最終出社日から1ヶ月。
はて、うちは何階だっけ。
あぁもううちじゃないんだ。
そんな自問自答をしながらエレベーターに乗り込む。
指先が覚えたように階数を押した。
我が物顔でエレベーターから降りると、懐かしい匂いがした。
少し前までここに来るのが当たり前だった。
最終出社日すら名残惜しいとは思わなかったその景色に胸がうずいた。
誰かに会えないかと思うけれど、多忙な時期、定時過ぎにエレベーターホールへと来る社員はいない。
受付へ向かい、来客として対応する。
「昨日付で退職した鷲尾ですが、保険証の返却に参りました」
「あ、少々お待ち下さい」
総務人事の名前が思い出せなかったことは秘密。
一瞬、固く閉ざされた分厚い扉の向こうで働く社員たちが見たいと思った。
見慣れた人事の人が出てくる。
「わざわざありがとうございます」
「いえいえ」
辞めたんだ、私は。
この会社に入るとき、一生この会社で働こうと決意して、
でもその気持ちが壊されるようなことが色々起きて、
心身ともに疲弊して、
「限界です」と伝えて辞めた。
悔いはないじゃないか。
知り合いに会えないかと思ってエレベーターホールに立ち尽くしたけれど、誰も現れなかった。
退職した。
その後、現職のマーケ部飲み会があった。
前職の職場の近辺で飲み会をやる奇跡。
部長が面白い人で、楽しくてケラケラ笑った。
私、充実してます。
前職よりも、今が充実しています。
宜しければ、私の推し(担当案件)の
カイタクをよろしくお願いします。
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