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SS 第37回定例会の議題は、餃子につけるタレの皿に、醤油を先に入れるか、ラー油を先に入れるかという問題だった。これで3回目だ。 #ストーリーの種

今日は過去世界の議題についての会議だ、古代人類研究家の俺はパンフを持って教室に入る。第37回定例会の議題は、餃子につけるタレの皿に、醤油を先に入れるか、ラー油を先に入れるかという問題だった。これで3回目だ。

この問題で紛糾している理由は、今の世界に餃子と醤油とラー油が存在してない事も関係する。味については、タレは混ざるので同じと言う意見が大半をしめているが、少数ながら先に入れる事で味も変わる派も居る。

「ですから醤油とラー油を混ざっている状態の調味料が何故?無いのですか?」A研究員は、混ざるのは自明ならば混ざった調味料が存在すると主張している。「市販の餃子専用のタレも資料にありますよ?」B研究員は、後から混ぜる派だ。

A研究員は目をつり上げると「ならば飲食店に醤油とラー油が別に置かれている理由を説明しなさい」彼女は手元の資料を机に叩きつける。C研究員は「それは醤油のみ、ラー油のみで食べる人が居るからでしょう」彼は穏健派だ、急進派とは異なり別々に調味料が存在しても問題なしと考えている。

A研究員は「飲食店に多数の調味料が用意されているのは不自然で不経済です」彼女は混ぜる理由があるから別々だと固定化意念がある。後から混ぜても俺はかまわないと思う。俺は席に座ると発言をするために手を上げた。「まだ話が終わってません」A研究員は怒鳴る。各席のみんなが我先に手を上げると持論を展開しはじめた「醤油を底にして油を浮かすのが正しい」「どうせ混ぜるのだから同じだ」見ていると胸ぐらをつかんでケンカする奴までいる。

議長が声を上げた「静粛に D教授から新しい報告があります」名指しで俺が呼ばれると用意された資料を各自の端末経由で見られるように共有ファイルに置く。「えー、新しいデータとして調味料の種類は酢、ポン酢、ゆず胡椒、味噌ダレの確認が出来ました」俺は淡々と報告をする。

「後はカラシも少数ながらあるようです」俺が報告すると会議場は怒号と怨嗟の声で荒れた。「カラシはシュウマイだろうが」「味噌ダレってなんだよ、餃子に味噌つけるなよ」A研究員が俺の所に来ると「ポン酢は絶対に無い」と俺を罵る。でも俺は彼女の真剣なまなざしに惚れた。

会議が終わると彼女を誘う。「なに?まだ議論したいの?」やる気まんまんだ。俺は彼女と人工肉を食べながら提案をした。「俺はこの肉で餃子を作りたい」彼女も納得をした。当然だ、研究員として自分で味を確かめるのは重要だ。

数々の困難を排して我々は餃子と調味料を用意できた。試食会では醤油派が多数を占めて、結論として好きに食べて問題なしとなる。A研究員は俺と結婚をすると「次の議題は、餃子&ラーメン&チャーハン定食よ」と嬉しそうに報告をした。俺は脂肪肝になるだろうなと、彼女と笑う。しかし水餃子派が第四回目を狙っていた。

終わり


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