ご免侍 九章 届かぬ想い(二十二話/二十五話)
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あらすじ
ご免侍の一馬の父が、散華衆の隠形鬼だと暴露された。一馬は、連れさられた琴音を助けられるのか。大烏元目に会う一馬は、琴音そっくりの城主と対面する。城に到着すると一馬たちは捕らえられた。
二十二
「下がれ!」
兵達に槍を威嚇されるが、目の前には病み衰えた母親がいる。
「母上なのですか……」
「ええ、そうです」
近づこうとすると槍で動きを止められる。悲しげな母の顔はうれしさと悲しさと、とても強い意思を感じた。
(なにが起きている……父も母上も散華衆なのか)
一馬は、畳に両手をつけて肩を落とす。今はもう何を信じて動けばいいかわからない。
「一馬、お前も散華衆に入れ」
父親の藤原左衛門が、母親の体をいたわるように寝かせる。そばには大烏元目も座っていた。
「父上……母上は死んだのではないのですか」
「お前の母、桜姫は神通力があった、死人を蘇らせる力だ」
「そんなものが……あるわけがない」
「そうだな、そんなものは無いかもしれない」
父は一馬にゆっくりと過去の話をする。
「元は魂を鎮めるための儀式だ、三種の神器を持ったまま海の底に沈んだ魂を鎮めなければ、神器が呪いをもち国を滅ぼすと思われた」
そのため子供が海に沈められた。
祟りや怨霊は事実でなくても恐れられた。人は感情で動く、恐れがあれば理不尽であっても儀式として長く続けられる。
「だから生き返らせる、そして三種の神器も呪いから解放する。それが国のためになる」
「母上は、それができると?」
「そうだ、母は元は平家の血筋だ」
鬼山貞一の一族が平家の血筋で、伊豆の山奥で隠れて生きてきた。父の藤原左衛門が、母をみそめて結婚して子を作ると、散華衆の噂を聞いた。
「散華衆が、子供の贄を増やしてよからぬ事を考えていた」
「それならば、父上、あなたが成敗すれば良いではないですか」