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異世界転移したら生け贄にされそうで大変です!#15(終) 窓辺の少女番外編

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あらすじ
魔女の姫はにえとして扱われていた。ケイイチ達に囚われたカナエを助けるために私は行動を開始する。

愛優あゆに頼む。
「カナエを助けられる?敵兵を撤退させて欲しいの」
愛優あゆは素直に私の言うことを聞くと犬神と八夜狐やよきつねに命令をした。
「退治して!」

ざっくりすぎる。犬神は満面の笑みを浮かべる。私達は敵兵の居場所を橙狐だいだいキツネの千里眼で確認する。突撃開始だ。まだ敵兵の少ない時を狙う。

……大群が来ていた。学校の校庭に一年から三年まで並んでいるくらいの敵が魔女の城に進軍する。犬神が巨大な姿に変身した。肩の高さが人の二倍はある。見上げるような姿は動物園で見たゾウ並にでかい。

犬神は猛然と突っ込むと敵兵を食い散らかす。先陣が瓦解すると、八夜狐やよきつねは、舞はじめた。
くはやく 希有な大波勇ましく 波しぶき見て 舞い踊る」
詠み上げると叫んだ。

しるしを捧げよ!」
水平の空気の流れが敵兵を襲う。見る間に首が切り取られる。まるで上からつまんでもぎ取るように飛び上がる。血をまき散らしながら胴体が将棋倒しになる。

私はあわてて愛優あゆの目を塞ぐ。教育によろしくない。トラウマレベルだ。数分もしないで大軍が消滅する。橙狐だいだいキツネが布を取り出すと、愛優あゆの目に巻いた。愛優あゆの手を引きながら、カナエを探す。

橙狐だいだいキツネが誘導する。大きな木の檻の中にカナエがさみしそうに座っていた。既に敵兵は逃げ出している。私を見ると顔が明るくなると同時に怒りの目を向けた。

「カナエ、大丈夫?」
「遅い」

犬神がおりを破壊する。私はカナエを助ける。私に抱きつく。少し震えているカナエは、こちらの世界ではかなり幼いのか年下に見える。

「後で借りは返すわ」
こちらのカナエはかなり素直で感情は豊かだ。私に腕を絡めながら安心している。

木陰からケイイチが顔を出した。彼は犬神にびびって近づかない。敵兵に置き去りにされていた。

「おお、お前ら何をした。」
動揺を隠せないし味方になる隣国の兵士も居ない。彼はこちらの世界でどう処刑されるのか予想はできるが、さすがに同情はしない。

「自国に戻って処罰を受けなさい」
私は静かにつぶやく。ケイイチは逃げ出す。森の奥に走り去る姿を見たのが最後だ。

しばらくすると、タケオが自国の兵を引き連れて魔女の城に到着する。マイコ姫も居た。魔女達と和解と同盟を誓う。マイコとカナエの儀式があるらしい。私は想像しない事にした。恥ずかしい……

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「この水晶は一時的にしか使えません」
銀色の鎧を着たタケオが私に説明してくれる。ケイイチが持ち出した透明な玉は、魔力を抑制はできる。しかし範囲が狭い。至近距離でしか通用しない。長く魔力を抑制していると壊れる。欠陥品だ。

「昔からある魔女よけを大きく加工してます」
将来的にどうなるか判らないが、魔女達は危険と判断して鉱山の破壊している。怖い。

「お別れね」
カナエが近寄る。私が最初に呼び出された土地で魔方陣を展開した。

「何かあったら私に助けを求めてね。必ず行くわ」
名残惜しそうに見守られながら私は元の世界に転移してもらう。

「……またいつかね……」
カナエが笑っている。この国のカナエは幸せだ。

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「玲子、大丈夫か?」
天之宮武雄あまのみやたけおが私を抱いていた。私の体に腕を回して支えてくれる。完全に密着だ。状況を把握するまで、その姿勢を維持する。暖かい武雄の体で安心感を楽しむ。愛優あゆが私と武雄の体に割り込んだ。

「だめよ、お兄ちゃんは私と住むの」

かわいい嫉妬する妹も抱きしめる。元の世界に戻る私は笑い出していた。

終わり


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