世界初オンライン宿泊で話題のゲストハウスに実際に泊まってみた
JR那智勝浦駅前にオープンしたゲストハウス「WhyKumano Hostel & Café Bar」は昨春、新聞会の新歓としてオンライン宿泊を体験したが、今回、ここにオフラインで泊まらせてもらった。オーナーのゴロさんは、私たちのことを覚えてくれていた。オンライン宿泊ではゲストハウスのソフト面、つまりサービスについてはその質をしっかり体験できたが、オフラインなので建物の造りや部屋の内装などのハード面にも注目した。
駅を降りると本当に目の前にあり、事前に言われていた通り近過ぎて迷いかけたほどだ。玄関のドアを開け、二階にあるフロント兼ラウンジへ向かう。中央の大きい机に六席と窓側に四席あり、程好い距離感が保たれていてお互いに話しかけやすい。私たちのところには二人の男性がやってきた。共に常連さんのようで、パソコンで作業をしながら談笑を楽しんだ。
このゲストハウスで一番驚いたことは、そのアットホームな雰囲気だ。家族でも友達でもない者同士、初対面でもすぐに打ち解けられる。誰でも分け隔てなく、話の輪の中に迎え入れてくれる温かく和やかな空気が流れている。ここは那智勝浦をはじめとした紀南で活躍する人たちの交流拠点のような場所でもあり、その気になればユニークな活動に取り組む人たちとも顔見知りになれそうだ。
寝室は三階にある。オンライン宿泊のチェックアウトの際に映像では見てはいたが、実際に訪れると想像以上の落ち着いた雰囲気に目を見張った。熊野古道をイメージしたという中央の通路の両側に木目のベッドが二段ずつ並び、足元はほのかに照らされている。カーテンを開け自分のスペースに入ると、内部は思ったよりも広さがあった。両手を横に伸ばしてもまだ余裕があり、ゆっくりくつろげる。照明は六角形の枠に入った電球が一つだけで、壁側にある小さな小窓から夜空が見える。一人だけの空間で柔らかい明りに包まれながら今日の旅を振り返り、このやすらぎのひと時がずっと続くことを願った。
翌朝、ゴロさんは「また来てね、行ってらっしゃい」と私たちを送り出してくれた。その笑顔は画面上で見た時よりもずっと優しく柔らかく、心が通じ合う気がした。透き通るような清冽な空気の流れる駅のホームで、胸に残る思い出の断片が私を温め続けた。