を公表した。審査対象の契約書に契約者間のトラブルなど「事件性」がない場合には使えるなどと明示した。これに対し弁護士ドットコムの社長はAI活用の広がりに期待を寄せる。「弁護士法は非常に抽象的なので線引きがあいまいだった。ガイドラインでホワイトゾーンが明らかになった。契約書にとどまらず応用ができる」と説明する。リーガルオンテクノロジーズと契約した森・濱田松本法律事務所の飯田弁護士は、「弁護士の仕事はコンピュータにはできないと考えていたが、生成AIで様代わりした。分野によっては若手弁護士レベルになる可能性も感じる」とみる。AIに詳しい松尾弁護士は「AIで弁護士の仕事がなくなることはない。ただし正解があって付加価値が高くない仕事はなくなる」と指摘する。「若手がAIを使って効率的に仕事ができるまでの教育の場をいかに確保するかが課題になる」と話す。
私見:近年ネットでAIによりなくなる仕事として弁護士業務が上がることもあるが、「正解があって付加価値が高くない仕事がなくなる」ということだろう。弁護士の独占業務である「事件性」のある業務は正解が直ちに出るとは限らない。一方行政書士の場合はどうだろうか。相続、後見などは家庭により問題が異なるが、複雑でない場合はAIで代替ができるだろう。入管業務なども簡易であればできるかもしれないが、事実を証明する添付書類が多い場合は、AIが必要書類を示してくれる可能性もある。また外国人の上申書、嘆願書などを翻訳してかつ書類作成はできるかどうか疑問を持つ。しかしAIを排除するのではなく、文書作成などの業務に活用したいものである。

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