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SS 肋骨貸す魔法 #毎週ショートショートnoteの応募用
「肋骨を貸す魔法よ」
薄い布団で寝てる少女は、腕をあげて俺の頭を抱きかかえた。俺は頭をあずけながら長い眠りにつく。
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(こんなところで何をしているんだろう)
昼下がりに夜勤から帰って来た俺はアパートの二階に座っている少女を横目で見ながら通り過ぎる。
(放置子かな……)
親に見捨てられた子供、食事を与えない場合も多い。貧困が深刻になり目立つようになる。
「ねぇ、おにいちゃん、何か食べたい」
(やっぱりか……)
俺はコンビニで買ってきたばかりの菓子パンを少女に与える、むしゃむしゃ食べている少女にペットボトルのお茶も飲ませた。
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俺が帰ってくるといつも少女が座っている。いつしか部屋に入れて食事を出すようになる。
「おかあさんは?」
「いないよ」
「おとうさんは?」
「しらない」
このアパートの住人の子供だろうと思うが、少女を連れ込んでいる状態では下手すると警察沙汰だ。
誰に相談すべきかも判らない。悩んでいると少女は笑って「心配ないよ」と慰める。
今日も部屋に戻ると当然のように少女が座っている。
「疲れているの?」
「夜勤はきつい」
「なら抱っこしてあげる」
「え?」
少女が敷きっぱなしの布団で手招きしている。俺はおずおずと近寄ると腕を上げて俺の頭をやさしくぎゅっとする。
「おやすみ」
「おやすみ」
俺は小さく丸くなって彼女の横で眠る。俺は幸せだ。
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「家賃を滞納しているから開けてみると夜逃げです」
「行方不明ですかね」
大家と不動産屋が男の荷物を片付ける。
アパートの庭で、母猫が子猫をくわえてそっと歩き出す。彼女は失った子供を探していた、この男なら立派なオスになりそう。
笑っている彼女の目は満足そうだ。
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