【怪談】 公園の風船 【#虎吉の毎月note参加作品】
春の風がまだ冷たいが、桜の季節……
「もう四月なのに……」
暗い公園を通り抜けようとしたが、何か潜んでいるようで怖い。でも桜を見たい気分で、大丈夫だと自分に言いきかせる。
「夜桜だぁ!」
街灯の光は、桜のピンク色をより一層鮮やかに照らし出し、夜空に咲き誇る桜の姿は……何か怖い。
ふと気がつくと桜色の風船が浮かんでいた。ちょうど人の頭の高さに浮かんでいる。だらりとぶらさがるひもをつかむ者はいない。
(――なんで風船)
ちょっと意地悪な気分になる、風船を割ってやろう。近づいて指でつつくが割れない。ぎゅっと爪でつねる。
パンッと割れた。
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「夜桜がきれいね」
「お前の方がきれいだよ」
「ばかね」
いちゃいちゃとアベックが桜の木に近づくと風船を持った女が立っている。風船は、人の頭くらいの位置に浮いている。
「なにあれ気持ち悪い」
「なんで風船……」
風船に隠れている顔を見ようとアベックが回り込むと、頭が破裂した女が立っていた。