SS ツノがある東館 【一行目で惹きつける】#毎週ショートショートnoteの応募用
大腿骨が白く透き通るように美しい。彼女は口の端を曲げて笑う。
「ありがとうな」
xxx
東館にはツノがある、物理的に出ているツノだ。
「このツノを外したいんですね?」
「隣が高層マンションになるので……」
その建物は江戸時代から残っていた蔵だ。もう白くもない漆喰は傷みが激しく、ひび割れている。
『鬼蔵』
近所では有名なツノが生えている蔵だ。鬼瓦でびっしりと装飾されている奇怪な蔵は、遺言で取り壊すな、と厳命されていた。
「費用は?」
「こちらで払うので無料です」
ハリセンボンのようにツノがニョキニョキと生えている。工事中にそこに落ちると危ないからと撤去を頼まれた。業者に頼んで取り替えると見違えるように、すっきりと……
西の蔵の扉がゆっくりと開く、開かずの蔵だったのに中から開く。出てきたのは、素肌の……鬼女だ。口は耳まで裂けた顔は、美しいが凶悪にしか見えない。体の大半がまだ、白骨だったが筋肉が生まれ、皮膚が生まれ全身をおおう。
「反魂の術に成功したわ」
東館の鬼瓦は、西館を封印してた呪具だ!
「お前が命令したのか」
豊満な体をゆらしながら美しい鬼女が近寄ると、俺に口づけする。
「なにか礼をしてやろう、望みを言え!」
それからは、鬼女は俺の妻として一緒に住んでいる。俺の奥様は鬼女だ。とても幸せな毎日で、夢のよう……
xxx
ぐしゃりと夢を見ている男の頭を踏みつぶして、封印された家から鬼女は歩き出す。世界の終わりの始まりだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?