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新宮夜行「はやたま」を辿って

「毎日深夜、新大阪を出発して一路『南紀』新宮を、目指す夜行快速列車がある。」

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 そんな書き出しで始まるブログに出会ったのは去年の夏のこと。それは21年前の夏に書かれていた。消えゆく夜行列車へのノスタルジーを抱えて眺めていたTwitter。偶然、「かつて新宮行きの夜行快速列車があった」という情報を目にしインターネットで検索、このブログに行きあたった。

 まさか繋がるまい。そう思いつつも、記載されていたメールアドレスに連絡してみた。
 

 果たして連絡は返ってきた。「当時を思い出して感慨に耽っております。」画面の向こうで照れくさそうに笑う青年の顔がよぎる。

 ちょうど大学生くらいの年頃に乗車した「はやたま」という夜行快速列車で、熊野速玉大社が命名の由来だという。「区間区間で車内・車窓の様子がガラリと変わる列車だった」と当時乗車した際の思い出を語ってくれた。

 「阪和線内の激混みの車内がどんどん空いてきて気が付いたら、朝日を浴びて海沿いのローカル線をノンビリ走っていて」……。快速列車としての運行であり、通勤客も乗り込んでくるからこその車内風景だろう。

 紀勢線に入り、日の光を浴びて海岸線を走る深緑と橙の車両が目に浮かぶ。「何か夢の続きを見ているような朝を迎える夜行列車は稀ですし、未だに夢に出てくることも有ります。」

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 当初は新宮夜行と紀勢本線ローカルに使われていた165系急行電車目当てに和歌山を訪れていた彼だが、窓から見た紀勢本線独特の海岸線に魅入られたという。しかし、当時の車両は2002年3月で引退した。

 同じ系統の169系という急行系電車も2013年に姿を消し、現在長野県坂城町で保存されている。彼は今、その車両の保存会会員だ。この新大阪を出発して新宮を目指す列車は、釣り客をターゲットとしていた。早朝に紀伊半島南端部に到着するため、高速道路もない時代には格好の交通手段だったのだろう。

三輪崎~新宮_その3

 昨年の12月、今年の夏に京都と新宮を結ぶ夜行列車「WEST EXPRESS 銀河」が期間限定で運行すると発表された。阪和線の雑踏から紀勢線の静寂へと移り変わる当時の雰囲気は味わえないだろうが、あの朝日の海岸線を疾走する変わらない風景を見られるだろうか。「夏の銀河」を見に旅に出たくなってきた。

新宮駅_キハ58と並び

写真・情報提供:佐藤雅⼈さん

参考URL:http://www.interq.or.jp/green/mst/tetyu/singu/no003.htm

「はやたま」を愛した全ての人に捧げる

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