【展覧会レポ】 キース・ヘリング展 @ 森アーツセンターギャラリー
なんだか久しぶりになってしまいました。今年も展覧会などたくさんレポしていきたいと思います。よろしくお願い致しますm(_ _)m
2024年最初のレポは、六本木の森アーツセンターギャラリーで開催中の『キース・ヘリング展』です。
◆公式サイト
本展は一部をのぞいて撮影が可能な展覧会となっていますので、撮影した写真共に自分的な見所を紹介していきたいと思います。
キース・ヘリングという人
23年ぶりの国内巡回展となる本展。キース・ヘリングの魅力をたっぷり伝えるものとなっていました。
信念:アートはみんなのために、を基に誰もがアクセスできるアートを目指して地下鉄やストリートに作品を描いていった。
わずか30年余りの彼の人生の中で、約10年間の作家活動を本展を通じて追体験できると思います。個人的には、その人生観がまるでゴッホを彷彿させました。
アートはみんなのために
本展は大きく7つのセクションに分かれている。サブウェイドローイングに始まり、キース・ヘリングの作品主題を順を追って観ていくことができます。
ニューヨークのアートスクールに通ったキース・ヘリングは、限られた場所ではなく、公共の場でのアートを模索しました。そして、人種、階級、性別、職業に関係なく利用する地下鉄に作品を描くことを決めたのです。
サブウェイドローイングとは、空いた広告板に貼られた黒い紙にチョークで描いたもの。身近な作品としてまさに公共のアートを体現化することができました。
キース・ヘリングは、エイズの合併症で亡くなりました。生前、彼は生命のシンボルを題材とすることが多かったように思います。それらは、自らの境遇を作品を通して社会に発信していたようにも感じられます。
アートを通じて、戦争、貧困、人種や同性愛の差別など様々な社会的メッセージを彼は発信してきたのです。まさに時代の先駆を行く彼の姿こそ、現代アートそのもののように感じました。
そして、子どもたちへアートの可能性を伝えていくことも彼の目指した一つの未来でした。
ワークショップなど、現在では当たり前のアート体験の場を様々な人に提供してきたキース・ヘリング。そのひとつに未来を担う子供たちへの取り組みがありました。できるだけシンプルに表現された作風や色合いがそれらを物語っているようです。
ブループリント・ドローイングは、17点の連作でそれぞれを観ていくことで様々な捉え方ができます。現在を未来として描き、未来を現在として描いた彼の集大成のような作品に感じました。
モチーフ:ピラミッドと犬
ここからは個人的な読み取りです。毎回、その作家のモチーフが何だったのかを捉えて展覧会を観るようにしています。キース・ヘリングのそれは、「ピラミッド」と「犬」だと感じました。本展の中で見つけたそれらをいくつかご紹介します。
彼は音楽にも精通し、たくさんのジャケットやライブポスターなども手掛けていました。そういった趣向性のなかで、彼が創り上げた独自の宇宙観のようなものがあって、その投影シンボルがピラミッドのような三角形とそこに集中する人のシルエットだったのかもしれないと私は考えました。
社会的主題を多く取り上げる作品の中で、ピラミッドという上下関係の構造を端的に表す意味合いと、古代から続くシンボルマークとしての不思議なパワー感を同時に投影したかったのかもしれませんね。あくまで個人的な考察ですが、、、。
犬は四足歩行の場合と、写真のような擬人化がされているケースがあります。作家は自分なりの投影モチーフが必ずあると僕は考えていますが、犬はまさにそんな彼が親しみを込めたモチーフだったのかもしれません。擬人化することで、重苦しい社会的主題の作品がどこか滑稽に、愛らしく見える魔法として、アクセントに使ったのかもしれません。
彼の短い生涯の中で、たくさんの作品が残されて今日に至ります。当時では受け入れられなかった作品も現代ではこうして展覧会で多くの人にアートの可能性を伝えていく要となっている、まさに彼が目指したみんなのためのアートになっているのではないでしょうか。
冒頭にも述べましたが、個人的にやはり、ゴッホのような存在感を感じざる得ません。キース・ヘリングも日本が好きで、ぴあの月刊誌の表紙も担当していたほどです。ゴッホも日本が好きで、浮世絵に魅了されていました。
キース・ヘリング展は2月25日まで六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで開催中です。
展覧会を通じて、自分がこれまで知り得てきた様々なアートの知識と体験をこうして集約して考察できることは非常に面白いな、と感じました!今年はこうした視点も加えて、様々な展覧会や美術館に訪れ、レポをしていきたいと思います!
ぜひ皆さんの感じた展覧会の感想なども教えていただけたら幸いです。本年も何卒よろしくお願い致しますm(_ _)m
最後まで読んでいただきありがとうございました。
※一部考察や感想は著者による独自ものです。
※執筆にあたり、解説パネルやチラシ、公式サイトを参照しています。