ドレッジ史
0.序
本項は、ヴィンテージにおけるドレッジの歴史を通観する。
表記について、次のとおりとする。
バザー=Bazaar of Baghdad
橋=黄泉からの橋/Bridge from Below
セラピー=陰謀団式療法/Cabal Therapy
リターン=戦慄の復活/Dread Return
セルフリアニ=マナを要さず自己をリアニメイトできるクリーチャー
対策対策=ドレッジ側が行う、墓地対策を突破する手段
Taxing=コスト増加(抵抗の宝球/Sphere of Resistance等)
マナレス・ドレッジ=メイン・サイド含め一切マナを用いないドレッジ
ピッチ・ドレッジ=ピッチスペルを起用することによるマナレスドレッジ
マナ・ドレッジ=上記の対義語
0.1.参考文献
themanadrain.com - An Introduction to Dredge
1.着想
バザーはマナ生産力を持たず、ドロー能力も手札1枚を減らしてしまう。考えによっては、最低の土地である。しかしある時、一人のプレイヤーが奇妙な発想に取り憑かれた。「2枚引いて墓地を3枚増やす?合計5枚のアドバンテージだ。最高の土地じゃないか!」こうして、ひとつの奇妙なデッキが誕生した。それは瞬く間に成長し、やがてヴィンテージの全デッキがサイドの半分を割かざるを得ないほどの最強デッキへと成長を遂げていった。
さて次の項で詳しく見ていくが、ドレッジのゲームにおける基本戦略は次のとおり整理できる。
(0).血清の粉末/Serum Powderを介したマリガンでバザーを初手に引く
(1).バザーと発掘のシナジーにより、大量の墓地アドバンテージを得る
(2).セルフリアニを展開する
(3).セラピー等でクリーチャーをサクる
(4).橋からトークンを大量に生成する
(5).リターンでフィニッシャーを展開する
(1)~(2)が「0を1にする」パートだとするならば、(3)をトリガーとする(4)は、さしずめ「1を10にする」パートだ。この時点で、勝利には十分なリソースが揃っているはずである。しかし、相手のトップデック1枚で何が起こるか分からないヴィンテージのこと、勝利を一層加速させ、あるいは相手の反撃の芽を摘む1手があるに越したことはない。それに相当するのが(5)である。
しかしながら、ドレッジが真に異色なのは、その動き方ではない。大多数のデッキが1ゲームごとの勝率向上を目標とするのに対し、ドレッジだけがマッチ単位での勝利を見据えている、その視点こそ異色であるものと考える。具体的にはこうだ。
G1 茶番
G2 相手のサイドからの対策卡を見極めて負ける
G3 G2の情報を基に対策対策を投入して勝つ
ドレッジは、G1での圧倒的勝率を軸として、G2を絶対に取ろうとは考えない。G2を捨て石にしてでもG3で勝ち、2-1での勝利を目指している。このような考え方から、ドレッジにとってのサイドとは単に各マッチアップを改善する補足ではなく、むしろマッチ全体を見据えた大きな戦略の一部であって、それはメイン、特にマナベースとも一体に関連づけるべき存在である。
2.歴史
2.1.2005年 ラヴニカ:黎明
ドレッジは、発掘持ちが収録され、(1)それまでの常識を覆す高効率の墓地肥やしを実現できるようになったラヴニカに端を発する。
早速、遡れる限りで最も古いドレッジを見てみよう。以下、デッキリスト中各卡の役割を番号で表す。
デッキレシピ2.1. 2007/01/06
12 LANDS
4 Bazaar of Baghdad ... (1)
4 City of Brass
3 Gemstone Mine
1 Strip Mine
25 CREATURES
3 Ashen Ghoul ... (2)
4 Golgari Grave-Troll ... (1)
2 Golgari Thug ... (1)
4 Ichorid ... (2)
4 Nether Shadow ... (2)
4 Putrid Imp ... (1)
4 Stinkweed Imp ... (1)
10 INSTANTS and SORC.
2 Ancient Grudge
4 Cabal Therapy ... (3)
4 Unmask
14 OTHER SPELLS
1 Black Lotus
4 Mishra's Bauble ... (1)
1 Mox Jet
4 Serum Powder ... (0)
4 Urza's Bauble ... (1)
SIDEBOARD
1 Ancient Grudge
3 Chain of Vapor
4 Chalice of the Void
4 Leyline of the Void
2 Ray of Revelation
1 Riftstone Portal
この時期は卡槽の不足から、マナレス・ドレッジを組むことは無理で、メインからもマナを消費することを前提とした構築となっている。その一環として、(1)を担う卡に朽ちゆくインプ/Putrid Impが採用されているのも目を引く。
さて(2)を担うのは、灰燼のグール/Ashen Ghoulや冥界の影/Nether Shadow、そしてイチョリッド/Ichoridである。
これらは当時の卡槽としては貴重なセルフリアニメイターであった。性能を見比べてみると、次のようになる。
・灰燼のグール - マナが必要である点が致命的。
・冥界の影 - アップキープ開始時点で3体のクリーチャーを要求すると、条件が厳しい。また、パワーが低い。
・イチョリッド - 蘇生コストが比較的軽く、誘発対応でバザー等により黒クリーチャーを供給するのでも間に合う。ターン終了時に自壊。
この中ではイチョリッドが最も優秀である。なぜなら、蘇生コストが軽いためターン終了時の自壊によるデメリットが小さく、それどころか続く橋の追加により、むしろメリットと捉えられるようになったためだ。他2種はほどなくドレッジを去るが、イチョリッドは今日に至るまで長く使われ続けている。
ここで、冥界の影とイチョリッドの誘発能力について、ルーリング的な所を補足しておこう。まずif節ルールについて再確認する。
603.4. 誘発イベントのすぐ後に条件が記されている...誘発型能力...は、誘発条件の一部として条件が真かどうかをチェックする。条件が真でないなら、能力は誘発しない。また、解決時にも再び条件をチェックし、条件が真でなくなっていた場合、能力は何もしない。これは、対象が適正かどうかのチェックと同じことである。...
要するに、if節ルールで示された条件は誘発するタイミングと解決するタイミング両方で満たされていなければならない。
そのため、冥界の影をセルフリアニするためには、アップキープの開始時点≒ターン開始時点で、その上に3体の死体が必要である。アップキープの開始時点で、上に死体が2体しか積まれていなかったら、冥界の影のif節は誘発自体しない。バザーで死体を積んで滑り込みセーフ、のようなことはできない。一方でイチョリッドの場合、if節ルールでチェックするのは「イチョリッドが墓地にある」ことだけ。黒の死体を追放することは、コストではなく純粋に能力の一部である。したがって、アップキープの開始時点で墓地にある死体がイチョリッド1体のみであったとしても、次の順序によりイチョリッドを蘇生させられる。
1.イチョリッドの能力が誘発する
2.それにスタックしてバザーを起動する
3.黒のクリーチャーを捨てる
4.その死体を追放する
5.イチョリッドを蘇生
デッキの評釈に戻ると、(3)セラピーは搭載されているものの、(4)~(5)にあたるメカニズムは存在しない。セラピーや暴露/Unmaskといったマナ不要の妨害を挟みつつ、(2)をコツコツ繰り返して勝つことになる。現代ドレッジからはおよそかけ離れた低速ぶりであっただろう。
こうして生を受けたドレッジであるが、ラヴニカは同時に最高峰の墓地対策を世に放ったブロックでもあった。
そう虚空の力戦/Leyline of the Voidだ。これは当時メタの中心にあったStaxやDragonコンボといったデッキにも有効であることから、色の合わないデッキでもサイドの常連となった。
2.2.2007年 時のらせん:完成
時のらせんブロックは、ドレッジにとって特に重要なブロックである。このセットは1.着想に掲げた(0)~(5)の6パート中4パートについて新戦力を提供した。それを具体的に見ていこう。
(1).バザーと発掘のシナジーにより、大量の墓地アドバンテージを得る
通りの悪霊/Street Wraithは、マジック初の0マナ即時サイクリングである。1回でも多く発掘を打ちたいドレッジにとっては地味ながら重要な存在だ。上のデッキレシピ2.1.で、1ターンのタイムラグを有するウルザ・ミシュラのガラクタ/Baubleまでフル搭載されていることを見直してみて欲しい。
(2).セルフリアニを展開する
発掘との好相性により自動で召喚されるナルコメーバ/Narcomoebaは、セルフリアニの常識を変えた。それ自身の戦力としては微々たるものだが、時のらせんブロックは、この1/1バニラを強烈なアドバンテージに転換する手段をも提供したのだった。
(4).橋からトークンを大量に生成する
全く新しいメカニズムを提供する卡、黄泉からの橋/Bridge from Belowが収録された。これまたバザーにより直接墓地へ送り込むことができ、セルフリアニ生物をサクることでゾンビトークンを生成する。ドレッジの展開力を飛躍的に縮めた1枚である。
(5).リターンでフィニッシャーを展開する
戦慄の復活/Dread Returnで、この1マナも産まないデッキが全てのクリーチャーへのアクセスを得た。リアニメイトの対象としては、フィニッシャーと多機能卡を合計2~3枚程度投入するのが普通である。中でも王道は、ゾンビトークンをバフしてターン中に勝負をつける能力を持ったクリーチャーだ。
それでは、時のらせんブロックで大幅強化されたドレッジを見てみよう。
デッキレシピ2.2. 2007/06/30
4 LANDS
4 Bazaar of Baghdad ... (1)
28 CREATURES
2 Cephalid Sage
2 Flame-Kin Zealot ... (5)
4 Golgari Grave-Troll ... (1)
4 Golgari Thug ... (1)
4 Ichorid ... (2)
4 Narcomoeba ... (2)
4 Stinkweed Imp ... (1)
4 Street Wraith ... (1)
12 INSTANTS and SORC.
4 Cabal Therapy ... (3)
4 Dread Return ... (5)
4 Unmask
16 OTHER SPELLS
4 Bridge from Below ... (4)
4 Chalice of the Void
4 Leyline of the Void
4 Serum Powder ... (0)
SIDEBOARD
4 Chain of Vapor
4 City of Brass
4 Emerald Charm
3 Gemstone Mine
リターン先として起用している2種類に注目。
炎の血族の盲信者/Flame-Kin Zealotは、速攻付与によりターン中にゲームを決める典型的なフィニッシャーだ。この枠の中でも、パワー修整により決定力の高さは随一であり、今でもしばしば見かける卡である。
一方、セファリッドの賢者/Cephalid Sageはゲームを決める性能は持たないが、バザー起動と同様以上のCIP能力を持ち、墓地を大幅に肥やしてくれる。このような卡を採用することで、ゾンビトークンの頭数が不十分など機が熟していない状況であってもリターンの打ち所を作れることを、ドレッジプレイヤーは早い段階で気づいていた。
この時点で(0)~(5)の戦略を全て行えるようになっており、その結果として、メインデッキではマナレス化を完了している。ドレッジの基本形は時のらせんブロックで完成し、それ以降はupdateが続けられたものと評価している。
2.3.2008年 ローウィン:想起
ローウィン・シャドウムーア・ブロックでは、ドレッジを直接的に強化する卡は登場しなかった。その代わりといっては、ローウィンはメインから4枚入る強力なドレッジ対策卡を提供し、同時にその対策対策をドレッジに恵んだ。
まずドレッジ対策とは、アメジストのとげ/Thorn of Amethystである。この卡について見る前に、Workshopとドレッジのマッチアップについて概観してみよう。
Workshopは、G1でも比較的ドレッジに勝機のあるデッキとして知られている。それは次の理由による。
1.Taxingの有効性 - ドレッジは、0マナで唱えられる呪文を多用することでマナレスの挙動を実現している。ところがWorkshopの繰り出すTaxingは、この前提を崩すことができる。具体的には戦略(3)・(5)を封じることで、相手のゾンビトークン生成を抑え、またリターンによるフィニッシャー召喚も許さない。ドレッジに残された戦略は、戦略(2)セルフリアニクリーチャーを並べてコツコツ殴ること、そしてクリーチャーが死ぬのを待って(4)橋からゾンビトークンを生成することの2つに限られる。
2.自殺 - Workshopはクリーチャーを自殺させる方法が非常に豊富なデッキである(下に列挙)。これはドレッジの橋を取り除くことに大いに寄与する。つまり、戦略(4)へも妨害を仕掛けられる。
・電結の荒廃者/Arcbond Ravagerでサクる
・歩行バリスタ/Walking Ballista、トリスケリオン/Triskelionを自分に射撃
・搭載歩行機械/Hangarback WalkerをX=0で召喚
・銀のゴーレム、カーン/Karn,Silver GolemでMox等をクリーチャー化
・ミシュラの工廠/Mishra's Factoryを起動した上で不毛の大地/Wasteland
とは言え、Workshop側は橋がある状態でドレッジ側のクリーチャーを殺してしまわないよう腫れ物に触るようなプレイを強いられ、ダメージレースの主導権は100%ドレッジ側に存する。橋除外についても発掘のタイミング調整等、被害を最小限にするプレイングは可能である。ここまで頑張ってもイチョリッド/Ichoridの自壊は止めようがなかったりもするので、ドレッジが大幅有利であることには変わりがない。
さてアメジストは1.の基本となる卡であり、抵抗の宝球/Sphere of Resistanceと違って自軍のクリーチャー展開は阻害しない点も魅力でWorkshopの主軸かつドレッジに対する大きな武器となった。
同時収録された想起はアメジストの影響を受けることなく唱えられるメカニズムである。1マナでアーティファクト・エンチャントをそれぞれ除去できる鋳塊かじり/Ingot Chewer、薄れ馬/Wispmareは、ドレッジのサイド、時にはメインに搭載される心強い存在となった。さらに、想起の特性として、橋に反応してゾンビを生んでくれる点も無視できない。
これはドレッジのサイドに現れた初の改革であろう。折角だから、草創期の対策対策を見てみよう。
・酸化/Oxidize - 1マナアーティファクト破壊
・恭しき沈黙/Reverent Silence - ピッチ・エンチャント破壊
・エメラルドの魔除け/Emerald Charm - 1マナエンチャント破壊
いずれも現在は見なくなった卡である。
酸化・エメラルド(バザーを起こせるモードは魅力的だが)については、より受けの広い卡が登場した以上やむを得ない。
恭しき沈黙は今基準で見てもなかなか強力であるが、森を要求することで構築に制限を課す面があった。これが他の除去に代替され、森が不要となったことが、後述の恐血鬼/Bloodghast躍進に繋がる。この事例は、1.で述べたことの実証と言えるだろう。
2.4.2010年 アラーラ~ゼンディカー:マナ化
この2ブロックからは、ドレッジを加速させる新戦力が登場した。
命運縫い/Fatestitcherはメインからマナを求めるものの、墓地から召喚でき、バザーを起こすことで戦略の(1)・(2)・(5)に寄与する存在だ。競合枠となる通りの悪霊あたりと比べても、文字通り桁違いの加速力を誇る。
土地を加えるmotivationを一層高めるのが、恐血鬼/Bloodghastだ。土地を加えることで、その手軽な蘇生能力にアクセスできるようになる。ナルコメーバと違ってパワー2・条件付速攻と自身の戦闘力もなかなか高く、サイド後に素出しして墓地対策しか引けない相手を殴り切ることも期待できる。恐血鬼の採用と同時に、好相性の知られざる楽園/Undiscovered Paradiseがマナベースを担うこととなるが、この現象は、恭しき沈黙のサイド解雇と引き換えに起こったものといえるだろう。
また、次の2枚も重要である。
酸化やエメラルドを1本化した自然の要求/Nature's Claimは非常に高性能であり、長らくサイドの定番中の定番となる。
エメリアの盾、イオナ/Iona, Shield of Emeriaは、相手によっては1枚で勝利できるほどの性能を持つことからリターンの対象として雇用された。
こうした新戦力追加の結果として、ドレッジは一旦完成したマナレス化を撤回し、再びメインから土地(マナ)を用いることで速度を追求する方針となる。基本セット2010による太陽のタイタン/Sun Titan追加により、この傾向は一層強まり、チェインコンボ的様相を呈するまでになる。
その結果、自由な1ターンがあれば勝利に持っていけるほどの爆発力を得たことから、この頃からパーマネント・タイプを問わない対策対策である蒸気の連鎖/Chain of Vaporも(元々使われてはいたが一層)注目されるようになっていく。
もちろん、他のデッキも負けてはいない。ここからはドレッジ対策側の3枚を紹介しよう。
大祖始の遺産/Relic of Progenitus - トーモッドの墓所/Tormod's Cryptを重くした分多機能化した卡だが、タップ能力はドレッジの墓地肥やし速度についていけない(タルモゴイフ/Tarmogoyfや探査対策としては有効)ため、実質的にはトーモッドに2マナ足して1ドローを付けたものと言える。基本的にはその2マナを他の呪文に充てたい場合が多いため、ドレッジ対策として1線級とは言えないものの、無色ゆえ選択肢の少ないWorkshopでは歓迎された。
磁石のゴーレム/Lodestone Golem - Workshopの全盛期を現出した強力極まるクリーチャーである。2.3.で述べたとおり、ドレッジに対して有効なTaxingにパワー5まで付いているのだから弱い筈がない。
貪欲な罠/Ravenous Trap - 手札から打てる貴重な墓地対策である。墓地対策パーマネントが割られやすい時代は、これに頼ることとなる。
2.5.2012年 ミラディン傷跡・イニストラード:苦境
ミラディンの傷跡ブロックでは、ドレッジに入り得る存在として3枚を獲得した。
これらは言わば大器晩成の卡であって、後々重要な役割を果たすこととなるが、登場直後は大きな活躍はなかった。そのため、個別の評は後に譲る。
イニストラード・ブロックでも大きな収穫はなかった一方で、難敵が登場してしまう。
墓掘りの檻/Grafdigger's Cageである。この墓地対策アーティファクトは複数の特徴を持ち、ヴィンテージへの影響も多大なものがある。
まず第一の特徴は、高い汎用性だ。これ1枚でドレッジ・オースを完封でき、その他修繕/Tinker、ヨーグモスの意志/Yawgmoth's Willや瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage等、ピンポイントでの対策にも事欠かない。無色でもあるため、サイドの常連であるばかりか、メインから積み込むデッキさえ珍しくはなかった。
次に、アーティファクトの常在型墓地対策であることも従来にない特徴と言える。檻以前の墓地対策アーティファクトは、トーモッドにせよ遺産にせよ、起動型能力による使い切り型であった。そういった単発の墓地対策に対しては、アーティファクト破壊を仕掛けてみても対応して起動されてしまうためあまり有効ではなく(起動タイミングを強制したとは言えるが)割り切ってプレイングのレベルで対策することが多かった。それゆえ、アーティファクト破壊よりエンチャント破壊が優先された。しかし、檻はそうはいかない。
一方で、墓地を追放するわけではないため、対策としては力戦等に比べれば不徹底な一面もある。例えば探査コストとして墓地を利用することを止めるものではなく、後にドレッジはこの方面から突破口を見出すことになる。
それでは、イニストラード後の苦境を乗り越え、快挙を果たしたBOM6優勝デッキを見てみよう。
デッキレシピ2.5. 2012/05/21
16 LANDS
4 Bazaar of Baghdad ... (1)
4 City of Brass
4 Petrified Field
4 Undiscovered Paradise ... (2)
25 CREATURES
4 Bloodghast ... (2)
4 Golgari Grave-Troll ... (1)
2 Golgari Thug ... (1)
3 Ichorid ... (2)
4 Ingot Chewer ... (4)
4 Narcomoeba ... (2)
4 Stinkweed Imp ... (1)
7 INSTANTS and SORC.
1 Ancient Grudge
4 Cabal Therapy ... (3)
2 Darkblast
12 OTHER SPELLS
4 Bridge from Below ... (4)
4 Leyline of the Void
4 Serum Powder
SIDEBOARD
4 Chain of Vapor
4 Nature's Claim
4 Unmask
3 Wispmare
2010年頃までのスピードを追求していたドレッジと打って変わって、メタゲームの影響を大きく受けたことが見て取れるデッキリストだ。戦略(5).リターンの枠を撤廃してまで鋳塊かじりをメインに4枚投入している。
これとは別に、非常に独特なサイドプランが試みられた時期でもある。それはDark Depthsへのアグレッシブサイドボーディングだ。墓地対策を除去するのではなく、無視する発想は面白く、後にこの発想から生まれた別なアプローチが、ドレッジの一大転回を引き起こすこととなる。
2.6.2015年 ~タルキール:適応
ラヴニカへの回帰ブロック、テーロス・ブロック及び基本セット2014出身でヴィンテージに至った卡は少ないが、影響が小さかったわけではない。2つのクロックパーミッションが誕生する。死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman率いる墓荒らし、秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets及び若き紅蓮術士/Young Pyromancerの築いたUR Delverである。
墓荒らしは、死儀礼ほか漁る軟泥/Scavenging Oozeといったメインからの墓地対策を持つ。といってもバザーのもたらす圧倒的な物量に対して、ターン1~2枚の追放では到底追いつかないのでG1の勝機は0に近いことは他のデッキと変わりないのだが、G2以降は力戦等の定番にこれらがプラスされる事になる。ドレッジとしてはなかなか厄介な相手である。
Delverについては以前記事を書いたのでご一読賜りたい。
このような動向を辿っていたヴィンテージにタルキール・ブロックが現れ、激震する。ドレッジも新卡による前進は僅かなものであったが(後述)、これらの環境の変化に適応するために採用卡を変えていくことになる。
まず2.5.にて保留としていた大修道士、エリシュ・ノーン/Elesh Norn, Grand Cenobiteである。彼女は盲信者枠として投入されるが、速攻付与がない代わりに相手方への全体マイナス修整を行うのが大きな特徴。クリーチャーほぼ全てを死へ追い込む能力は、UR Delverの隆盛と、それに続く僧院の導師/Monastery Mentorの台頭により重宝されるようになる。また、同系でも決定的な役割を演じる。
また、精神的つまづき/Mental Misstepが再発見されたのもこの頃である。。登場直後から檻をはじめとする1マナの脅威への対策としてメイン・サイドにちらほらと見かけた卡であるが、これに新たな役割を見出したプレイヤーがいた。デッキリストを掲載しよう。
デッキレシピ2.6. 2014/7/16
9 LANDS
4 Bazaar of Baghdad ... (1)
1 Library of Alexandria
4 Petrified Field
24 CREATURES
4 Chancellor of the Annex ... (5)
4 Golgari Grave-Troll ... (1)
4 Golgari Thug ... (1)
4 Ichorid ... (2)(*)
4 Narcomoeba ... (2)
4 Stinkweed Imp ... (1)
19 INSTANTS and SORC.
4 Cabal Therapy ... (3)
3 Dread Return ... (5)
4 Force of Will ... (*)
4 Mental Misstep ... (*)
4 Mindbreak Trap ... (*)
8 OTHER SPELLS
4 Bridge from Below ... (4)
4 Serum Powder ... (0)
SIDEBOARD
4 Dark Depths
1 Mana Crypt
1 Riftstone Portal
4 Thespian's Stage
3 Urborg, Tomb of Yawgmoth
2 Vampire Hexmage
確認できる限り、ドレッジにFoWを投入する着想はこれが初である。FoWほか、精神壊しの罠/Mindbreak Trapそして今回のMisstepと、十分な量のピッチカウンターを得たことで誕生した、ピッチ・ドレッジの先駆けといえる。ピッチ・ドレッジとは、その名の通りピッチスペル(ここでは、(*)印を付したカウンター)を駆使して敵の妨害を去ることを目標とする。
2.4.で述べたことの再整理になるが、マナ・ドレッジの発想は次のようなものであり、サイドがメインのマナベースを規定する原則どおりである。
1.メインでマナレスが完成しても、サイド後は対策対策にマナ必要
2.サイド後からは土地が必要
3.土地をサイドに入れるとスペースを圧迫するからメインに入れよう
4.折角土地も入ってることだし、恐血鬼等で高速化しよう
ピッチスペルを導入することで1.を否定すれば、2.以降も不要なものとなる。それゆえにピッチドレッジには恐血鬼等が入らないし、カウンターを手札に保持しなければならない関係で構築・プレイングの両面で爆発力が削がれることになる。
その代償として得られるのは何と言っても安定性だ。マナドレッジについて改めて考えてみると、それがよく分かる。そもそもドレッジには初手に必ずバザーを要求するという非常に高いキープ基準があり、血清の粉末を4枚投入しているのも正にそのためだ。ただでさえ高いキープ基準に加えて、初手+2~3ドローで色マナ土地まで見つけるのは、毎ゲーム期待できることではない。粗く計算してみたところ次のようになった。初手7枚にバザーが含まれる前提で、残り6枚の手札+後攻1ドロー+初回のバザー起動で得られる9枚の中に、12枚搭載した色マナ土地が含まれる確率は、約88.6%。やはり、安心できる数字とは言えないだろう。
さて今回のデッキを見ると、メインは完全なマナレスであり、サイドは2.5.にて紹介したDepthsへの乗り換えプランを採用している。もちろん、暗黒の深部/Dark Depths起動時にはマナを払うことになるが、対策対策にマナを使わない設計であることは間違いない。
そして、(上のデッキでは採用していないが)ギタクシア派の調査/Gitaxian Probeも、ピッチ・ドレッジではブルーカウントを確保する意味合いで採用されるようになる。
この後当分の間、恐血鬼が代表するマナ・ドレッジと、FoWが代表するピッチ・ドレッジは併存、あるいはマナ・ドレッジにFoWを投入した合併といった形が続く。
最後に、この時期の新卡をまとめておく。
グルマグのアンコウ/Gurmag Angler - 探査により1マナまで軽減できるクリーチャーだ。2.5.で軽く触れたとおり、こいつは後に活躍することになるが、今はまだその時ではない。
龍王コラガン/Dragonlord Kolaghan - これも盲信者枠。彼女自身が高い戦闘力を誇ることに加え、速攻付与が常在型能力であるためもみ消し/Stifle等を受け付けない。とはいうものの、もみ消しがそれほど流行していたわけではなく、むしろコラガンをバウンスされると速攻が消えてしまうデメリットのほうが大きい。しばらくテスト的に使われていたが、結局この枠は盲信者やエリシュ・ノーンで十分との結論に至ったようだ。
次に対策卡側である。
安らかなる眠り/Rest in Peace - 究極の墓地対策ではあるが、力戦と変わらない能力であるため、ドレッジ側のサイドプランを大きく左右するものではない。とはいえ、力戦をhardcastできない白系デッキにも積める常在型墓地対策が登場したことの意味は大きい。
封じ込める僧侶/Containment Priest - 統率者2014からの刺客。(2)を止める。これはドレッジがこれまで定番としていた対策対策が通用しない難敵であり、サイドの改革が求められた。具体的には、次の2つだ。
1.2/2クリーチャー - これまでの墓地対策クリーチャーといえば2/2/1のイクスリッドの看取/Yixlid Jailerであり、対策対策としては、発掘を持つことからメインにも入り得る暗黒破/Darkblastで十分だった。しかし、これは殆どの場合僧侶には効かない。このため、蛮族のリング/Barbarian Ringといった2点除去の採用を迫られた。
2.瞬速 - 蒸気の連鎖をはじめとするバウンスが効かない。
当時のメタはWorkshopとメンターの2強であった。WorkshopはTaxing13枚体制、メンターは高打点とカウンターに加えてサイドから上記2種をはじめとする複数の墓地対策を繰り出すデッキであり、ドレッジは不利を強いられる。多彩化した墓地対策に業を煮やし、圧倒的重さ(2マナ)を受容して静寂/Serenityを採用するものまで現れる。
2.7.2019年初頭 ~ラヴニカの献身:転機
ドレッジは2つの要因による上昇を果たす。
1つ目はルール介入だ。2年間で、次のとおりルールの変更が行われた。
・2015年10月 バンクーバーマリガン
・2016年4月 磁石のゴーレム 制限
・2017年4月 噴出、ギタクシア派の調査 制限
・2017年9月 僧院の導師、アメジストのとげ 制限
中でもマリガンについては、この2年後、よりドレッジに有利なロンドン・マリガンが導入されることとなる。ギタクシアが制限されたことは、ピッチ・ドレッジにとって少々の痛手ではあるが、それよりもTier1の2デッキが弱体化した影響の方が大きく、一連の変更はドレッジを利したものと見て間違いない。
2つ目は、2010年以来となる、メインの構造を変えるレベルの卡が加入したことである。
秘蔵の縫合体/Prized Amalgam - 他のクリーチャーに便乗して蘇生する。蘇生がターン終了時であるなど、速度にはやや劣るものの、セルフリアニ界隈では3/3と頼れるサイズである点に特徴がある。また、青いためFoWのコストにもなる。
虚ろな者/Hollow One - バザーで3枚捨てることで0マナとなる。ヴィンテージにおける影響力は甚大であり、ドレッジだけでなくサバイバルの開祖ともなった。墓地対策の方法で彼を止めることは不可能であり、1ターン目から4/4を突きつける動きが可能となった。
グルマグのアンコウ/Gurmag Angler - 2.6.で保留していたが、ここにきてサイドに登壇。初出は2017年8月のことと思われる。当時最も一般的なドレッジ対策であった檻及び僧侶への対策対策として抜擢された存在である。
上記3枚は、冒頭に挙げた戦略の中では(2)セルフリアニ生物に類される卡である。しかし、ナルコメーバや恐血鬼といった先行者はスタッツには恵まれず、それだからこそ(4)ゾンビトークン、さらにその先の(5)リターンに繋げる動きをとっていたのに対し、彼らは3/3~5/5と単独で十分に脅威となるスタッツを有する。これは、「ゾンビを大量に出し、速攻付与の上20点ダメージを与える」ようなコンボ的発想よりも「序盤に召喚して彼らを保持し、殴り切る」といったクロック的発想を惹起し、マナ・ドレッジとピッチ・ドレッジが共存していたドレッジ界隈を後者側に傾ける契機となった。
こうした動向の結果、2018年初頭には、既に大部分のドレッジがメイン・サイドいずれかにはカウンターを投入するようになっていた。その枠を作るために取り除かれたのは、次のような卡である。
・暴露/Unmask
・リターン
・リターンの対象
・土地
もっとも、ピッチカウンターのみに対策対策を一任することは依然として非現実的であったし、何よりアンコウ自体がマナを要求するので、完全なマナレス化には至らず、恐血鬼も現役であった。しかし、マナレス化はもはや時代の趨勢だ。当初はアンコウと仲良くサイド要員であった虚ろな者も、試行錯誤の中で実力が認められていき、次第にメインへ昇格していく。
そして2018年末にはひとつの転回が見て取れる。ピッチカウンターを12枚投入すると共にメインの土地をバザー4枚のみに絞り、マナ生産土地をサイドに落とすドレッジが現れたのだ。確認できた中では、League 5-0のこのデッキが嚆矢である。夏に控える大きな変化を先取りしたかのような現象であった。
デッキレシピ2.7. 2018.12.09
Creatures (26)
1 Ashen Rider ... (5)
1 Elesh Norn, Grand Cenobite ... (5)
4 Golgari Grave-Troll ... (1)
1 Golgari Thug ... (1)
4 Hollow One ... (2)
3 Ichorid ... (2)
4 Narcomoeba ... (2)
4 Prized Amalgam ... (2)
4 Stinkweed Imp ... (1)
Spells (22)
4 Cabal Therapy ... (3)
2 Dread Return ... (5)
4 Force of Will
4 Mental Misstep
4 Mindbreak Trap
4 Ravenous Trap
Artifacts (4)
4 Serum Powder ... (0)
Enchantments (4)
4 Bridge from Below ... (4)
Lands (4)
4 Bazaar of Baghdad ... (1)
Sideboard (15)
2 Cabal Pit
3 Ingot Chewer
4 Mana Confluence
3 Nature's Claim
1 Petrified Field
1 Undiscovered Paradise
1 Wispmare
ここまでドレッジが変質した以上、ドレッジ対策も適応して当然である。檻及び僧侶を見越したクリーチャー布陣の変化を迎え撃つため、トーモッドや貪欲といった追放系対策が再評価された。しかし、虚ろな者は墓地を一切経由していないため、スマートな対策が存在しない。せいぜいアーティファクト除去や単体クリーチャー除去を残しておくか、4/4に撲殺されるより早く勝ち切るか、程度であった。(この微妙な対策のし辛さこそ虚ろな者の真骨頂であろう)
さて2019年に入ると、アゾリウスの造反者、ラヴィニア/Lavinia, Azorius Renegadeが現れ、トップメタの逆説をはじめとする多くのデッキにメインから採用される。
これはドレッジに対しても若干の対策となる。特に、これまで適当な解がなかった虚ろな者を受けられる点は評価できる。しかしながら、セルフリアニの蘇生やゾンビの発生に対しては抑止力とならないことから、他のドレッジ対策を補完する存在といえる。
2.8.現代 ~エルドレイン:完成
2019年5月:灯争大戦はヴィンテージを猛烈に揺るがした。ドレッジへの直接な影響は特に無かったが、4月までとの大きな違いとして、ピッチカウンターに追われて一時姿を消していた暴露の再登用が見られる。Taxingを仕掛けつつ、大いなる創造者、カーン/Karn, the Great Creatorを展開するKarn Shopsに対し、カウンターで対抗するのは分が悪いと判断しての構築と思われる。これによって、マナレス化はさらに進み、最終的にはサイドはこんな感じになっていった。
5 対策パーマネント対策(自然の要求、蒸気の連鎖等)
6 土地(マナの合流点/Mana Confluence等)
4 虚空の力戦
どう見ても歪な構成だ。何とか、パーマネント対策部分をピッチスペルにできれば...そんな折、灯争大戦からわずか1ヶ月後の2019年6月:モダンホライゾンには驚くべき卡が収録されていた。
活性の力/Force of Vigorは、ドレッジのマナレス化を完成させる最後のピースだ。最後に残った対策パーマネント対策をFoVに置換することで、ドレッジはマナというメカニズムからの完全な脱却を遂げたのだった=登場直後のデッキ。
また青の否定の力/Force of Negationも非常に強力であり、既存のピッチカウンターの中で最も命中しにくい精神壊しの罠を一部削って4枚採用された。これにより、ドレッジの擁するカウンターは14~16枚と、フルパーミッションに引けを取らない武装ぶりとなった。
さらに翌月の2019年7月にはロンドン・マリガンが正式に導入され、一層圧倒的となった力に酔い痴れるドレッジであったが、その時はやってきた。
ヴィンテージ
《大いなる創造者、カーン》 制限
《神秘の炉》 制限
《精神的つまづき》 制限
《ゴルガリの墓トロール》 制限
《Fastbond》 制限解除
【説明】
《Bazaar of Baghdad》を本拠地とする「ドレッジ」デッキは、ロンドン・マリガンと最近の《活性の力》のような相手の墓地対策に対抗するカードの追加によりさらに強力になりました。これらのデッキを低速化し、やり取りをする時間を増やすために、《ゴルガリの墓トロール》を制限します。
《精神的つまづき》は、...[中略]...さらに、「ドレッジ」デッキは自分の墓地エンジンをを守るためや相手を妨害するために《精神的つまづき》をよく使います。我々は《精神的つまづき》の制限がデッキ構築の多様性を広げ、やり取りをするデッキの「Shops」に対する相性を強化し、「ドレッジ」を弱くすると確信しています。
ドレッジを規制した初めての制限改訂であった。とりわけ、ゴルガリの墓トロール/Golgari Grave-Trollは当然としても、Misstepの制限理由にまでドレッジの名が挙がるあたり、ウィザーズの懸念の深さが伝わってくる説明と言えよう。
こうしてドレッジは弱体化を余儀なくされ、また制限された2種の穴埋めを探さなければならなくなった。それは結局次のような結論となった。
墓トロール →
・ゴルガリの凶漢/Golgari Thug
・よろめく殻/Shambling Shell
・蘇る死滅都市、ホガーク/Hogaak, Arisen Necropolis
凶漢については、元々採用されていた卡の枚数を増やしたもので、特に驚きはない。殻は発掘数が小さいものの、黒かつ緑であることが大きな利点。必要に応じて発掘し、FoV・イチョリッド・不快な群れ/Sickening Shoal等のコストに充てることが可能である。もっとも、こうした機能を目当てに、墓トロール制限前から起用されはじめていた卡なので、「穴埋め」と称するのは厳密には誤りかもしれない。
一方のホガークは新顔である。モダンで大暴れして上の8/26改訂で禁止された剛の者であるが、ヴィンテージでは100%の実力を発揮できないようだ。なぜなら、モダンにてタッグを組んだ復讐蔦/Vengevineや狂気の祭壇/Altar of Dementiaといった卡は、ヴィンテージ・ドレッジには存在しないからだ。
Misstep→
・暴露
・ギタクシア派の調査
B/R改訂で最も得したのは逆説である。こうしたメタゲームも鑑みれば、同じカウンターのカテゴリに属し、コンボに強い精神壊しの罠にもう一度お呼びがかかってもおかしくなかったのだが、案外そうはならなかった。実際には、暴露の増量、そしてブルーカウントを確保し、発掘の機会も増やしてくれるギタクシアが再登用された。
こうして、今日我々がよく知るドレッジが出来上がった。最後に、直近の5-0デッキを貼ってみよう。
デッキレシピ2.8. 2019.12.15
Creatures (31)
1 Ashen Rider ... (5)
1 Elesh Norn, Grand Cenobite ... (5)
1 Golgari Grave-Troll ... (1)
4 Golgari Thug ... (1)
4 Hollow One ... (2)
3 Ichorid ... (2)
4 Narcomoeba ... (2)
4 Prized Amalgam ... (2)
4 Shambling Shell ... (1)
4 Stinkweed Imp ... (1)
1 Street Wraith ... (1)
Spells (17)
4 Cabal Therapy
3 Dread Return ... (5)
1 Gitaxian Probe ... (1)
4 Unmask
4 Force of Will
1 Mental Misstep
Artifacts (4)
4 Serum Powder ... (0)
Enchantments (4)
4 Bridge from Below ... (4)
Lands (4)
4 Bazaar of Baghdad ... (1)
Sideboard (15)
4 Force of Vigor
3 Leyline of Sanctity
4 Leyline of the Void
2 Ravenous Trap
2 Sickening Shoal
3.ドレッジの未来
このような概観を通して痛感するのは、ドレッジは非常に自由なデッキということだ。元々がウィザーズの想定を全く外れた、バグのような存在であるので無理もないのだが、それだけにドレッジ愛好家には、デッキを自分で作り上げて磨こうとの気骨あるプレイヤーが多いようにお見受けする。
となれば、今のドレッジが完成形とは限らず、大胆で自由な発想によって、さらに進化したドレッジが誕生する可能性は大いにある。
そういった可能性の一例として、むかしむかし/Once Upon a Timeが挙げられる。
最初の1回が無料であることから、これをキープ基準の引き下げに利用し、2枚目以降もFoV等のピッチコストとして消化できる、というものだ。既に実践しているプレイヤーもいるが、この企てが成功するかは未知数だ。だが、もし成功すれば、ドレッジ創生以来15年で初の、戦略(0)を補強する卡が登場したことになる。
またドレッジは、その独特極まるリストとムーヴから、アンフェアの極地のような見方をされやすいデッキでもある。実際そういう性質もあるのだが、より詳しく見ていくと、マッチを単位としてメイン・サイドを作り上げる考え方から、メタゲームレベルでの相互対話を緻密に行う一面も垣間見られる。このようなデッキを引き続き観察することは、ヴィンテージの理解を深める上で大いに役立つことだろう。