ありきたりな日常の一コマという短編
-君はいつだってどこかに目を向けてるんだ。
ゆっくりと珈琲を啜りながら心の中でそっと呟いた僕は
もくもくとパソコンに向かって何かを作っている姿を眺めていた。
”少しでもいいから、その視線を僕に向けてくれたらいいのに”
そんなことを思いながらヤキモチしていたっけ。
そして「後もう少しで終わるから」の言葉に何度か踊らされて
信じているのが馬鹿みたいじゃないとか散々愚痴っていた僕に君は苦笑いしながら「ごめんごめん」の言葉で締めくくるのはいつもの光景だった。
でも今はそんなことはない、だって君と共に要られる確約ができたから。
離れていた期間が多かったこともあってか、言いたいことは言っても喧嘩することは滅多に無いし、裏表がない分ストレートに言うからね。
そんなところも僕は嫌いじゃない。
共に歩むことができる幸せはどんなにお金を積んだって買えることはできないとわかっているからこそ、この時間がとても愛おしくて仕方がない。
”それは男女とかGLとかBLだとか、セクシャル関係ないもんね”
そうして音楽聴きながらはたまた自己啓発のYou Tube見つつ、飽きたら君がハマっていたEDMを聞きながら珈琲を飲む。
そんな時間は、僕にとって本当に心地よくて愛おしい。
「よし終わった」
「お疲れ様」
「俺にも珈琲頂戴」
「苦いのが嫌じゃなかったけ」
「別にいいじゃないか、頂戴」
「わかった、用意するよ」
ミルクいる?と言うと同時に後ろから手を回してきた、そして僕の耳元に君の「ありがとう」の声が届いた。
本当にずるいやつ。
でも憎めない。
そんな時間をこれからも大事にしていきたい。
”ありがとう”を込めての一杯の珈琲を君に。
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